第12話

「私も普通です」

「私もすごく普通です」

「むしろ私は普通以下です」

 ……はぁ。

「えーっと、じゃぁ、普通じゃない人って、どういう人なのかな?」

 今度は4人とも口を閉じたまま開かない。

 んー、難しい問題なのか?

 シーンと静まり帰っている。

「あー、私は普通じゃない?」

 難しいのなら質問形式にしてみよう。これならこらえやすいだろう。

 答えやすいと思ったのに、4人とも黙ったままだ。

 前に座っている侍女を見る。

 なんだかすんごい青ざめてますけど。

 隣の侍女を見る。やっぱり青ざめてますけど。

 大丈夫かな?

「ぼ、ぼっぼっ、」

 ん?

 じーっと見続けていたら隣に座っているなんか鳴き声を上げた。

 気分が悪いのに動物の物まね?

「冒険者は普通じゃないかもしれないです」

 隣の侍女が、鳴き声を上げたあとに口を開いた。

「なるほど、確かに、冒険者は普通じゃない!」

 お母様も冒険者だったし、お父様も冒険者として修業をした。

 私も、これから、普通じゃない冒険者になる……んじゃなくて、すでに国を出る前に冒険者登録してあるから、もう、普通じゃない人になってました!

「ま、ま、ま、まっ」

 前に座っている侍女の一人が別の動物の鳴きまねを始めた。

 うん?

 なんの生き物だろう?

「待ってください、私の弟は15歳になって冒険者になりましがた、普通です!」

 うん、そりゃそうだろう。

 昨日までは普通だったのに、今日から普通じゃないなんてあるわけない。

 って、じゃぁ私も、登録したからと言って、いきなり普通じゃなくなるなんてありえないってことじゃない?

「どれくらいで普通じゃなくなるのかしら?」

 この場合、きっと、普通じゃないイコール、冒険者として立派になったって話よね?

「1年くらいは必要かしら?」

 お母様は、16歳でお父様と出会った時にはすでに二つ名持ちだったそうだから、普通じゃないわよね?私、できればもう少し早く普通じゃなくなりたいなぁ。

「い、い、い、い、い、」

 あ、これは分かる。いーいっいっいっって、鳴く猿がいましたね。猿の鳴きまねですね。

「一年?いえ、リザ様、冒険者の中でも、その、何年活動してもランクが上がれない者もおりますし、その、一生を普通のまま終える冒険者の方がむしろ多いと……」

「え?あれ?そうなの?じゃぁ、普通じゃないって基準はどう判断すればいいの?」

 侍女さんたちが顔を見合わせた。

 あら、意外と仲がよろしいようで。お互いに競い合うみたいな感じじゃないのね?

 おっと、空気椅子、空気椅子。ガタンと大きく揺れた拍子に椅子に座っちゃうところでしたわ。

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