第19話
「大丈夫か?」
男性が心配そうな顔を向けてくる。
「はい、助かりました」
「気をつけろよ、新人冒険者にたかって金を巻き上げようとする悪い奴はどこにでもいるからな。金は絶対に他の人間の前ではあることは悟られるな。盗まれるぞ」
え?
「悪い奴?」
歯抜けを見る。
「あーあ、邪魔しやがって。せっかく馬鹿をひっかけてやろうと思ったのによぉ」
ぺっと歯抜けが唾を吐いた。
「馬鹿って?」
誰のこと?
ここには天才しかいませんけど。
「ぷっ。本当、馬鹿だな、まだ気が付いてないとか?」
ひょろりがまた吹き出した。
「行こうか」
20代前半の男が、汚いものを見るような目つきで歯抜けとひょろりをにらんでから私の肩を叩いた。
「あの、悪い人なんですね?」
歯抜けを見る。
「だったらどうした」
ひょろりを見る。
「騙そうとしたんですね?なぐってもいいですか?」
ひょろりがまたぷっと噴出した。
「殴るだってよ。俺たちを?いいだろう殴れるもんなら殴って見ろよ」
ひょろりの言葉に続けて歯抜けが自慢げな顔を見せる。
「こう見えても俺たち、魔窟制圧者だから……ぐぱぁっ」
殴っていい許可も取った。
思いっきり、顔面に拳放り込んだ。
いや、魔窟制圧者は普通の人じゃないから、顔も胴体もオッケーだもんね?
びゅーんと、歯抜けは飛んで行ってごすぅと木にぶち当たった。
あれ?お父様なら微動だにしない程度の力加減だったのに、飛んでった。
だって、魔法で身体強化とかしてないんだよ?素の力だけだったんだよ?
それなのに、人って、あんなに飛んでくものだっけ?
「お、おまえ……」
そうそう、もう一人いた。
ひょろりを上目遣いで見る。
「やめ……げふぅっ」
しまった。
胴体、蹴っちゃった。殴っていいですかって確認はしたけど、蹴っていいかは聞いてなかった。
またもや飛んで行って、木にぶちあたった。
首をかしげる。
2人とも反撃してこないのは何で?
魔力感知すると死んでないけど……。気絶?
それから、あの二人が悪いひとだと教えてくれた男の人に頭を下げる。
「ありがとうございました」
「いや……助け、必要なかったような……お前、何者だ?」
え?
何者?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます