第4話:友との再会

ランク戦登録試験の受付のため、王都にきた。


王都ペンタクルス、魔王討伐の遥か前よりこの世界にある最大勢力の王国。

この世のすべてが集約されている、そう言われるのも無理はない。

王都に無いものを探すことは相当難しいことである。

ランク戦ももちろん王都で開催される。


ランク戦は王直属の管轄になっている。

国をあげての興業でもあるので、民間には任せられないのだ。

ランク戦の会場でもあるコロシアムにて、登録の受付を申し出た。


「すみません!ランク戦登録試験を受けたいです!」

「よくきたね。おっと・・・お嬢ちゃんだいぶん若いけど、本気で受けるのかい?最悪死ぬこともある試験だよ?」

「知ってます!でも、自信があるから来たんです。」

「ん~まあ禁止する資格はおじさんにはないからな。それに当日やめたっていいんだ。取り敢えず、そこの書類に必要なこと書いて。」


受付の人の心配は当然だ。

試験内容は魔物の討伐が多い、失敗=死も大いにあり得るのだ。

私みたいに15歳になりたてほやほやの若い人間、怪しまれて当然だと思う。


書類には名前、年、使用予定武器、魔法を記入する欄があった。

私はすべての項目に記入して受付のおじさんに紙を返した。


「なになに、名前がレイア=スレイン・・・スレイン!?なんだお嬢ちゃんがあのレン=スレインの弟子といわれている子か!こりゃいらぬ心配だったみたいだね。すまなかったね。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。おじさんの心配もごもっともだと思いますし。」

「心の広いお嬢ちゃんで助かるよ。ありがとうな。年齢は15歳で使用武器は双剣か。魔法は炎魔法と・・・OK、受付完了だ。ちょうど3日後に試験予定だから、その時にこの札を持ってきてくれ。」


そう言って受付の人は番号が書かれた木札を渡してきた。

こういう反応をされるのは嫌いじゃない。

師匠がすごいと思われてる、それが素直に嬉しいのだ。


私は炎魔法が使える。

元々本を読んで魔法に興味があったので、ダリアさんを頼った。

ダリアさんは炎と水の魔法が使えるが、私もたまたま炎がうまく扱えたので色々教わることができた。

でも、それ以外の属性はだめだった・・・

(炎はかっこいいけど、どうせなら複数属性使いたかったな・・・)

こればっかりは自分の努力じゃどうしようもないことだ。

現実を受け入れるしかない。



「あーー!レイアちゃんだ!」


聞き覚えのある声で叫ばれた。


「久しぶりだね、サクラ。」

「久しぶり!赤髪だからすぐわかるよ!」


そう話しかけてきたのは学校の同級生だった『サクラ=バーバリア』だ。

小さい体に似合わない大声ですぐわかった。

ショートボブの短い黒髪を弾ませながらこちらにかけてきた。


「レイアちゃんもやっぱりランカーになるんだよね!」

「そうだね。やっぱりなりたいって気持ちは変わらなかったかな。そういうサクラもここにいるってことはそういうこと?」

「うん!やっぱりお姉ちゃんやお兄ちゃん見てるとね!」


サクラはバーバリア家の次女でお姉さんもお兄さんもランカーだ。

魔王討伐PTの一人『マイナ=バーバリア』を排出した超名家、いわゆるお金持ちである。

マイナ=バーバリア、これまでの歴史上で唯一全属性の魔法を扱えた天才。

最も得意としてたのは氷魔法で、噂では小さい半島をまるまる凍らせたなんて逸話も残っている。

もともとは棒術も使えたみたいだけど、魔王討伐時に片腕をなくしたらしい。

サクラの家に遊びに行ったとき、肖像画を見せてもらったがきれいな人だった。

バーバリア家の系譜から、サクラも魔法適正がめちゃくちゃ高い。


「一緒に登録試験頑張ろー!」

「一緒にって・・・それぞれが頑張らないとじゃないの?」

「・・・全く、君はちゃんと説明を読んでから試験に来てるのか?本当に危機感のないところは相変わらずだな。」


この皮肉!

振り返るとよく見知った男『ジム=ターナー』が側に立っていた。


「そういう皮肉は相変わらずね。」

「事実を言ってるだけだ。試験内容も知らないで申し込んでる奴より遥かにマシさ。」


ジムも私の同級生だ。

私とサクラがランカーについて話してるとき、わざわざ皮肉を言いに入ってきたのがこの男だ。

本当に嫌な奴・・・と言いたいところだが、これが意外にも仲良くなってしまった。

3人とも実技を入学前に叩き込まれており、学校で数少ない拮抗出来る相手だったのだ。

お互いに訓練後の反省を言い合うのが日課になり、気づけば3人セットで行動することが多くなった。


「ジムもランカーになるってことでいいの?」

「無論そのつもりだ。僕にはこれしかないからな。」

「・・・そうかな?」


ジムは学校でもトップクラスの頭脳の持ち主だった。

いかにも勉強が出来そうな見た目ままという感じだ。

正直望めば色んな仕事に就くことが出来ると思う。

それをしないのは、いや彼の気持ちがさせないのは、心のどこかでスラム出身というレッテルを拭いきれてないのではないかも私は思う。

(本人は気にしてないって言うけど・・・)


ジムはスラム上がりだ。

同級生にからかわれたとき、確かに彼は「気にしてない」そう言って普段と通り相手にしなかった。

でも、次の実技訓練のとき、その子はジムにボコボコにされていた。

(あれ、絶対に怒ってるな・・・)


喧嘩の腕は勝ち負けを超えた生きるか死ぬかの世界で鍛えられてる、はっきり言って強かった。

師匠やダリアさんと対峙したときとはまた別の強さだった。

容赦なし、そんな言葉がよく似合う。

昨今では珍しい拳闘士という拳のみで戦うスタイルは、武器が少ないスラムだから選んだ戦術なのだろう。


「試験はPTを組んで挑戦できる、そう書かれているだろう。ランカーになる敷居を下げるために変わったんだよ。

きちんと説明を読んでから、登録希望を出すんだな。」

「はいはい、大変ありがたい情報に感謝の気持ちで私はいっぱいです。

どうも、ありがとう。」


何度もいうが、我々は仲が悪いわけではない。

親しくなったからこそ、素直に話せるのだ。


「じゃあ学校のときみたいに3人でいられるんだね!」


こういうときにサクラの存在は本当にありがたい。


「そうだね。」

「僕が断るという選択肢は考えないのか?」

「えぇぇ、断るの?」

「そ、そんなわけないだろ!一緒に挑戦するつもりだから声をかけたんだ!」


サクラにあんな顔して聞かれたら、さすがのジムも皮肉は言えない。

こうして、学生時代に学校を席捲した三人組が再び結成されたのだ。

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