夏風よ
坂道をブレーキもかけずに走り抜ける
背中が風とひとつになる
私を追い越して
遠く遠くへ
やがて秋がきて冬がきて
追い越されるだけの私と
今を輝くあなた
逆光が遮り
陽炎が滲む
あなたの振る手が
私へのものではないような
小さな幸せな不安
ぼうや
遠くへ行く前に
少しだけ私を待っておくれ
ぼうや
危ないからと
少しだけ私に手を引かせておくれ
夏風よ
どうか彼の背中を
強く強く押しておくれ
夏風よ
私のわがままを吹き飛ばし
届かないほど遠くへ連れ去っておくれ
ぼうや
あなたは優しいけど
私に手は差し伸べないでおくれ
私よ
甘えてしまわないように
ペダルを漕ぐのだ
私も
風になるのだ
眩しいばかりの背中に
追いつくことに精一杯になるのだ
足が止まるその日まで
追いつけないと知っていても
あなたの手に引かれてしまわないよう
強く強く
夏風よ
私の背中を押しておくれ
天津風 さかさま宇宙猫 @suiren_nei
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