第18話

 私の言葉遣いがおかしいのか?

 冒険者らしくない?

 こ、これはやばい。

「いくらかって、きいてんだべらぼうめ!」

 冒険者っぽく言い直してみた。

 ふっ。私、天才。

 後ろのひょろ長いのの笑いが消えた。

 よし、どうやら正解だったらしい。

「おい、なんだ急に強がって?今さら払わねぇとか言わせねぇよ」

 何、言ってんの?

「いくらかって、魚介類の話してんじゃねぇんだぞ、授業料の金額の話してんだ、さっさと教えやがれべらぼうめ!」

 ……一応、先輩冒険者ですし、ここで、やっぱり教えてやらないとか言われても困るので、何言ってんだとは思ったけれど。

 北の海では新鮮ないくらが食べられるという話を思い出したので言い換えてみた。

 うちの国はさ、内陸なんで新鮮な魚介類ってあんまりなかったんだよね。

 あ、そうだ。海を見に行こう。魔窟もいいけど、海もいいよね!

「ああん?有り金全部だよ、全部出せっつってんだ」

 ん?

 あれ?

 授業料が有り金全部?

「もしかして、銅貨3枚しかない人は銅貨3枚?」

 そりゃそうだ、駆け出しの冒険者がそんなにお金を持っているわけがない。

 学園も授業料払えなければ通えない。

 冒険者の誰にでも教えてあげられるように、有り金全部なんていういい方をしているんですよね。

 たとえ銅貨1枚でも教えてあげられるように、金額は言わない。

「いい人、いい人ですね!」

 ひょろ長いのがまたぷっと噴出した。

 しまった。言葉遣いをまた戻してしまった。

「でも、あの、心配しなくても私でなくって、俺は金持ってるから、金貨1枚でどうだ?有り金全部は流石にちょっと……」

 と言うと、にやぁりと男が笑った。

「金貨?ずいぶん金持ちなんだな、とにかく全部寄越せっつってんだよっ!」

 男が手を伸ばしてきた。

 ひょいっと思わずかわす。

「おい、誰かギルド職員読んで来い」

「あいつ、身ぐるみはがれるぞ」

 ん?

 周りがざわざわしている。

「身ぐるみ、はがされる?」

 それ、私のこと?

 身ぐるみって、まさか、服を脱がされる?!

 そ、それはダメだ。

 女だってばれちゃう。

「おい、もうよせ。今ギルドの職員が来る」

 20代前半の男が、歯抜けの男の肩をつかんで止めた。

 ああよかった。裸は流石にやだもんな。

 まさか、有り金全部が、服とか身に着けていて売れば金になるものも含めて全部なんて思っても見なかった。

 やばいやばい。

 冒険者ルールとか知らなかったわ。

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