第33話
「えーっと……見てのとおりというと……」
青年がさらに首をかしげる。
「地面に丸く配置された、目玉の描かれた木……」
目玉?
丸太の真ん中が焦げてるだけで。あー、目玉っぽいと言われるとそうかもしれないけど。
「その、内側中央に……ウサギ……先ほどまで激しく煙を上げていたことと人気のない場所を選んでいることから……」
青年が分かったと言わんばかりに、ぽんっと手をたたいた。
「神に生贄を捧げる儀式」
は?
何を言ってるのかわかりませんけど。
っていう顔を青年に向けると、青年がうーんと少し考えて、言いなおした。
「いや、悪魔に生贄を捧げる儀式だったかな?」
何を言っているのか、わかりません、けど。
「これ、どう見ても、料……」
ちょっとイラついてウサギの丸焼き料理をしているところを指さす。
「うわっ、きもっ!」
なんか言われ絵見れば、輪切りにして目玉みたいなのがこっち見てる。節になってて燃えにくい部分が目の光みたいに燃え残ってるやつなんてまじで、こっち見てる。
その中央に息絶えたウサギ。
真っ赤な瞳をかっぴらいたまま、硬直している。
何の儀式?
ねぇ、これ、何の儀式なの?
「ぐぅー」
お腹がなって思い出す。
そう、料理をしてたんだ。儀式じゃないよっ!
「ぐぅー」
再びお腹が鳴る。
「くすくす、分かった、もしかして、料理をしていたんだね?」
青年の言葉に、ヘッドバンキングをする。いや、激しくうなずく。
「ああ、これ、もしかして木を燃やして焼こうとしていたのかな?」
ヘッドバンキング、あーんど、ぐぅとお腹も返事。
「残念だけどね、生木は煙がたくさんでてろくに燃えないんだよ?」
にこっと笑う青年。
ああ、なんだろう。目玉模様となった木の輪切りを持っているのに、まるで王杯でも手にしているような優雅な動き。
また、背後に舞踏会会場が見える……。
「薪にしようと思ったら、地面に落ちている枝を拾い集めるんだ。よく乾燥しているものをね」
……え?
枝を拾うのって、そんな意味があったの?
その辺の木を切ることができないから、落ちてるの拾ってるんじゃなかったんだ。
煙がたくさん出たのって……
「もくもくの木じゃなかった!」
思わず口を出た言葉に、青年がふっと微笑んだ。
「もくもくの木、ふふ、面白いことを考えるね。ああ、それから、このウサギ」
青年が中央に置いたウサギを持ちあげた。耳じゃなくて、後ろ足を持っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます