第31話

 ガーデンパーティーを思い出す。

 木を燃やして、その火で肉をあぶる。

「うりゃぁー!ウォーターカッター!」

 ズバーンと音を立てて、倒れる大木。

「ウォーターカッター、スパパパパーンバージョン発動!」

 次々と輪切りになる大木。

 輪切りになった木を、集めて積み上げる。

 いや違うな。

 丸く円状に木を配置する。その中央に、ウサギを置く。

 周りの木を全部燃やせば、中央に置いたウサギは、四方八方から焼かれるから、早く火が通るんじゃないかな?

 私、天才!

 さて、あとは魔法、魔法。ふふふふふーん。

 木に業火……じゃないな、えーっと、ファイアーボールもだめで、あ、そうそう、着火、着火魔法なんてのがあった気がする。

 周りに置いた木に、順に着火魔法を施す。

 うーん、小さいファイアーボールみたいな、火種っていうんだっけ?が、ぽこんと乗る。

 きっと、その火種から木に火がついて燃えて、そんでウサギが焼けるんだよね。

 わくわく。

 もくもく。

 わくわく。

 もくもく。

「げふっ、げほ、げほげほっ」

 な、何?

 大量の煙が、もくもくと上がり始めた。煙たい、煙たい。

 煙幕?

 誰かが私の食事を奪おうと、煙幕でもたいたの?

 ウサギ、私のウサギが危ないっ!

 敵はどこなの?!

 煙でよく見えない視界。薄目を開いて必死に様子を探る。

 あれ?

 煙、木から出てない?

 ウサギの周りの、輪切りにした木から出てますよね?

「はっ、もしかして、私、物を知らないから、間違えて、もくもくの木とかを使ってしまったのでは?」

 もくもくの木……そんなものが世の中にあったなんて。勉強になった。

 いや、火を消そう。煙たい。

「お水ばしゃー、」

 ばしゃーっと、お水が出てきて火が消えた。

 煙も出なくなった。ウサギの周りの輪切りの木の中心部、火種を置いたところとその周りが真っ黒になっている。

「大丈夫?こちらから煙が見えたようだけれど?何があったの?」

 へ?

 振り返ると、そこには一人の青年の姿があった。

「ご、ご、ごきげんよう」

 にこりとわらって、カテーシー、スカートをつまみ上げて礼をするあれをしそうになって、スカート履いてないことを思い出す。

 っていうか、今の私は初心者冒険者の少年!ごきげんようっておかしいだろ!

「ごきげんよう」

 目の前の青年は、私のおかしな発言にも、何も言わずに流暢な発音で返事をしてくれた。

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