「キャンプファイアを眺めながら」
第49話「まさかの執事喫茶」
夏休みも明け、さあ始まりました新学期。
俺たち3年にとっては受験へ向けたラストスパートの時期であり、本来なら遊びだのなんだのにかまけている暇はないのだが……意外や俺には余裕があった。
いや自信過剰とかじゃなくてさ、シンプルに成績が上がってるんだ。
夏休み中ずうーっと渚ちゃんと勉強をしていたおかげだろう、志望校の合格判定は見事にA。
最高レベルの高校じゃないけど、県内でもそこそこのレベルのところだと思う。
新学期開始早々に行われた中間試験の結果も、これまた良好だった。
渚ちゃんに褒めてもらえる……まではいかなくても(渚ちゃんの褒めのハードルは高い)、
「なんだよヒロ。鼻歌なんか歌ってよゆーじゃんか。さっき戻って来たテストの点数、よっぽど良かったんか?」
「おうおう、少し成績いいからって調子ぶっこいてんじゃねーぞ」
ちょっと聞いただけだと不良に絡まれているのかと錯覚を起こすような会話だが、吉田と安井はそういうタイプの人間ではない。
基本的には善人だし、ただ単におバカなだけ。
俺と違って勉強を教えてくれる彼女がいない、哀れな子羊たちなだけ。
「あ、いまこいつ、何か失礼なこと考えたぞ」
「ああ、俺にもわかったわ。つーかなんてわかりやすいドヤ顔しやがるこいつ……」
チンピラみたいな目で俺をにらみつけてくるふたりだが、残念ちっとも怖くありません。
むしろ子羊たちの嫉妬の視線美味しいです。ムシャムシャ。
「まあまあ、君たちもせいぜいがんばりたまえよ。俺は先に行って待ってるから。おっと、待っていてもしかたないのか。君たちは俺と同じ高校へ行けるレベルじゃないものねえ?」
「こいつ……」
「よし、殺して埋めよう」
俺たちがそんなやり取りをしていると、クラスの女子たちが騒ぎだした。
「そこのバカ3人! うるさい!」
「くだらないことばっかしてないで話し合いに参加して!」
「あんたらの仕事だけめっちゃ増やすよ!?」
ギャアギャア凄まじい剣幕に、俺たちは思わず首を竦めた。
そう、実は今はLHRの時間なのだ。
文化祭で何をするかの議題をクラスで話し合っていたわけだが、正直あんまり興味がなくてな……。
「悪い悪い、ごめんな。えっと何? もう投票すんの?」
謝り謝り黒板を見てみると、お化け屋敷やらメイド喫茶やらの定番中の定番が何行にもわたって書かれている。
議論は出尽くして、これから挙手による投票をするところのようだ。
んで結果。
「な、な、なんでだ……? なんでわざわざ……?」
最終的にうちのクラスの出し物は、『執事喫茶』になってしまった。
しかも……。
「いいんじゃない? うちのクラスの男子っていつも非協力的だし」
「そうそう、たまには苦労すればいいのよ」
「特にあんたら、逃げられると思わないでよね?」
一部女子の陰謀により、俺、吉田、安井の3人はよりによって執事役をやらされるハメになってしまったのだ……。
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