第21話
「なんだあいつ、近づくなと言わんばかりにぶんぶん回って魔窟の方へ向かったぞ」
「しかも、3級、3級と、何度も口にしているが……マッチョって、筋肉のことか?なんで、3級筋肉……」
「まてまて、その間にベリーって入ってるぞ。苺のことかだよな?」
「3級苺筋肉……」
「……」
「……」
「謎、しかない」
何?私が、苺のように可愛らしいとか噂してる?
ふふふ、あらやだわ。
って、ダメじゃん、ボク、ショウネン冒険者。
オンナノコじゃないよ?
と、とにかく、魔窟にレッツゴー!
「行ってらっしゃい。日が沈む1時間前には鐘が一つ、30分前には鐘が2つなります。必ず戻るように」
簡単に入口の人が説明してくれた。
これも、授業料いらないです?
ああ、いらなさそうです。
無料で色々教えてもらえるなんて、すごくない?
魔窟の中は、今までぶっつぶしたものとそう変わらない。薄明るい洞窟ん中みたいな作り。
さて、まずは入口付近の雑魚を一掃ね。
煮えたぎる私の心よ!炎となって……って、
「ああああっ、私がいっぱいいるぅぅぅぅ!」
目が慣れて魔窟の中をよく見ると、どこにでもあるシャツ、どこにでもあるズボン、量産型の初期装備姿の人間がわらわらとたくさんいる。
私の分身か!
と、思ったけど、どうも違う。
っていうか、違うに決まってる。
「こ、これが本物の初心者冒険者」
20人くらいいるよ!
これなら、本当に私、目立たない!
くっ。天才ね。天才。
「どうしたの?スライムの倒し方が分からない?」
小首をかしげた女の子に話かけられた。
服装はほぼ私と同じ。違うのは、赤毛をポニーテールにして揺らしていることくらいか。
「えっと……業火で焼き尽くす?」
今まで、そうしてきた。
けど、今私は、困っている。
だって、お母様に人間に魔法はつかっっちゃダメって言われたんだもの。
今、ここで業火とか業炎とか使ったら、絶対、私のコピーたち……じゃない、私と同じような恰好をした初心者冒険者たちが巻き込まれてしまう。
私は惨殺者じゃないので。
「ふふふ、面白いことを言うのね。業火で焼き尽くすなんて」
いや、何が面白いんだろう?今までそうしてきた、私にとってごくごく普通のことなんだけれど……。
「焼き尽くしちゃったら、核が取れないじゃない」
ニコニコと笑う少女。
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