第37話

「ギーメみたいなお嫁さんがいたら、幸せだろうなぁ」

 は?

 ボクハオトコノコデスヨ。

 ちょっとお腹が落ち着いてきたところで、ニックの言葉に反応する。

「ふふ、そんな変な顔しなくても。だから、女の子だったらって話。そうだ、ギーメに似た姉妹はいないの?」

 いますよ。私に似た妹3人。でも、残念ながら、婚約者みんないますけどね。

 全員、元私の婚約者ですけどね!

 なんて話をできるわけもなく。そう、こういう時は、話題を逸らす。

「そうだ、ねぇ、さっきの話!胡椒、自分でとればただってどういう意味?ねぇ」

 ニックが、ふわりと幸せそうに微笑んだ。

 うっ。背景に星と華が見える。

「さっきの話で、気になるのはそこなんだね。普通はお金持ちっていうところが気になるのに」

 えー。

「お金持ちなら、市場よりオイシイノ食べられる?お金あったって、あのスライムから取れたてのあのオイシイノ食べられないんだから。お金持ちなんてぜーんぜんすごくないよ。それより、冒険者のがすごい」

「もしかして、僕はすごい?」

「もっちろん、もう、特別にすごいよ!」

「特別にすごい?冒険者なのに、実家はお金持ちとか、顔が整ってるとかそういうことで、特別にすごい?」

 はぁ?

 ニック……何言ってんの?

「実家に金があったって、取れたての核食べれないじゃん。自分で魔窟行かなきゃ!顔が整ってたって、取れたての核食べれないじゃん。上手に核を取り出せなくちゃ。何言ってんの?バカなの?ねぇ、ニック実は馬鹿なの?」

 ニックが、私にバカって言われてるのに、なんか嬉しそうな顔している。

 あ、やばい。

 もしかして、ニック……お父様と同族……。

 ……近づいちゃダメなやつなのでは?

 もしかして、イケメンって褒められるより、なじられたいタイプで、褒められても全然嬉しくないとかいう話なのでは?自分で顔がいいとか言うのは、そう言うと、ナルシストかよって蔑まれるような目で見られるから、それが快感でやめられないとか……。

「すごいのは、核も取れるし、それに、ウサギをさばけるし、それに、薪を拾い集めなくても肉焼いちゃえること!それって特別でしょ?あんな風に魔法使って肉焼くのなんて、はじめてみたもんっ!だから、特別すごいの!」

 だって、私は、儀式しか行えなかったのに……。

 魔法使うと肉は消し炭になると思ってたのに……。

 まさかの、岩を熱してそれで肉を焼くなんて……。

 天才の発想か!っていうか、賢者か!いや、賢者だろう!冒険者にして賢者!略して冒賢者!

 ぐおぉぉぉ!冒賢者様であらせられましたか!ぬおおおおお。

「よし、結婚しよう!」

 ニックが立ち上がった。

「いや、いや、ちょっと、訳が分からない。よしって?結婚って?

「確か、この世界のどこかに、性別を変える魔法があると聞いたことがある」

 いや、何言ってんの?

 って、目をむけるしかない。そうだろう?

「大丈夫。ギーメに無理に性別を変えさせるようなことはしない」

 っていうか、性別を変える魔法?女の私は男になれるって話?

 それ、もう、王妃コースから逃れられるって話?

 あれ?むしろ、素敵な話?

「僕が女性になるよ。そうすれば結婚できるだろう?大丈夫、きっと僕は美女になるよ?ギーメのためにいくらだっておいしいもの取ってきて作ってあげるし」

 なっ!

 私が、嫁を貰うだとぉ?!

 その発想はなかった!

 その発想はなかった!

 いや、むしろ、婚約破棄を3回もされても、その発想には至らなかった!

「じゃ、早速ちょっと魔法について研究してくる!」

 魔法の研究?

 冒賢者様は、研究熱心じゃのぉ。行ってくるが良い。

 ぱっと、目の前からニックの姿が消えた。というか、ジャンプしてぴゅっとどっかへ行ってしまった。

 ああ、あれ、足に強化魔法と、風魔法で体を宙に浮き上げる魔法と使ってるみたいだ。

 すげーな。あんなに自然に魔法2つを同時発動とか。

 さすがは、冒賢者様じゃ。

「拝んどこう」

 あれ、私が真似しようとすると、あれ?ここはどこ?って、知らない場所にまで飛んで行っちゃうやつだと思う……。

 冒賢者様のように、上手に魔法が操作できるようになりますように。ぱんぱーんと。拝み、拝み。

 さて、お腹も膨れたし。

 すやぁ。



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