第七話 ファイブファイブⅣ
「ええっと…何してるの?」
「見て分かりませんか?ここを出るんです。短い間でしたが、ありがとうございました。」
「待って!本当にごめんなさい!」
土下座するリンさんを見下ろしながら、「もういいです」と冷たく言いはなつ。
「もうファイブファイブ出るんで。謝らなくていいです。ダークさんとこ行くので、光と闇の寮についても、解決ですし。」
「えぇ~待って下さいっすよ…確かに骨は折れていたっすけど…」
「ルーナさんに治療してもらった後、話聞きませんでしたか?骨が折れている、それも粉々に、と。」
「…そ、そっすけど…」
「本当は動かすのもキツいです。それぐらいの握力で握られたんですよ?…助けてくれるかと思ったのに。」
今トランクケース荷物を入れているが、正直痛い。サキさんが手伝ってくれているから、助かる。
「…これはリンが悪い。」
「おっ、おいサキ~…」
サキさんは僕の頭を撫でながら、ポツリポツリと喋り出す。
「…痛そう…骨が粉々になってるのが見える。」
「サキ、視えるの?」
「視えるの漢字が違う…見える。砂みたいになってる。」
そうなんですよ…痛いんですよね…
「回復魔法使っても、治らないから…本当に人間の握力を越えてる。」
そのサキさんの一言一言がリンさんの傷口をえぐっている。
「ま、まぁ…確かにそうだけど…」
「でも…リツがファイブファイブ抜けるのは…反対。」
…そっか。
そういえば僕も、頭に血が登ってたかも。
皆といたいのは、そうだしね。
「じゃあ…ここにいるよ。」
「ほっ、本当!?」
「うん。でも、ダークさんの件に関してはどうするの?」
今関係ないかもだけど、ダークさんの話はまだ終わっていない。
僕がダークさんとこに行けば、和解するとリンさんが言っていた。
「え-っと…どうしよっか…」
「いいこと思い付いたっす!」
イザベラさんが…?心配…
「リツを囮に…」
「それしたら今度こそファイブファイブ抜けますよ?」
「なっ、何でもないっす…」
周りからジロッという目の気配を感じたのだろうイザベラは、しゅんとする。やっぱ犬属性。
「だとしたらどうすんの?他に方法ある人~」
少しの沈黙の後、サキさんが手をあげる。
「…断りましょうよ。」
「「「「え?」」」」
「だから、断りましょう。ライティさんに。この問題は僕らには不可能です。それに、闇の寮を説得できたとしても、光の寮長──ライティも和解する気がないようにも見えましたし。」
確かにそうだ。光の寮、寮長のライティさんは、手伝ってと言っておきながら、何一つ和解しようとしていたところを見たことがない。
サキさんの意見は、想像ではあるけど、間違いではないような気もした。
「あ、それっすよ!」
イザベラが気まずい沈黙を破る。
「ライティさんを、────────して、
────する!名付けて…いつの間にか恋しちゃってた!ラブラビランス!どうっすか?」
頭の中で説明されたものを、もう一度考える。
「非現実すぎる。ネーミングセンスは置いておく。妄想が過ぎる。だけど──」
サキさんは口角を少し上げて、
「─やってみる価値はあるんじゃないかな。」
と。
「ファイブファイブの頭脳、サキが言うなら決まりだね!よし、やろうやろう。」
「そんなあっさり行きますか?恋なんて…」
いくといいけどね…いざとなったらアレを使うし。
「よし!ファイブファイブ、作戦開始!」
ファイブファイブの皆が手を上げ──痛っ!!
「リツ、腕折ってごめん。」
もしかしたらリンさんは僕が痛いと言うたんびに謝るかもしれない。
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