第38話
暗っ。
夜だ!
うっしゃ。魔窟へGOだ!
……って、魔窟の周りに人の気配……は、ない。見張り位いるかと思ったけど、ラッキー。
門はしまってる。
「破壊して入る」
はは、冗談冗談。
魔窟の入り口には、両開きのしっかりしたドアがガッツリしまっている。
活性化した魔の物が魔窟から出てこないようにっていうことだよね。ってことは、魔法でガッツリ封印してある系?
閂みたいな、内側から開かないようにする細工はないんだけど。
うーん。
ちょっと押してみるかと、押したら開いた。
「にゃーっ」
なんで、簡単に開くの。わ、私が壊したわけじゃないよ。
本当に、ちょっと押しただけなんだからぁ!
魔窟の中に入って、涙目で振り返る。
もし、壊れてたら、私、ここに一晩立って、魔の物が外に出ないように見張ってます……。私の責任ですから。
こう見えても、私、責任感は人一倍強いんです。
ええ、そのついでに、一晩中、スライムから核を取り出す練習をちょこっとしますけど。
べ、別にそれが目的じゃないですからね!魔の物が外に出ない見張りがメインです。
で、核を取り出す練習……は、ほ、ほら、眠気が襲ってきて寝てしまうと行けないから、仕方がないと思うんですよ。
なんかしてないといけないと思うんですよ。
……って、思いながら振り返ると、ドアは全然壊れていない。
「あっれ?私、扉を壊した責任を……」
扉に触れると、びくともしない。
うー、開かない。
力を結構入れてみる。
壊したらどうしよう!いや壊れたら責任をとって見張る!
力をさらに入れてみる。
壊れやしない。
もう少し力を入れてみる。
「壊れろ!」
ん?
あれ?
違った。
「開かないな……でした。はい。これは、外から入ることはできるけど、中から出ることはできない系の扉みたいだ……」
うーん、どうすっかな。
あれだ!うっかり入っちゃったんだ。
出ることもできないから、仕方なく、スライムから核を取り出す練習をして一晩過ごしちゃいました。てへぺろ。
そう、これだ!
私は初心者冒険者。
誰がどう見ても、ぺーぺーのもの知らず。
間違えて、あやまって、知らずに、魔窟に入っちゃった!ってことで。
ってことで。
ってことだよっ!うっせー、そう決めた。そんでいい。はい、では、スライムちゃんはどこですか?
と、魔窟の中に視線を戻す。
魔窟の中の明るさは1日中変わらない。
昼間は薄暗く感じるものの、夜ともなれば、外よりも何倍も明るい。
目がなれるまでもなく、魔窟の中がはっきり見える。
はっきり……スライム1体いないのが、み、え、る。
「いない、だとぉ……!」
どういうことなの!
魔活性って、魔活性って、いつもよりいっぱいいるとかじゃないの?
そんでもって、巨大ウサラビーみたいな、巨大スライムとかいるとかじゃないの?
それとも、なんか、そういうやばいのが出るから、普段いるモンスターは隠れちゃうの?
むぅー。
こんな時、冒賢者様がいらっしゃれば、教えてくださったかもしれぬ……。
と、昼間に会ったニックの顔を思い出す。
ん?思い出すのは、肉の味。
ニックって、どんな顔してたっけ?すごく整った顔で、えーっと、髪の毛は金髪で長かった。目の色は、知らん。
どんな顔だっけ?そうそう、薄紫色の核を溶かした水、おいしかったなぁ。
って、違う違う。顔、顔……。まぁいっか。次に会えば流石に分かるさ。
仕方がない。次、スライムだけがオイシイ核を持っているわけじゃない。
2つめの部屋にさっさと移動。
ネジュミー、いないね。いない。
3つめ。ここは期待ができるよ。なんせ、昼間、魔活性で巨大ウサラビーがでた部屋だもん。
「……」
なんも、い、な、い。
思い出したわ!
お母様が言っていた。
「果報は寝て待てと言うんですよ」
って。つまり、巨大ウサラビーが出て来るまで、寝てればいいのね。
===========
うむ。リザさん……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます