第2話 強奪
俺の目の前に突如、カーブのある透明なガラスが出現した。
「うっ。なんだってんだ」
さっきまで自分の部屋のベットの側に立っていたと思ったら、ガラスの向こうに
白衣を来た研究者らしき人物が数人いるのが見えた。
「ここは。実験場か……?」
見た感じだと、サッカーグラウンドくらいの広さがある。どことなく薄暗く、嫌な雰囲気の場所だ。
俺はどうやら円柱型のカプセルの中に閉じ込められているようだ。斜め60度位の角度で、カプセルは浮遊している。研究者たちの真ん中に立っている、白髪短髪の肌の茶黒いおやじが、どうやらリーダーらしい。俺の方を見ながらうなずいていやがる。
俺は、ソイツの方を睨んだ。
「ふふ。そんなに怖い顔しなくてもいいじゃないか。”ハンター”様」
ソイツはかるく笑みを浮かべながら、こちらに歩み寄る。
「ここはどこだ?なにが目的だ?」
俺はカプセルに閉じ込められていることに恐怖し、ソイツに強めに回答を要求した。
「ここはサイバー都市ビリオンの中央部にある俺の実験場だ。」
ソイツは俺に、害は与えはしないと言いたげに軽く微笑む。だが、微笑みなれていないのがすぐに分かった。
「俺はこの研究場、かつこの都市を統括しているリーダーのガイルだ。よろしく。」
「俺は日向秀人だ。お前の目的はなんだ?」
ガイルは、俺がこう質問することを予想していたように、すぐさま回答した。
「サイバー都市ビリオンの利益のためだ」
「お前の持つ特殊能力、”強奪”はその役割にふさわしい。だからお前は今ここにいる」
特殊能力だと? 俺は自分で言うのもなんだが、いたって普通の高校生だ。ものに手を触れずに動かしたことも、好きな女の子の考えていることを読めたりしたことはない。
「それは、お前の持つスキル”強奪”が特殊だからだ」
プシュッと言う音とともに、カプセルのガラスが格納された。
「こっちへ来い。お前に”プレゼント”だ」
「プレゼントだと? どういう意味だ」
ガイルは無言で歩いていくので、俺は後についていった。
研究場入り口側の隅のスペースに来た。
中身が空のカプセルが2台と、20代くらいの男性が格納されているカプセルが、斜め60度位の角度で浮遊していた。男性は眠らされているようだ。
「こいつは能力を使って俺達の”ルール”を破った。だが保持している”スキル”がお前の初”スキル”にピッタリだと判断したため、ここに格納している。」
プシュッという音とともにカプセルのガラスが格納される。
「こいつの頭部を掴み、強奪すると念じろ」
ガイルは何を言っている。俺は疑問に思ったが、従うことにした。
――強奪する。
日向秀人の右手は闇色にじわりと光った。
頭の中に、無機質な声が響いてくる。
「スキル”強奪”発動を確認。対象者からの能力情報を強奪。スキル名『体エネルギー操作』を第1スロットに格納。『体エネルギー操作』使用可能です。」
「日向秀人。強奪し終えたようだな。どうだ。試しにそこの空のカプセルを壊してみろ」
「ああ……壊してしまってもいいのか?」
カプセルの外装は分厚く、鉄でできているみたいだが、今の俺なら破壊できる自信があった。
「替えはいくらでもある。かまわんよ」
――スキル『体エネルギー操作』発動
俺は浮遊しているカプセルの底面を、勢い良く蹴り上げた。
ドガンッという音ともにカプセルは潰れ、宙を舞い、壁にぶつかって落下した。
ガラスの破片が勢い良く床に散らばる。
「日向秀人、話の続きは俺の部屋でしよう。こっちだ」
地底世界に転送された俺は地底人で、伝説のハンターの血筋だったなんて信じられるか? 谷口みちか @mitika-T
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