第33話

 ゲームでは倒れたプレイヤー側のキャラクターが必死に起き上がろうとしていた。

「出来れば。僕は雨の宮殿に行くのは断りたいんだ。ここで、世界中の戦いを操作しながら雨の宮殿での戦いにも干渉していたいんだ。勿論、君たちが勝つようにね……」

「……それでもいいのかな……?あ、でも、時の神さまたちが連れて行ってほしいって、言っているし……。ねえ、あなたが雨の宮殿に行くとどんな戦いをするの?」

「それは、簡単。僕自身が兵器を使って戦うんだ」

「強い……?」

「ああ……強いとも。この天の園でも下界でも僕を倒せる者はいない」

 瑠璃は考えた。


 こんなに凄い神様がいてくれれば、この悪夢から醒められる。楽に雨の宮殿での戦いで勝ちそうである。

「ねえ、どうしても行ってくれないと困るのよね……私。あなたは毎日こういうことをやっているの?」

 ジョー助がニッコリと笑った。

「そう……。じゃあ、雨の宮殿で戦ってくれたら……キスしてあげる」


 隆は目を覚ました。

 慌てて横を振り向くと、隣のベンチで倒れ込むように寝ている智子がいた。

「おい、智子。今何時だ」

 隆は智子が買ってくれた新品の靴で隣のベンチへと行くと。

「……そうね……お昼頃にあなたが寝たから。今は……」

 智子は目を覚ました。

「大変!」

 智子の驚きの声が虚しく夜空に吸い込まれた。



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