第28話
この世界を正志も恐ろしく感じているようだ。そして、正志は瑠璃のギャンブル好きにはもう慣れている。なにせ正志も遊び人である。高級車でもあるカスケーダで、瑠璃という美人の妻がいるというのに、女遊びもしているのだ。
しかし、正志は人助けに生き甲斐を感じているところも、正志自身良く知っていた。人を助けると、金が入るというのは昔からだが。それだけではない。充足感や使命感などが感じられ、昔から相談事や悩み事を打ち明けられる性格でもあったので、この商売を始めたのだ。師匠の竹原(里見の死体を安置している人物)も、半ば遊び人であった。
竹原は年は今では76歳。
葬式屋をやる前は、正志と同じく占い師で大のパチンコ好きであった。
正志は竹原に占いの手解きを請う時は、いつもパチンコ屋であった。
「戦の神……戦の神……。さすらいのジョー助……。どこにいるんだ」
正志は呟きながら公園の方へと歩いて行った。
「ねえ、あなた。里見ちゃんにまた会えるのよね。でも、どうやって、生命の神の許可を得るのかしら?」
智子と隆はあれから二時間くらいビルディングが林立する遊歩道をトボトボと歩いていた。
「ああ……里見に会えるなー」
「あなた……。うん……そうよね。また、里見ちゃんに会える。私たちの考えることはそれだけで十分なのね。ひょっとすると神様が何とかしてくれるのかもしれないし」
智子は自然と足が軽くなる。
二人で戦の神と火の神を探しだした。
住宅街があればそこへと聞きに行く。町の住人にも知っている人がいるだろう。
「時の神様に顔写真でももらっておけばよかったわ」
「ああ……」
隆はしばらく、住人や色々な国の通行人に頭を下げたりしながら戦の神と火の神のことを聞いていた。
戦の神と火の神を探している時は、ふとした時しか里見の顔を思い出さなかった。何かに集中しているからか。
隆はそう思った。
「ねえ、火の神は火が関係していると思うの。どっかに火が無いかしら。この町で……。戦の神は当然、戦いよね……。でも、この都市は平和だし」
「うーん。火……。出来れば大きな火がある場所……。時の神に聞いておけばよかったな。でも、必ず会えるとだけ神様が言ったのだから。そのうち会えるだろ。戦いのある場所……」
「でも、どれくらいかかるのかしら?」
隆と智子は今度は色々な会社に訪問しては、戦の神を探した。時の神と同じく会社で働いていると思っていた。
隆は当てずっぽうで、古ぼけた建物の会社に訪問すると、小太りで鬚面の男が隆たちに、
「この町は広いですからね。でも、神々は大勢住んでいますよ。なにせこの会社の社長は掃除の神ですからね」
小太りの男はにこやかに話す。
「はあ……」
隆は社宅に掲げられている看板を見ると、<掃除機なら「吸って吐いて」のこの会社 エレクトロニクス・サイクロン社>と書かれてある。
「掃除の神様は強いのですか?できたら……。お願いです雨の宮殿へ私たちと来て下さい」
智子はやや頭を使って懇願した。
「はははっ、無理を言っちゃいけません。この会社が倒産してしまいますよ。それに、掃除の神は掃除の神。戦いなんて……それも、雨の宮殿なんて危ないとこ……。あそこは、不穏で危ないとこの町でも有名ですからね」
智子がお礼を言って次へ行こうと隆を促した。
「今日はどこに泊まろうかしら。このお金は使えるのかしら?」
智子は夕日を見つめながら疑問を呈した。
隆と智子は戦の神と火の神を探して、5日が経った。
正志は何気なくケーキ屋のショーウインドを見ている。
ケーキ屋の主人は何を注文してくれるかと、期待の眼差しを正志に向けながら、他の客に接客をしている。
ケーキは野イチゴのショートケーキや、大納言とあんみつのタルトなど。
二・三人の若い客たちは、終始おしゃべりをしながら、ケーキを選んでいた。
「ねえねえ、向こうで火事が起きたって。……最近、多いよね。この近辺。西の方なんだけど、私の家の近くだわ」
大日幡建設から歩いて二日かかるこのケーキ屋には、女子高生たちがおしゃべりをしていた。
正志はあれからビジネスホテルに泊まりながら、火の神と戦の神を探して方々を歩いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます