第37話
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3日間続いた記念祭は、今日をもって無事終わりを迎えた。
初日は主に西側を含む外国との交流。
その一環で外国人の処刑があるのは、俺の価値観ではちょっと理解できなかったが、概ね盛況だった。
2日目は本祭。
この国の国宝である神剣が披露されたそうだ。
ガチャ産の剣で、雷を落とすらしい。
雲一つない真昼間にドカドカ鳴って何事かと思ったが、それの効果なんだろう。
3日目は国内の叙勲や陞爵が行われた。
まぁ、特筆すべきことは無い。
で、俺は2日目以降屋敷に引きこもっていた。
まぁね、子供の身だとやれることは少ないし、誰かを一々付き従わせるのも悪いし、どうにも人だかりは疲れる。
もっとも屋敷には来客が多かったこともあり、掃除やら皿洗いやら手伝っていた。
やってることは去年までと変わらなかったが、環境は大違いだ。
1年足らずでよくぞここまでと思う。
でもまだだ。
まだ俺は上をめざ
「まだかしら?」
心の中での決意表明の最中にセリアーナの声が背後から割り込んできた。
「むぅ…」
記念祭は終えたが王都圏にはまだまだ国内、国外問わず貴族が滞在している。
その相手をする必要もあり明日以降も中々忙しいようで、やれる時間のあるうちにさっさと済ませておこうという事で、ガチャに挑む事にした。
セリアーナはまだ貯めるようで俺の1回分だけだが、こちとら誘拐された身だ。
今回のガチャは気合が違うぜ!
「どうせ変わらないのだからさっさとやってしまいなさい」
…水差すね。
まぁいいや。
「ほっ!」
気合を込め、聖像に聖貨を捧げる。
「ふんっ!」
今回はドラムロールの音が鳴った瞬間に即ストップだ。
さぁ、何が来るか!
淡く光るピンポン玉位の白い球体が浮いている。
アイテムだ!
そして浮かんだ言葉は【妖精の瞳】
…瞳…球体…眼球⁉
「ぬあっ⁉」
色々連想して思わずのけぞってしまった。
受け止めるべきだったろうが、それは落下しコロコロとセリアーナの寝室の前まで転がって行った。
絨毯が敷いてあるとはいえ、壊れていないよな?
「恩恵品よね?何だったの?」
「…【妖精の瞳】」
「………っ⁉」
セリアーナとエレナ。
2人とも同じ連想をしたのか似た反応の仕方だ。
転がって行ったそれを見つつも近づこうとしない。
いや…一度連想しちゃうとね?
「…ほら」
見かねたのかアレクが拾い、こちらに持って来た。
「目玉じゃねぇよ」
そう言い、放り投げてくる。
それを受け取り観察する。
大きさはピンポン玉で、色は白だが少し光沢がある。
真珠に近いだろうか?
耳元で振ってみるが音はしない。
「何かわかった?」
「わかんない」
「そう。とりあえず開放するわ。寄こしなさい」
「ほい」
セリアーナは受け取るなり、開放する。
手慣れたものだ。
「…あら?」
握った手から光が消え、開放されたアイテムが見えた。
「…?」
1センチ程の長さの筒状の物だが、指輪にしては細すぎる。
金地に唐草模様の洒落たデザインだ。
「イヤーカフね。来なさい」
イヤーって事は耳に付けるのかな?
イヤリングみたいな物か。
近づき左耳を見せると、なんかパチンときた。
「いいわよ」
多分耳に付けたんだろうけど…どうなんだ?
「なんか変わった?」
「何も変わらないわね」
耳は見えないからな…。
自分じゃわからん。
「むむむむ…!」
瞳って付いているし、何か見るんだろう。
見る能力だし、アカメの目もオンにし目に気合を込める。
「むっ⁉」
何故か耳でも目でも無く、額がほのかに熱い。
「ひっ…」
セリアーナの珍しい声がしたので彼女の方を見ると、口元を押さえ目を見開いていた。
彼女のすぐ後ろに控えていたエレナも似たような表情をしている。
2人の視線の行方を追うと、行先は俺の頭上。
見るの怖くなるじゃないか…。
「ひぇっ⁉」
意を決し頭上を見ると、血走った眼玉が俺を睨み下ろしていた。
なんじゃこりゃ?
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ガチャを引いた翌朝、ダンジョンに潜るべく冒険者ギルドに向かった。
「おはよーございまーす」
人混みをすり抜け、受付前に辿り着き、挨拶をする。
「おう。セラ嬢か」
「聞いてはいたけど多いですねー」
記念祭の最中は、ダンジョンは閉鎖されていた。
死者が出た時に捜索する冒険者を集められるかわからないし、兵を動かすと観光客を刺激するから、それならいっそ閉鎖しよう!となっているらしい。
冒険者達もその3日間は休養日とし、次の冒険に向けて英気を養うそうだ。
で、次の冒険というのが、記念祭の終えた翌日。
つまり今日だ。
記念祭の間は依頼の受付も停止していたからだろうか、冒険者以外にも商人らしき者達の姿も多く見える。
「いつもの事だな。それと今年は少し事情があってな。「閃光」って知っているか?そいつが下層で採集に籠っているんだが、帰還するのが今日で、それ目当てだな。記念祭の間は本来ダンジョンは閉鎖しているが、あのレベルになると特別扱いさ」
「なるほどー」
「閃光」の二つ名を持つ、同盟内でも屈指の冒険者だ。
それだけならルバンと同格だが、より戦闘に特化しているとかで、貴族の招聘や叙勲なんかも断り戦闘に明け暮れているらしい。
最近は王都のダンジョンによくいるようで、アレクが一度会ってみたいとか言っていたが…。
俺もちょっと見てみたい。
「上層までか…いつもより人が多いから、誤射に気を付けるんだぞ」
探索届を出しダンジョン入り口に向かうと注意をされた。
まぁ、俺はするよりされる側だが、…あれは痛かった。
「はいはーい」
まぁ、気を付けるにこしたことは無いと頷き、手を振りダンジョンへ向かった。
◇
【妖精の瞳】
昨日引いた、耳に付けるアイテムだ。
発動すると、頭上に乳白色の球体が現れ、更にそれに瞳が開き、血走ったような模様が浮き出る。
ちょっとしたどころか、ガチのホラーアイテムだ。
効果は、まだ何とも言えない。
昨晩使用したところ、人体の輪郭に沿って、赤と緑の膜の様な物が見えた。
エレナが一番厚く…と言っても数センチ程度だが、次いでアレク、セリアーナの順だったことから、恐らく魔力と生命力がそう見えたんじゃないか?と仮説を立てている。
赤が魔力で、緑が生命力だ。
今日のダンジョン探索の目的はその仮説の実証検証だ。
魔力の有無だけならアカメの目でもわかるが、強弱、果ては生命力なんかは俺にはわからないし、もちろんそれが全てとは言わないが、それでも戦うか逃げるかの目安にはなる。
「そのつもりだったんだけど…まいったなぁ…」
冒険者が多過ぎて、魔物がいない。
皆はりきり過ぎだろう。
冒険者でも【妖精の瞳】の検証にはなるんだが…、魔物と違い戦うわけにはいかないから、強さが…。
「こまった…」
普段は人がいない俺のお気に入りのポイントまで人がいた。
何というか、ネトゲのイベント期みたいな感じだ。
「おはようございまーす」
どうしたもんかと思っていたら、丁度魔物を倒し終えた冒険者パーティがこちらを見ており、その中の一人と目が合った。
折角だし情報収集だ、と両手を上げて近づいていく。
「おう。確かミュラー家んとこの子だよな?」
「よくご存じで。今日は人が多いですねー」
「皆祭りで金使ったからなー…。それに何日もサボってたから体が鈍ってるから、浅瀬で軽く慣らしをしたいだろうよ」
「あはは。うちのアレクもお酒ずっと飲んでましたよ」
中々気の良い人で、色々話してくれる。
そうか…。
数日程度とは言え、命がかかっているんだ。
いきなりハードな狩場に行くんじゃなくて、楽な所に人が集まるのも仕方ない。
リハビリは必要だよな。
「おっと、終わったみたいだな。じゃ、俺達は行くぜ」
後ろで他のメンバーが魔物の処理を行っていたが終えたようだ。
「はーい。それではお気をつけてー」
「おう。お前さんもな」
互いに手を振りわかれる。
平和な世界だ。
しっかし、どうすっかな…。
話を聞いた感じ今日は何処もそんな感じみたいだ。
一応奥まで行ってみるかな?
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