第5話:広間での戦闘

カインSide


最初に動いたのはリンドベル姉弟だ。


「ー全てを包括せよー」

「ー全てを庇護せよー」

「「”光球壁ホーリースフィア”」」


瞬く間に王様と王妃様の周りが光に包まれる。

(さすが王様のガードだ・・・)

迷いのないその早業に思わず感動してしまった。


「この辺りははさすがといったところかしらね。さてゴア王、悪いけどあんたの命もらうことになるわ。おとなしく死んで頂戴ね♡」

「悪いが私はまだやることがあるのでね、簡単には死ねんよ。」

「あら、この状況にもえらく冷静ね。私ショック受けちゃうわ。」


そんな会話をしている間にデルタさんが剣を抜いて間に入っていた。


「・・・やってみろ。」

「デルタ=ライコネン、噂通りのいい男ね。私と是非楽しみましょう♡」

「・・・・・・」

「クールなところもポイント高いわよ。さぁ!あんたたちはあいつを止めなさい!出し惜しみしない!」


その号令とともに、10人の襲撃者がジョシュアさんを囲んだ。

そして、ポケットから赤い小瓶を取り出して全員が飲んだ。

赤い小瓶からは禍々しい魔力が放出されている。

(な、なんだあれは?)

そう思った刹那、ドカァン!というけたたましい音とともに、ジョシュアさんが襲撃者の1人をメイスで殴り飛ばしていた。


「悠長に待つと思うか阿呆。」


(み、見えなかった・・・)

さすがナンバーズ、味方にいてくれることでこれほど心強いことはない。

(これで残り9人!)

その直後、襲撃者たちから凄まじい魔力が噴き出た。

目が赤く光り、体から放たれている魔力は2倍にも3倍にも膨れ上がっている。

体も人の形は保っているが、明らかに異常なほど筋肉が隆起している。

先ほど吹っ飛ばされた男も、まともに食らったはずが立ち上がっている。

(な、なんだこの魔力は・・・)

眼前に広がる状況に理解が追い付かなかった。


---

ジョシュアSide


(殺すつもりでいったんじゃがな。)

確かに手応えはあった。

間違いなく顔面にきれいに入っていたはずだ。

だが、今しがた自分が殴った男は普通に立ち上がっており、こちらと戦う姿勢を見せている。

(さっきのあの赤い小瓶、あれはいったいなんじゃ?)

全員が取り囲んできた瞬間よりもはるかに強くなっていると感じる。

間違いなく魔力も身体能力も上がっているようだった。

(これはなかなか歯ごたえがありそうじゃな。・・・しかし、ちと戦いづらいの。)

このパーティー会場には戦闘の出来ないものも多いし、何より決して広くはない。

自分が本気で戦うと、大勢を巻き込んでしまう。

そんな時、後ろで号令をかけるものがいた。


「ガンツ合わせて!」

「・・・OK。」

「「ー凍てつく境界ー”大氷壁アイスシールド”」」


突如氷魔法が詠唱された。

気づけばパーティーの参加者は一か所に集められており、守るように氷の防御魔法が展開されていた。

(これは・・・リサ=バーバリアか。次期党首の名は呼び名はだてではないのう。)

リサの素早い判断で、ジョシュアの憂いはきれいになくなっていた。

リサは襲撃だと判断した際に、下手に援護するよりもジョシュアに本気で戦ってもらった方がよいと判断したのだ。


「これなら少々本気で暴れてもよさそうだのう。」


愛用の盾とメイスに闘気を込めて、ジョシュアは襲撃者たちと対峙した。


---

デルタSide


眼前の大男は消して弱くはない。

だが、勝てぬ相手ではなかった。

(・・・守りはおれのスタイルではない。先手必勝。)


「・・・ー纏うわ迅雷ー」


バチバチと音をさせながら全身に雷をまとわせる。

己の剣、脚、腕、すべてにまとわらせることで飛躍的に速度と威力を押し上げる。


「・・・”雷陣切”」


高速で切りつける、単純だが見切る腕がない相手には一撃で勝負を決められる技だ。

デルタは王国内でも最強の雷魔法の使い手、まずまともに見切れるものはいなかった。


「おっと!」


大男は若干反応できたようだがやはり遅かった。

ヒュンッ!という風切り音とともに腕を1本切り落とした。


「さすがね。」

「!?」


切り落とした刹那、相手の剣が飛んできた。

それも2本。

バキィン!

ぎりぎりで受け流せたが、紙一重だった。

即座に距離をとって相手を確認する。

切ったはずの腕が残っている。

いや、正確には切った腕は地面に落ちており、新しく生えてきている。

(・・・わざと切らせたな。)


「・・・その断面、土魔法か。」

「ご名答!この魔法地味だからあんまり好きじゃないんだけど、あなた相手には使わないわけにはいかないから。ごめんなさいねぇ。」


雷魔法が得意なデルタにとって、最悪の相性である。


「ね、なかなか楽しめそうでしょ?」

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