第6話:圧倒的な実力差

レイアSide


3人で別れた後、私は一心不乱に走っていた。

(とにかく早く術者を見つけないと。)

倒せるかどうかは関係ない、強い集中力を使うであろう結界魔法、術者の気をそらすだけで十分なはずだ。

それに仮にもランキング30位である、簡単に負けるつもりもない。

場外を駆け回っているとき、ふいに耳元で声が聞こえた。


「あれ?なんで結界の中に人間がいんだ?」

「!?」


条件反射だった。

私は瞬時に剣に手をかけて薙ぎ払っていた。

ヒュン!


「おっと!?」


だが、剣は空を切った。

視線の先には黒装束を若干ぶかぶかに着たスラっとした男が立っていた。

(全く気配がしなかった。)

完全に気づかぬうちに背後を取られた・・・あまりの恐怖に思わず体がすくむ。

相手が殺す気なら間違いなく一撃入れられていた。

さっきとは違う死の香りに血の気が引くのを感じた。


「まあなんでいるのか理由はどうでもいいや。悪いけどおとなしく死んどいてもらうよお嬢ちゃん。」


不敵な笑みに思わず悪寒が走る。

(この人・・・勝てる相手じゃない。)

私はついさっきまで戦えると思っていたころの気持ちなど消し飛んでいた。

対峙しただけで分かる明らかな格上だった。

剣を持つ手が少し震える。


「なんだ?あ~ビビってんのか!ずいぶんと情けないこった。探して走っていた時の自信はどこ行ったんだ?ん?」


(完全に見透かされている・・・)

相手に戦う前に見透かされるなんて、情けないことこの上ない。

こんなことでは師匠に笑われてしまう。

それに・・・馬鹿にされたのに少しカチンときた。

私は深呼吸し、二本目の剣を抜いて相手をにらみ返した。


「・・・うるさい!」

「クックック、いい顔できるじゃないか。それでこそ殺・・・ってお前!その目は生まれつきか?」

「・・・だったらなに?」

「そうかそうか・・・ん~・・・・・・気が変わった。お前は生け捕りだ。」


そういった刹那、彼は片手に真っ黒な槍を持ち出し突進してきた。

(格上なんだから、防御に集中!)

ぎりぎり追える速度、確信をもって全力で槍を捌いた。

キイィン!

(大丈夫、師匠より遅い。集中すればできる。)

自分に言い聞かせた。


「へぇ!やるじゃん!」


捌けたことに安堵する間もなく、槍を持っていなかったはずの手から槍が飛んできた。


「なっ!?」


ブシュッ!

全力で体をひねったが、残念ながらよけきれなかった。

私は深くはないが右腕を切られてしまった。

急いで飛びのいた。


「これも避けるか~やるじゃん。」

「どういうこと・・・」


彼はいつの間にか槍を両手に持っていた。


「なんだ、闇魔法は初めてか?じゃあ、いいもの見られたな。」

「・・・あなた何者?」

「ん~・・・敢えていうなら、ただの殺し屋さ。」


今度は両手に槍を持った状態で飛びかかってきた。

両手から繰り出される攻撃はまさに猛攻だった。

ギィン!バキィン!チッ!

私は受けきるのでいっぱいいっぱいだった。

いや、厳密には受けきれていなかった。

深くはないが一つまた一つと確実に切り傷は増えていった。

(すごい手数!それに、槍の動きが読めない。)

黒い槍は魔法で作られたものらしく、急に消え、急に出てくる。

私は動きに翻弄されて、どんどん流れる血が増えていく。

血がなくなるにつ入れて、体の力が抜けていく感じがした。


ドコッ!

「うぐっ!」


両手の攻撃でいっぱいいっぱいだった私に、彼の蹴りは簡単に入った。

軽く吹っ飛ばされて、その場に血を吐いた。


「ガハッ・・・ゴホッ・・・」

「残念ながらまだまだだな。」


立ち上がることなんて当然無理で、息をすることすらままならない。

近づいてい来る相手に私は成すすべがなかった。

(無理だよ・・・全く歯が立たない・・・師匠・・・助けて・・・)

私の顔は気づいたときには涙でぐちゃぐちゃだった。

生け捕りといわれたが、こんな奴らにつかまって何をされるのか想像もつかない。

でも、良くないことなのだけは確かだった。

(最悪死ぬかもしれない・・・)

そう考えると、一気に絶望が心を支配した。

(死にたくない・・・)

それをにたにたした顔で見降ろされていた。


「安心しろ。殺しはしないさ。殺しはな。」


絶望に心が折れていた。

彼が手をかざし、何か魔法を使おうとしたその時、


「・・・アちぁぁぁぁぁあああん!!!」

「!?」


ドガァン!

誰かが叫びながら何かを投げてきた。

彼は飛来してくるものを軽く避けた。

地面に光る棒が突き刺さった。


「なんだぁ?」


そう彼がつぶやいた瞬間、棒から大量の水が一気に噴き出し私を優しく包み込んだ。


「こいつは!?・・・水の羽衣ウォーターベールか。誰だ!」


(この魔力は・・・もしかして・・・)

涙で視界が歪んでいたが、私にははっきりと分かった。


「ギリギリ間に合った!」

「ああ、本当に間一髪だったよ。」


サクラとジムが駆け付けていた。

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