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通りで声をかけた冒険者パーティーと、ひとしきり会話をしてから別れた後は、再び冒険者ギルドに向かって通りを進んだ。
途中に何組かの冒険者パーティーがいたが、どうやら先程の冒険者たちと会話をしているのを見ていたらしく、普通に俺に挨拶をしてきた。
彼等も先程の冒険者たちと同様で、グループで狩場をキープしているらしい。
ついでに、この時間帯に外を歩いているのは、大体そう言ったグループなんだと。
領都で活動する冒険者で、主にダンジョンで狩りをする連中は、意外と規則正しい生活をしているんだ。
商会だったり職人だったりに合わせないといけないしな。
それじゃー、さっきの連中はどうなんだってなるけれど、あの連中はこの領都で活動をしている冒険者たちだ。
ちょっと大きい冒険者のグループだったり、商会だったりがバックに付いているから、そこら辺の問題はちゃんと専門に処理するチームがいるらしい。
地元ならではの強み……と言っていいのかはわからないが、お陰で24時間ダンジョンで狩りを続ける環境が出来ているそうだ。
あまりジロジロ観察するのも揉めるきっかけになるかもしれないから、【妖精の瞳】を発動していても、露骨に相手を見るような真似はしなかったんだが、何気にそこまで彼等の実力は高くないように感じた。
精々、リアーナの基準でもギリギリ中級……ってくらいかな?
通常のリアーナでダンジョンでの狩りをメインにするのなら、彼等の実力だと浅瀬か上層の手前の方くらいに落ち着くはずだ。
もしかしたら、今の方が彼等は稼げているのかもしれないな。
数日中にはこの状況は解除されるだろうし、それまでしっかり稼いでくれ……。
ってことで、冒険者ギルドに到着した俺は、ドアを開けると中へ入ることにした。
外には馬車も馬も止まっていないし、普段は冒険者がたむろしているんだが、今は誰もいないし中はどうなっているんだろうな?
◇
さて、冒険者ギルドの中に入ったはいいが……中は外と違って随分と人の数が多かった。
普段だと、俺が入って来たら誰かしらすぐに声をかけて来るもんだが、今はだれも気付いていない。
早朝に冒険者ギルドを訪れることはなかったから、これが普通なのか今だけの状況なのかどうなのかはわからないが……1階のホールには冒険者の姿が昼間とさほど変わらないほどあった。
これは……多分今だけだよな。
この時間にここを利用する冒険者は、どう考えても下のダンジョンでの狩りが目当てだろうしな。
……しかし、職員の数は足りていないのか、ちょっと窓口の方が混んでいるっぽいな。
まぁ、ここで働く者は謂わば公務員だし、今回のような一時的な利用者の増加のために、わざわざ新しく人を雇うようなことは出来ないんだろう。
フルに職員を稼働させたら賄えそうな感じもするが、職員の数は昼間よりも少なく見える。
窓口はまだ空きがあるもののそこに人を入れたりせずにいるし、どうせ一時的なものって割り切っているのかもしれないな。
待たされている冒険者たちが少々ピリピリしているが、それを無視しているし、肝心の冒険者たちも、ピリピリしながらも何だかんだで大人しく待っている。
……慣れてるのかな?
ともあれ、職員側のことも気にはなるが、俺が向こうに行っちゃうと俺の相手をしないといけなくなるし、只でさえ少ない職員を奪っちゃうことになる。
冒険者ギルドの様子を見て、ついでに職員や冒険者の知り合いがいたら声でもかけて、冒険者界隈の情報でも仕入れるってのが、ここに来た目的だったんだが、職員側は忙しそうだしこのタイミングで向こうに行くのは止めておいた方がいいかな……?
話を聞くのは冒険者だけにした方がいいか。
とりあえず、そこら辺の冒険者に声でもかけてみよう。
◇
「……ふむ」
声をかけてみようと思ったはいいが……知り合いがいねぇ。
俺が普段付き合いのある連中は普通に腕がいい連中だし、そいつら以外となると、一の森とか外の狩場で顔を合わせるような連中だ。
今のぬるいダンジョンでの狩りには多分参加していないよな。
大方、雨季前ではあるが早めの休暇にでもしているんだろう。
……まぁ、いいか。
適当にそこら辺のに声をかけてみよう。
「ちょっとー!」
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ちょっと話でも聞かせてもらおうと、冒険者の一団に声をかけた。
彼等は窓口に並んでいる仲間を待ってでもいるのか、ホールで突っ立ちながら混雑している窓口の方を睨んでいた。
どれくらいの時間待っていたのかはわからないが、多分大分待たされていてイライラしていたんだろう。
そんな状況で俺が呑気に声をかけたもんだから……。
「ああっ!?」
声をかけられた冒険者は、デカい声を出しながら怒りの形相で睨んできた。
「ぉぉぅっ……」
王都からの帰還中の戦闘では似たような視線を受けたりもしたが、アレはまさに殺し合いの最中だったし、そんなもんかー……と特にどうとも思わず流していたが、多少ピリピリしているとはいえ、領都の屋内でそんな視線を向けられるとは思っていなかっただけに、ちょいと驚いてしまった。
どうやらこの男は俺のことを知らないっぽいし、パーティーメンバー共々他所から来たのかもしれないな。
今のダンジョンは地元の連中がほぼ独占しているような状況だし、他所から来た連中は中々美味しい稼ぎは得られないんだろう。
イラつくのも無理はないか。
しかし、新鮮な反応だよな……と、どう返したもんかとついつい黙ってしまうと、その男の後ろにいた男が、慌てて肩に手をかけて振り向かせると、慌てた様子で何やら耳打ちしていた。
「おいっ! ちゃんと相手を見ろ!」
「ちゃんと……? ……っ!?」
「アレが蛇姫だ。迂闊な真似をするなよ!!」
「おっ……おお……」
俺に聞こえないように小声で話しているつもりなのかもしれないが……しっかりと聞こえている。
声デカいよ……コイツ等。
ともあれ、俺が声をかけた男も俺のこと自体は知っていたらしい。
後ろの男の言葉に、初めの威勢は他所のどこかへいってしまい、露骨に狼狽えている。
「君たち……聞こえてるよ。無礼な真似さえしなければ、オレに限っては畏まらなくていいよ。ちょっと聞きたいことがあるんだよね」
これでも一応立場があるし、あんまり余所者に舐めた態度を許すのは駄目だが、かと言って、下手に畏まられては話が聞けなくなって何かと困る。
ってことで、俺の場合は基本的に気やすい言葉遣いを許している。
先程のやり取り程度のことなら気にするなと伝えた。
ただ……話が出来るようになるまでもう少しかかるかな?
◇
「その……それで……セラ様? が何の用ですかい? こんな朝っぱらからそんな恰好でダンジョンに潜るってわけでもないでしょう?」
男たちはしばしの間、俺にどう接したらいいのかわからず黙ってオロオロしていたが、気にするなと言う俺の言葉を理解したのか、多少ぎこちなくはあるが、会話に応じてきた。
「大したことじゃないんだけどね。何時頃からこの街に来てるの?」
「は? ……はい。一月ほど前になります」
俺たちと丁度入れ違いか。
それじゃー、直接俺を目にしたりは無かっただろうな。
「ダンジョンでは稼げてんの?」
彼等はその言葉を聞いて、互いの顔を見ている。
どう答えよう……とでも思ってるのかな?
我ながら直球な聞き方だが、結局は答えは二つなんだし、多分彼等もその方が答えやすいと思うんだよな。
「幸い稼げてはいます。ダンジョンへ潜るための登録料を払っても、ここで食っていく分には問題ありません。ただ……」
男は俺の問いかけに答えてはくれたものの、言いにくそうではあるが、まだ続きがあるらしい。
「ただ?」
「はあ……稼げてはいるのですが、ダンジョンはリアーナの冒険者共が半分近くを独占していて、我々が狩りをする場が中々無く……。ギルドも人が足りていないようで手続きが進みませんし……」
一度不満を漏らすと止まらなくなったのか、どれも細かいことではあるが不満がいくつか出てきた。
その不満がひとしきり出尽くしたところで、俺は彼等に向けて言葉を投げた。
「結構色々あるね……。まぁ、それも近いうち解消するはずだから、上手いこと頑張ってよ」
状況が変わるまで大人しく耐えて……と、大分投げっぱなしではあるが、それしか言いようがないもんな。
ともあれ、彼等との話はここまででいいとして、他の冒険者たち……特に、元々ウチで仕事をしていた冒険者たちはどう思っているんだろう?
そっちにも話を聞いてみようかな。
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