第26話「俺が彼女を好きになった理由」
「んーしかし、いざ書くとなると悩むな……」
いやマジで、一文字も書けない。
文章を読むのはラノベなどで鍛えられていると思うのだが、書くとなると話は別だわ、これ。
そういや読書感想文とかも苦労するタイプだもんなあ、俺。
「なあ、どうすればいいと思う?」
「あたしに聞いてもわかるわけないでしょ!?」
ちひろは俺のベッドの上に寝転がりながら、眉を逆立てて怒った。
抱いていた俺の枕を引きちぎらんばかりにねじると、「さっさと書け!」と怒鳴って来た。
「そんでさっさとフラれてしまえばいいのよ!」
「いやおまえ、それはさすがに今の俺にとっては洒落にならんというか大ダメージで……」
「うっさい! さっさとしろ!」
渚ちゃん、清々しい初夏を迎え、そちらの様子はどうですか。俺は妹が冷たくて死にそうです。
「つーかさ、そもそも兄貴はあいつのどこが好きなの? 普通さ、選ぶならもっと他の人でしょ? もっとまともな恋愛が出来て、校則なんか関係ない人でしょ?」
煮え切らない俺の態度に腹を立てたのか、ちひろが畳かけるように言ってきた。
「俺が渚ちゃんを選ぶ理由? そりゃあおまえ……」
そこで俺はピンときた。
そうだ、それを書けばいいんだ。
どうして俺が渚ちゃんを好きになったのか。
その感情がどう
彼女への揺らがぬ愛情をもって、浮気など断じてしていないということの証明にすればいい。
「よっしゃ、わかった! そうすればいいんだ! サンキューちひろ! 愛してるぜ!」
「な……っ、なななななななな……っ!!!? 愛してるって……っ!!!!!?」
なぜか顔を真っ赤にして動揺するちひろはさて置き、俺は全力で手紙に取り組んだ。
~~~現在~~~
俺の書いた懐かしい手紙を食い入るように見つめているルーと渚ちゃん。
ついでに吉田と安井。
ちひろはひとり離れたところで。
「……愛してるとか、簡単に言うんだもんなあ」
小声なので何を言っているのかはわからないが、苦虫を嚙み潰したようなような顔をしている。
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