第13話

「す、すごい冒険者なら」

「そうですわ!すごい冒険者は普通じゃありませんわ!」

 すごい冒険者!

 お母様やお父様のような!

 うんうん。確かに、普通じゃない。

「すごいの基準って?」

 結局なんなの?

「稼ぎが多いとか?」

 首をかしげる。

「ち、違いますわ!稼ぎは運の部分がございますもの。偶然すごいものが入っている宝箱に出会えば稼げます。というか、幸運王と呼ばれる方とか」

 幸運王?なんじゃそりゃ。

「そうですわね!なんでも特別にラッキーなことが立て続けに起きる祝福をお持ちの幸運王様……まではいかなくても、幸運系の能力者は他にもいらっしゃいますが、肉体的というか、戦闘能力的には普通ではないかと……」

 そうなんだ。

 へぇ。幸運王か。かっこ悪い二つ名。

 ラッキーで生きてるなんて、かっこわるぅーい。

 もっと、こう、筋肉王だとか、怪力王だとか、瞬殺王だとか、かっこいい二つ名持ちがいいわよね。

 ああ、ぞくぞくする。会いたいなぁ。筋肉王様。どこかにいらっしゃるかしら……どきどき。

「となると、すごい冒険者の基準は……魔窟制圧者でしょうか……」

 ま、ま、魔窟!うひょーう。私の大好きな単語が侍女さんから出てきた!

 魔窟なんて、魔窟なんて、公爵家で働いている侍女は一言も口にしなかったよね。

 時々「名前を口にしてはいけない場所」とか言ってたけど。

 公爵家の旦那様が、奥様が、娘たちが、関りがあると思われてはいけませんからとか言ってた。

 こっそり魔窟に出かけてるのがバレてるのかと思ったら、もしかしたらあれ……。

 お母様のことだったのかしらね?

 結婚してから育児の合間に68潰したとか言ってたし。

「魔窟制圧者?」

 制圧ってなんだ?

「ご存知ありません?魔窟制圧者とは、魔窟の深窓部までたどり着き、ボスと呼ばれるものを倒すことで、魔窟を消滅させた者のことですわ」

 それって、それって。

「魔窟をぶっつ」

 ぶした人ってことか!

 いけないいけない。思わず公爵令嬢らしからぬ言葉を口にするところでしたわ。

「ぶっつ?」

 突っ込まないで!

「リザ様、ぶっつとは?」

 たずねないで!

「リザ様?」

 答えを期待して、こっち見ないで!

「ぶっつとは、そちらの国の言葉なのですか?」

 う、う、う、ぶっつ、ぶっつ、ぶっつ、あーん、いい言い訳が思いつかないよぉぉぉぉぉぉぉ。

 冷や汗が背中を流れる。

 でも、私は理解した。

 魔窟制圧者は、普通の人じゃないから、頭も胴体も殴っていい。

 オッケー、オッケー。それだけ分かれば問題ない。

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