第16話

 どこにでもある、皮の鎧、どこにでもあるちゃちな剣。どこにでもある腰に下げる鞄に、どこにでもある初級ポーション。

「あー、これで、どこから見ても、どこにでもいる初心者冒険者の少年ね!」

 完璧よ。

 着てきたドレスとかつらは地面にぽい。

「着火、燃えろ」

 ぼふんと燃やして証拠隠滅。

 って、煙が上がった!やばいっす。煙で位置がバレる案件。

 逃げろ!

 すたこらさっさと。

 そんでもって、私は馬鹿ではないので、やみくもに逃げたりしない。

 街だ。街に向かうのだ。何故ながギルドがある。ギルドにいって、魔窟のこと教えてもらって、魔窟に行くのだ!

 3時間ほど森の中を走ってから、当たりの気配探知。

 むぅーんとな。

 小さな魔力がわらわらとある場所がある。

 そんでもって、ちょっと大きな魔力と、それなりに大きな魔力が50ほど集まっている場所がある。

 街は、どっちだろう。

 ……どっちも街?いや、100ほどの方は、村?

 街と村。

 どっちに行くべきか、私は知っている。

「どーちーどーちーどーちーらーに、しーよーうーかーなー」

 街……?

「かーみーさまーのいーうーとーおーり」

 街……?

「てっぽーうってーばんばんばーん」

 ……街……?

「れーれーれーのれー」

 よっしゃ!村!

 村!

 ふへへへ。

「魔力が大きな人がいるー、たらったらったら~どんな村~」

 スキップしながら村へと向かう。

 神様の言う通りで決めたからねー、間違いないさー。っていうか、てっぽうってなんだろうね?よくわかんない言葉だよ。


「え?村は?」

 魔力が50ほど集まっている場所を時々気配探知魔法で確認しながら移動し、ついに目の前にまできた。

 木々をかき分け、出ると、そこに村らしいものは何もなかった。

 村じゃないの?

 人は、いる。

 冒険者のような姿をした人たちが。

 きょろきょろと訳が分からずあたりを見回していると、30前後の歯が抜けて肌の色が浅黒い男が声をかけてきた。

「おい、お前、魔窟ははじめてか?」

「魔窟?」

 今、魔窟って言いました?

 言いましたよね?

「は、はじめてと、いうわけでは……」

 思わずドキドキしすぎて上ずった声が出る。

 公爵家の領地にある小さな魔窟には何度か潜った。んでもってぶっつぶした。

 でも、、全然違う。

「ははは、嘘だろう、そんなに緊張して」

 男がいししと笑った。

「どう見ても、新品の装備だろ」

 男が私の鎧を指さした。

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