第6話:レッドドラゴン戦

レッドドラゴンがいる最も近い狩場にやってきた。

そこまで遠くない位置にいるのもレッドドラゴンを選択した理由だということにしておきたい。


「この先にいるな。魔力を全然隠していないから正直見つけるのはなんてことないな。」

「そうだね。」


当り前だがモンスターが魔力隠蔽なんて使うわけもなく・・・

ドラゴンの居場所は我々にはバレバレだった。

気づかれないぎりぎりの距離当たりで、最終確認を行った。


「止めは君が刺すんだレイア。僕とサクラで体勢を崩すから、そこを一気にやるといい。」

「そんなおいしい役もらっていいの?」

「現実的な提案をしてるだけだ。斬撃武器の君なら1撃で仕留められるだろ?それともあれかい、自信がないのかい?」

「あ・り・ま・す!」

「なら、いいじゃないか。」


本当にイライラさせるのがうまい。

まともに取り合うと本当にイライラしてしまうので、とっとと話を進めるようにするのがお互いにストレスなくていい。

学校生活で学んだ知恵だ。

(ここさえなかったらジムはもっと友達とかも多いだろうに・・・)

本人が苦にしていない以上、要らぬアドバイスはしない。

本人が求めているなら別だが、おそらく今はおせっかいというやつになる、それは一緒に学園生活を過ごしていてなんとなく感じている部分だ。


「それじゃあいくぞ。サクラ、この石に雷魔法を付与してくれ。バチバチ鳴らすなよ。」

「オッケー!雷付与、ドン!」


ジムが持った拳大の石にサクラは雷属性を付与した。

(バチバチは言ってないけど、サクラの声は大きいよね・・・)


サクラは水と雷魔法が得意だ。

魔法は本来丁寧に詠唱するか、その場で魔法陣を書く必要がある。

しかし、サクラは魔法の才を存分に活かし、詠唱の短縮や事前に仕込んでおく設置型の魔法陣をよく使う。

家で家庭教師の先生や学校でも先生に相当怒られてるようだが、やめようとはしなかった。


「だって、実践では少しでも早く魔法が出せた方が強いじゃん!」


サクラは決して頭は悪くない。

悪くないからこそ、より強くなるために考えてやってるのだ。

サクラの持ってる棒術の棒にも魔法陣が刻まれている。

普段はグリップを良くすると言う理由で布を巻いて隠しているが、防御用の水魔法が咄嗟の瞬間に発動できるようになってる。

私は「内緒だよ!」と教えてもらったことがある。


パチパチパチパチ

ジムの持ってる石が青白く光りながら音を立てている。

付与ができたようだ。


「僕がヤツの視界を奪う。そしたらサクラ、思いっきり叩きこめ!」


ブン!とジムが石も投げた。

石は回転しながらものすごい速度でレッドドラゴンの顔に向かっていく。

当然途中でレッドドラゴンは石に気づいて避ける動作を取った。


「バカめ。そんな簡単に避けられるわけ無いだろ。」


ジムがボソリと言った瞬間、ギュン!石が急激にカーブを描いてレッドドラゴンの顔面に直撃した。

ドシュン!と目を貫いた。

グオオオォォォ!レッドドラゴンが大きく叫びながら仰け反った。

目に見事に命中したようだ。


ジムは風魔法が得意だ。

その魔法をうまく使って、投擲物を的確に当てることが出来る。

武器のないスラムで戦ってきた中で、遠距離攻撃が欲しくて習得したようだ。

手に持つものがなんでも遠距離武器に出来る。

実に便利だなと私も思う。


「いくよーーー!レイア準備してーーー!」


サクラが気付いたらレッドドラゴンの足元にいる。

私も攻撃に備えて駆け出す。


「必殺!大足払い!」


ドカァン!目をやられて体勢を崩したレッドドラゴン、その体重が乗った足にサクラの一撃がもろに入る。

(なんでも必殺じゃん。)

思わず笑ってしまいそうになるが、あれをまともに受けたらひとたまりもない。

サクラは体に似合わず超怪力の持ち主だ。

振りこそ早くはないが、当たればひとたまりもない。

学生時代に試験場の床を叩き割ったときの衝撃はよく覚えている。

サクラの超パワーが乗った一撃で、ドラゴンは完全にバランスを崩して倒れかけてる。


(あとは私が。)

私は地を蹴り、木を蹴り、レッドドラゴンの首元に飛び込んだ。


「旋風切・・・二連!」


体を大きくひねった回転で、力の限りレッドドラゴンの首を狙った。

バシュ!一本目鋭く入るが首の途中で勢いを失う。

(・・・!!まだまだ私は非力だ。だから・・・私は二刀流なんだ!)

一本目と同じ軌道で二本目が首に命中する。

スルスルと一本目に追いつき、勢いそのままに首を切る。

ズバァン!とけたたましい音を立てて首を切り落とした。


ドシン!「いてっ!」


地面に尻もちをついた。

ちょっと強引な体勢でやりすぎたらしい。

直地ミスとは情けない。


「なんとも締まらないな君は。」


ほら、やっぱり言われた。


「素直にやったな!でいいんじゃないかな。」

「そうかい?自分でも格好悪かったと思っただろ?」


「まぁそれはそうだけど・・・」そう言いながら立ち上がったら、後ろから衝撃が襲ってきた。


「ぐはっ!ってサクラ!」

「やっぱり私達最強だね!」

「僕らの実力からしたら楽勝な相手だったさ。」


そう言いながらジムも嬉しそうだ。

こうして私達は目標であったレッドドラゴンの討伐を完了して、心臓を手に入れることができた。

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