地底世界に転送された俺は地底人で、伝説のハンターの血筋だったなんて信じられるか?

谷口みちか

第1話 日曜の朝

「伝説のハンターの血筋を持つ男。そいつを表の世界から引っ張り出すためのゲートが、ようやく完成したか」

 ここは地底世界にあるサイバーパンクな近代都市、ビリオン。

 犯罪能力者や不法科学者たちの暗躍する街。


 リーダーかつマッド・サイエンティストのガイル・ルチアーニは、”ハンター”を移送する”ゲート”の完成を喜んだ。ガイルの周りには数人の白衣を着た科学者たちが、世紀の瞬間をその目で目撃するために集まっていた。

「ガイルさま、”ハンター”の所持している原始的通信デバイスに、移送プログラムの送信を完了いたしました。」

「ああ。準備はいいな。起動してくれ。」

 

 この”ハンター”が俺たちビリオンの切り札になってくれたらいいのだがな。ガイルは不安感と期待感を胸に、ゲートの起動スイッチを押した。


 現在時刻午前10時。カーテンの隙間から朝の陽刺しが注ぎ込み、やたらとうるさい携帯の着信音で目が冷めた俺は、春の陽気のせいか、まだもう少し眠っていたかった。

「日曜日の朝に、誰がかけてきたんだ。うっとおしい」

 俺はベットの中で、枕の横においてあったスマホを手に取る。

 うわ。非通知だ。朝からはた迷惑なやつだな。どうせイタ電だろうと思い、切断も通信もせずにスマホを枕の横になげてもう一度眠ろうとした。


 一分くらいたったが、まだ着信は鳴り止まない。

「非通知だが。なにか重要な話でもあるのか。心当たりはないんだが」

 俺は渋々着信をとった。


 渋い男の声で、そのスマホはこんなふうに言った。

「よお。お目覚めかい。”ハンター”様。」

 やっぱりイタ電かと思い、切ろうとしたが、男は続けざまに言う。

「異世界に興味はないか?」

 なかなか面白くてユニークないたずら電話だ。

「ははは。あるけどな。面白いイタ電だがきるぞ。」

 俺が着信を切ろうとしたそのとき、スマホの画面はなぜかサイケデリックな迷彩模様になり、操作が不能となっていた。


「現在時刻10時07分。ビリオンへの時空間移送ゲート構築中。」

「構築完了。起動します。5、4、3,2,1,0」

「起動成功しました」

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