第29話
冷や汗たらり……。
何?なんで?こんなに、どこにでもいるかんっぺきな初心者冒険者なのに。
ぶ、ぶ、分身ちゃん、私の分身ちゃんたちはどこ?まぎれましょう、まぎれ……って、なんで分身ちゃん私が近づくと逃げるのかしら?
うえええーーーーん。
こうなりゃ仕方がない。
どうせ、夜に魔窟に行くんだもん。
昼間はここにいなくたっていいんだもんっ。
いっち、にぃーの、逃走!
ダッシュ!
「あ、行っちゃった」
「速っ、何者だ、何者なんだ!」
人の声が遠ざかる。
うーんと、待って、あんまり離れると、迷子になる!
あの人たち、夜にはいなくなるんだよね?魔力を感知して探せなくなっちゃよ。見張り位は残るのかな?やばい。適当に近くに潜もう。
「ぐぅー」
はいはい、誰ですか?
「ぐぅー」
だから、誰だっつてんだよ!
「きゅるるーん」
……。
はい、私です。
リザちゃんです。お腹の音でした。
お腹、空いた。立ち止まって、木に持たれて座る。
「お腹すいたー」
「お嬢様、夕食までまだお時間がございますので、もうしばらくお待ちください」
……なんて、言ってくれる人がいるわけもなく。
……。あれ?
あれ?
私、何を食べればいいの?
「しまった、食べ物、準備してない」
だって、ギルドのお姉さん、初心者冒険者の携帯食割引券とかくれなかったし。忘れてたよ。
確か、冒険者って、干し肉だとか、硬くて食べられないようなパンとか持ち歩くんだよね?
ない場合どうすんの?
「ぐぅ」
そうか、そうか。ぐぅか。
私のお腹はおしゃべりだな。
「ぐぅ、ぐぅ」
そうか。ぐぅな。ぐぅ。
拳をぐーにして、眺める。
「……ぐぅ……といえば、パンチ。グーパンチ」
はっ!そうよ!現地調達よ!
なんか動物捕まえて食べればいいんだわ!
イエス!あたし、て、ん、さ、い!
早速なんか捕まえて食べる。あー、肉を粉砕しないように気を付けてグーパンチしなくちゃいけないから、えーっと……そ、そうだ。
石、石とか投げよう。岩じゃなくて、石。小石、小さな石を……。
イエス!私、大天才!
小石を拾う。
動物……、あ、みーっけ。
飛んでけ小石!
狙いを定めて、左手の平に置いた小石を、右手の人差し指ではじく。
ひゅっ。
風を切る音が短く聞こえ、今の今まで飛び跳ねていたウサギが地面に落下したまま動かなくなった。
ウサギの側に駆け寄ると、額の真ん中に小さな焦げたような黒い跡。
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