第11話

 この日も俺たちはいつも通り、多くのゴブリンたちを狩っていた。

今も8匹のゴブリンが次々と襲ってきている。


しかし、今の俺たちはこの程度の数はものの数ではない。



なぜなら俺はステータス全般をかなり成長させているし、スリングショットをずっと使っていたからか、射撃のスキルがレベル3に上がったのだ。スキルポイントを使用しなくても、使い続ければスキルレベルも自然に上がることが証明された。


さらに射撃スキルがレベル3になったことで、【パワーショット】という新たなスキルも覚えた!これはMPを消費して普段の2倍の威力の射撃攻撃ができるというスキルだ。1度使うと1分のクールタイムがあり、連続しては使用できない。



浩美も今は全体的にHPと各種耐性を上げてもらっている。いくら回復魔法があろうと一撃で死んでしまえば意味がないからだ!!こんな魔物と戦う世界において万が一ということは必ず起こる。


そんなことが起こる前に、起きても大丈夫なように対策を取っているのだ!



ひかりはというと、もう射撃スキルを覚えたのだ!本当に子供の成長は早い!おかげでかなり狙いが正確になり、今では完全に戦力となっている。




ということで、この程度の数のゴブリンは最早雑魚以外のなにものでもないのだ!次々とスリングショットを当て、これで最後の1匹だ!っと思った時、近くの森からさらに新手の2匹のゴブリンが飛び出てきた!!


といってもまだ10メートルくらい距離があったので、俺はまだ余裕をかましていた。しかし、よく見ると1匹はいつもと変わらないゴブリンなのだが、もう1匹があからさまに一回り大きい!しかも身に付けている物が立派な装備になっていた。



「ママっ!気を付けろ!!そいつは今までのゴブリンとは何かが違う!急いでシールドを張るんだ!!」



俺は大声で叫んだ!そして、スリリングショットを急いで構えるのだが、想像していた以上にそのゴブリンの動きは素早かった!!俺が狙いを定めるよりも早く家族の方へ到着していた。


浩美も急いでライトシールドを張ったのだが、浩美も予想よりゴブリンの動きが早かったようで、ゴブリンの過ぎ去った場所にライトシールドを張ってしまっていた。



「ママ!!」



俺はゴブリンの方へ駆けていた。この場所からスリリングショットでゴブリンを狙えば、もし避けられれば家族に当たってしまう恐れがあったのだ。




「メス3匹か!!だが2匹はただのガキだな…ちっ!さすがに繁殖には使えなさそうだな!まあ、餌にはなるか?」




そう言い、そのゴブリンはその手に持つ大きな剣をひかりに向けて振り下ろした!



「「ひかりー!!!!」」




俺もママも一瞬のことで何が起きたのか理解できなかった!しかし、俺たちの大切なひかりが斬られたのは分かった!!


こいつは何なんだ?何故俺はこいつを家族の元に行くことを防げなかった?こいつはそんなに強いのか?


嫌…俺たちがゴブリンに慣れてしまい、油断していたんだ!動きは確かに早かった…


しかし、俺の方が早い!なのに…なのに…



「うぉおおおおおーーー!!」



俺は叫びながら、そのゴブリンに殴り掛かった!剣を振り下ろした状態で固まっていたので簡単にパンチは入った。ゴブリンは5メートルほど吹き飛び、さらに転がっていった。



それよりも…ひかり!ひかりは無事か?



「ママっ!呆けてないで、ひかりに回復を!!ひかりっ!無事か?頼む生きててくれ!!!」



そこで俺はようやくひかりの様子を見ることができた。すると何ということだろうか…ひかりは死ぬどころか、たいした怪我もなく、ピンピンしていた。



「あれっ?斬られなかったのか?良かった!本当に良かった!!!」



俺は膝をついてひかりを抱き締めた。



「パパどうしたの?」



ひかりが俺が何故そんなに慌てていたのか分かっていないようで、キョトンとしていた。



「ひかりがあのゴブリンに斬られたと思ったから心配してたんだ!斬られてなかったようで安心したよ!!」



「えっ?さっき斬られたよ!でもね、大して痛くなかったよ!パパのいう通りだったよ!!」



「えっ?斬られたの?なのに大して痛くもなかったって…ひかりの物理耐性いくつなんだ?」



「えっと…数が大きすぎてよく分からないけど、いーっぱい!HPも同じくらいいーっぱいだよ!!」



どうやらあれから稼いだスキルポイントを俺のいう通り、ほとんど物理耐性とHPに振り分けていたようだ。


でも本当によかった!!本気でヒヤリとさせられた。




「ひかりの無事も確認できたし、あのゴブリンにお仕置きしないとだな!!

ママは子供たちを守っていてくれ!頼んだよ!!」




 俺は今度こそ油断なく動いた!俺の吹き飛ばしたゴブリンは既に立ち上がろうとしていた。あの攻撃を食らって立ち上がるとはタフじゃないか!お仕置きのしがいがある!!


もう1匹はと…あのゴブリンを介抱してたのか?俺たちには構わず、でかいゴブリンの傍にいる。お仕置きを邪魔されるのも面倒だ。俺はスリングショットで雑魚のゴブリンを葬った。



そして俺はゆっくりとゴブリンへ近づいていった。



「何だったんだ?俺の剣があんなガキに弾かれちまったぞ…何かスキルを使ってたのか?それに俺を吹き飛ばした野郎のパンチ…ジェネラル様並の威力だったぞ?一体何者だ?」



「ゴブリン野郎!!お仕置きの時間だ!!!お前は絶対にしちゃーいけないことをした。俺はお前を許さん!」



俺は変わらずゆっくりと近づいていった。



「誰にそんな口を聞いてやがる!?俺様は500いるゴブリンソルジャーの中でも一番強えーんだ!ただの人間のオスごときが舐めてんじゃねー!!」



 ゴブリンソルジャーは剣を力任せに振り回してきた。俺はカウンターを合わせ、ゴブリンソルジャーの鼻っ面を本気で殴った。



「ブグッゴバッ!?」



ゴブリンソルジャーは再び大きく吹き飛び、声にならない呻き声を上げていた。鼻の骨は砕け、呼吸も苦しそうだ。あんな大振りする方が悪い。カウンターしろと言ってるようなものだ。


俺は、痛みにもがいていたゴブリンソルジャーのところまで近づくと、ゴブリンソルジャーのケツに蹴りを入れながら言った。



「早く立て!雑魚ゴブリン野郎!!」




 俺は自分が思っている以上に怒ってたようだ。分かってはいるのだ。この怒りはこのゴブリンソルジャーへではなく、油断していた自分への怒りであることに…


たまたまひかりがバカ真面目に、俺のいう通り物理耐性をひたすら上げていたから何事もなく助かったものの、もしそうでなかったら俺は一生後悔しながら生きていかなければならなかった。



だからこそ、このゴブリンソルジャーだけは武器なんか使わずに、自分への怒りをぶつける対象にしたかったのだ。


そう、これはただの八つ当たりだ。理不尽かもしれない。だが拳に伝わってくる衝撃や感触が俺の心を僅かばかりか救ってくれてる気がする。


俺はこのゴブリンソルジャーを徹底的に潰すことで、油断していた自分への戒めと、この世界には突然強い敵が現れるかもしれないという教訓を忘れないようにしようと思ったのかもしれない。




「待て!俺の負けだ!!もう止めてくれ…俺から我が王に取りなしてやる!グギャッ!!!」



何か言ってるが、俺は構わずその顔を蹴り上げた。



「お前は俺がこれから殺す!俺の家族に攻撃しておいて許すわけないだろうが!!それになっ!お前の王って奴もうちの家族の安全の為に、俺が必ずぶっ殺してやるよ!!!」



「我が王が貴様ごときに殺られるものか!あのお方は俺なんかとは強さの次元が違うんだ!!必ずお前は殺される!!!


俺は先に地獄でお前が来るのを待っているぞ!ゴフッ!!」



俺の踵落としが決まり、ゴブリンソルジャーの顔面は地面に突き刺さった。その頭はすでに割れており、即死だろう…



 ゴブリンの王か…ゴブリンキング、ファンタジーでよく出てくるゴブリンの最上位種だ。ファンタジーでは、ゴブリンキングが現れると大勢の冒険者による大規模討伐が行われるレベルである。


その強さは先程のゴブリンソルジャーの比ではない。おそらく奴のいう通り、今の俺たちには逆立ちをしても勝てない相手なのだろう…


そしてゴブリンソルジャーだけで500匹いると言ってたし、おそらくゴブリンジェネラルやゴブリンソーサラーなんかもたくさんいるんだろう…



奴がここに来たということは、俺たちがゴブリンを大量に殺して回ってるのに気付いたからに違いない。ここからは、冗談抜きに少しばかり急ぎで成長しないと不味いかもしれない…


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