第5話:試験開始の合図

試験当日、最高に天気のいい日だった。

私たち三人はそろってコロシアムに集合していた。


「おいおい、お嬢ちゃんたちここは遊びで来ちゃだめだぞ。泣いてもパパとママは来てくれないんだぜ。」


着いていきなり、うんざりするほどありきたりな絡み方をされた。

中年ぐらいのランカー志望の1団らしい。

確かに私達はこの中では最年少だろう。

15歳になって早々来ているのだから。

それでも、対峙した相手の実力も読めないとは・・・残念だが、この人たちは脱落しそうだなと感じた。


「いや〰その年でランカーを目指すなんて、よっぽど頭の出来が悪いか、問題児かのどちらかですね。」

「・・・ッ!てめぇ!子供だからって生意気許されると思うんじゃねぇぞ!」


ジムの皮肉が気持ちいいぐらいに刺さっている。

(いいぞ、もっと言ってやれ!)

私は頑張って応援した、もちろんジムの味方だ。

心の中ではの話だが。


「静かに!!!これから登録試験の詳細説明を行う!おしゃべりはそこまでだ!」


会場全体が静まり返った。

(よく通る声だな・・・)

壇上のど真ん中での人が言ったらしい。

ランキングで見たことある、『ジャッジ=ハーマン』とか言う人だ。

25位ぐらいにいた気がする。

(あの人が試験官ってことかな?)


「試験内容を話す前に一言話してもらう人がいる。めったに会えるもんじゃないから、心して聞くように!」

そう言って後ろを促すと奥からさらなる有名人が出てきた。


「皆さんはじめまして。ランカーになるという夢のもとに、皆よく集まってくれたね。代表して感謝する。命を落とすこともある危険な試験だが、合否問わず、皆が無事に戻ってくることを願ってる。

諸君の検討を祈ってるよ。そして、いつの日か私と戦おうじゃないか。」


地鳴りのような歓声が響いた。

さすがはランキング2位の『ダイム=ジャクソン』、世界最強の男は伊達ではない。

25歳のときにランキング2位になってから、20年間一度も負けていない、無敗の帝王。

ランキング1位はかつての勇者おおともであり、死後もその順位が変動しておらず、敬意を評しての欠番だと言われている。

つまり、この人こそが現代で世界最強なのだ。

そんな超大物からの激励に会場は大いに湧いた。

絡んできたおじさんも目を輝かせている。


(やれやれだね。)

思わずため息が漏れる。

確かに強さはすごいものがある。

今話している姿を見ただけで、私達とは闘気の違いを感じた。

でも、そんな歓声を上げるほどかといったらそうでもない。

(ただ、私と同じ赤目だし、そこは親近感があるかな・・・)


「ダイムさんならの激励に応えてみせろ!今回の登録試験の課題はドラゴンの心臓だ!これを持ち帰ったものを合格とする!期日は3日だ!諸君の検討を祈る!」


最後の言葉を話すやいなや、大部分の参加者が会場を飛び出していった。

(みんなやる気満々だね。)

私達も続こう!そう言おうとした矢先・・・


「やっと終わった〰じゃあ、まずは腹ごしらえをしながら作戦会議だね!」


隣を向くとジムの呆れた表情が目に入った。



机に並べられた山盛りの料理を前に作戦会議が始まった。

ちなみに料理はほとんどサクラ用だ。


「いただきま〰す!」


(一体この小さい体のどこにそんなに入るんだ?)

サクラを見ながら思う。

(やっぱりあの膨らみなのか・・・)

友達に向けるには少々キツイ目線でサクラの立派な膨らみに目を落とす。

(私も別にないわけじゃないし!)


「それで作戦会議ってことだけど何話すの?取り敢えず心臓持っていけばいいんでしょ?」

「はぁ〰」


ジムにわかりやすいため息をつかれた。


「君は本当に呑気なものだな。サクラを見習ってほしいものだよ。」

もぐもぐもぐもぐもぐ・・・

「・・・ん?」

「はぁ〰・・・」

「私はあんなにたくさん食べられない。」

「もういい。言った私が愚かだった。

どのドラゴンを狙うのか?と言うことを決めるんだよ。ドラゴンの心臓と言われただけで、種類は指定されてない。それこれレッサードラゴンみたいな小型から名前付きのバケモノまでどれでも心臓であればいいのさ。

強いドラゴンを倒したほうが、最初につくランクが良くなる。もちろん、強い相手だと死ぬ確率も上がる。」

「ちなみに二人は希望あるの?」

「レッサーは嫌だ!」

「口のものをなくしてから話さないか。僕もそのぐらいで特段希望はないな。」

「・・・じゃあさ、レッドドラゴンにしない?」

「理由は?」

「・・・赤いから。」

「はぁ~・・・まあこういう時に験を担ぐにも悪くはないだろう。」


意外にもすんなりとOKが出たので肩透かしを食らってしまった。


「じゃあ決定だね!早速倒しに行くぞーー!」


いつの間にか食べ終わっていたサクラが言った。

レッドドラゴンをリクエストしたのは色が自分の珍しい髪や瞳の色というのもあるが、師匠から自分の時はレッドドラゴンだったと聞いていたからだ。

(やっぱり選択肢があるなら、同じのがよかったし)


「まだ、私たち食べてないから。急いで食べるから少しだけ待って!」


私は笑いながら皿の料理をほおばった。

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