第7話:試験クリア
見事にレッドドラゴンの心臓を手に入れた私たちは、王都まで戻ってきた。
王都が見えるぐらいまで戻ってきたあたりで、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「おいおい嬢ちゃんたちずいぶんと元気そうじゃないか。どうした?戦わずに逃げたって恥じることはないさ。命あっての物種だからな。ギブアップの申告もおれは大事だと思うぜ。」
「・・・」
(また、この人たちか・・・)
ため息が出そうになるのをぐっとこらえたら。
登録試験会場で始まる前に絡んできたおじさんたちだ。
ジムの皮肉で退散したと思っていたが、まだ何か言ってくるようだ。
「あいにく僕たちはもうドラゴンの心臓を手に入れたので、報告をしに来たんですよ。」
「なに!?レッセ―の狩場にもお前たちなんか・・・ってこの近くに弱いドラゴンなんていねぇぞ!」
(あ、この人たちレッサードラゴンの心臓にしたんだ)
別にレッサードラゴンでダメだというルールはない。
ルール違反もしていないし悪いことではないはずだが、このおじさんたちは言いよどんだ。
どうやら最弱のドラゴンで済ませたことを知られるのが恥ずかしいようだ。
あまり触れないでおきたいなと思ったそんな矢先、空気をぶち壊すものが一人いた
「私たちが倒したのはこれだよー!」
そう言ってサクラがレッドドラゴンの心臓を出した。
禍々しくも美しい、真っ赤な大きい心臓だ。
「!?」
「兄貴、本当にレッドドラゴンのですよ!すごい魔力量です!」
「見りゃわかるわそのぐらい!」
(一応、見ただけでわかるのはわかるんだ)
もっと話にならない人たちだと思っていたが、意外にも戦えるのかもしれない。
まあレッサードラゴンだって魔物の中では決して弱いわけではない。
一応試験過大なわけだし、倒せているということは弱いというわけではないのだろう。
「お、お前らみたいなガキがレッドドラゴンだなんてふざけんなよ!こっちはレッサー1匹にてこずってるっていうのに、涼しい顔して話しやがって・・・そうだ、お前らが実力でなんてあり得ねぇよ。死体か何かたまたまあったんだろ!そうに決まってる!俺様に・・・ゴードン様にそれ渡せやああああ!」
そう叫びながらおじさんがこちらに突進してきた。
我を忘れているのか、剣を帯同しているのにこぶしを振り上げ突進してきている。
「やれやれ・・・」
ジムが一歩前に出た。
おじさんのパンチを悠々と横に避けるとともに足を引っかけた。
「うおっ!?」
体勢を崩したそのおじさんの背中にジムが無言で掌底を叩き込んだ。
ズドン!
「カハッ!」
かなり力はセーブしていた。
それでも、おじさんをのびさせるには十分な威力だったようだ。
「しばらくそこで寝ていてください。まあレッサーを倒してるなら試験には合格できるだろうけど、相手の実力を測れないと一生勝てないでしょうね。勝つ気がないなら別ですが。・・・それで、他の皆さんもやるんですか?」
「す、すぐに退散します!!」
ジムが少し睨みを利かせると、取り巻きはおじさんを担いで一目散に逃げて行った。
(本当に何だったんだろうあの人たちは・・・)
「さあ、さっさと報告してしまおう。」
「賛成!お腹空いたよ~」
「サクラはさっきあんなに食べたじゃない。」
何事もなかったかのように我々3人は試験の結果を報告に行った。
***
登録試験の受付にレッドドラゴンの心臓を渡した。
「確かにドラゴンの心臓を受け取りました。おめでとうございます!これで3人はランク戦登録試験合格です!お疲れさまでした。」
「これで私たちもランキング見てもらえるようになるね!」
サクラがVサインしながら笑いかけてくる。
「そうだね。でも、これでようやくスタート地点だね。問題はここから先だな~師匠やダリアさんみたいに強くなれるといいんだけど・・・」
「へぇ~君の目標はその程度なのかい?僕はダイムさんにだって勝つつもりだ。」
「いや、それは叶えばそうだけどさ・・・」
思わず声が小さくなった。
確かに1位になれたら・・・前人未到の1位、憧れるにに決まっている。
皆が自分のことを尊敬のまなざしてみてくる、好きなものは何でも手に入るし、試合のたびに大歓声だろう。
なんて気持ちのいい光景だろうか。
でも、師匠やダリアさんの強さをいやというほど知っているから、その先にある未知なる高い壁に思わず言葉が出なかった。
(世界最強か・・・強さのイメージが全然湧かないや)
「まあ叶えたくないなら好きにしたらいいさ。夢は人それぞれだ。僕は挑戦する前から諦めない、それだけさ。」
「皮肉の強さが測れるならあなたは間違いなく世界で一番だわ。私が保証する。」
「そりゃどうも。では、皮肉で世界1位が強さの世界1位もいただくとしよう。そしたら2冠だな。」
ジムが涼しい顔で笑っている。
口では本当に勝てない。
何言っても効いていないし、そんなそぶりも見たことない。
実に腹立たしいやつだ、本当に。
「3人で1位になれたらいいね!」
「それじゃあ1位とは言わないだろ。まあTOP3といいたいところだけど、レイアはそこまで強くなる気がないらしいからな。ナンバーズに入るぐらいにしておこう。」
「私のせいで目標を落とすみたいなのやめてよ!いいよ!3人でTOP3目指してやろうじゃない!」
「君は本当に単純で扱いやすい。そこは心から素晴らしい性格だと思うよ。」
(それは誉め言葉になっていない!)
こうして私たちは無事に登録試験を終えて、いよいよデータスフィアを見ることができるようになった。
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