第46話 王都へ
コウはドキドキしっぱなしであった。トリトにどう思われているのかが気になって仕方がなかったのだ。トリトは女としてみればかなりの美人さんなのだ。しかも宏海といい勝負ができるぐらいだ。二人を並べて美少女コンテストをした場合、投票するのは単に好みの問題だろうと思う。
トリトは正統派美少女であり、しかもエルフだ。そんな美少女が剣も使えるんだからたまったものではない。メロメロになる。
今更だがと思うのは、どうしてこいつが女だと気が付かなかったのかと。どうして男だと思っていたのかという事だ。
確かに男物の鎧で、胸も潰れてしまっていた影響から女性らしい膨らみは感じられなかった。ただ、今のトリトは立派な双丘をお持ちで、先ほど見た胸の形はまさにコウが理想と思う胸なのだ。そしてそこそこ大きい。ぶっちゃけこのおっぱいと結婚したいと思う位にだ。
コウの隣に座っているトリトはトリトでドキドキしっぱなしであった。見られた!見られてしまった。しかも触られた!そして胸を揉まれた!女だとバレた!バレた!バレた!バレた!どうしよう?どうしよう?どうしよう?とパニックになっており、固まっていたのだ。
そしてトリトが一番気にしていたのは、コウが自分の事をどう思ったのだろうか?だった。
確かコウは、鍛えられていて脚が細く、胸の大きな女性が好みだと言っていた。それとは別に何やらかなり恥ずかしい事を言っていたが、それは男同士の会話であるし、残念ながら女のトリトには理解できなかった。例えばお前は右向きか左か?俺は左だ!とかだ。
そんなコウから見て今の自分のこの姿はどうなのだろうかと。トリトは自分の外観に自信がなかった。そう自分が女性としてどれほど美しいのかを分かっていなかったのだ。そう、この世界にはまともな鏡が殆どない。その為己の顔をまじまじと見た事がないのだ。ただトリトが思う事は、胸の大きな女性が好きだと言っていたが、トリトはクルルの胸はどう感じているのだろうか?正直あまり胸がない。辛うじて女性と分かる程には胸の膨らみあるが、いわゆる幼児体型である。己の事よりもクルルの事が気がかりでならなかった。その為トイレ休憩をした時にトリトがコウに釘をさす事にした。
「その、何だ、コウが胸の大きな女性が好きだと言っていた事だが、クルルには言わないであげて欲しい。その、見ての通りクルルの胸はかなり小さい方だ。コウが胸の大きな女性が好きだと知ればクルルが悲しむのだ。駄目だろうか?この手の話はフレンダにも伝えていないから、コウが言わなければあの二人に知られる事はないのだが」
コウは引きつった笑みを浮かべていた。そう、トリトに色々と話していたからだ。自分の好みの女性の事や、フェチなどについてだ。
トリトから乞われたのだが、コウは上擦った声で答えた。
「分かった、分かった、分かったから」
何度も何度も頷くだけだった。トリトはトリトでコウの様子にそれはそれで満足した。
しばらくの間は席をローテーションしながら進んでいたが、ふとした時にトリトがコウを捕まえて聞いた。
「その、なんだ、コウ、私は変ではないか?」
「変ってどういう事だ?」
「コウから見て私はどのように見えるのだろうか?その、時折兵士の方々が私を見る目が気になるのだ。おかしくはないのだろうか?私は変な格好をしているのではないのだろうか?」
コウは唖然としていたが、ハッとなり答えた。
「その何だ。俺の評価はそうだな、トリトはザッツ美少女だ」
えっ?とトリトが唸った。
「変も何も、もの凄く似合っているぞ。それに、その、トリトは顔が整っているから、その美少女剣士だよ。女として見てどうと言うと、そうだな、嫁さんや彼女にしたいぐらい好きな感じだぞ」
トリトはくねくねしていた。
「本当に、本当にそうなのか?からかってはいないのか?」
必死に詰め寄ってくるので強めに告げた。
「お前、自分の顔を見た事がないのか?」
「顔を見た事がと言われても、鏡のようなものは持ってはおらぬし、フレンダが持っていた鏡は馬車ごと燃えたと聞いているぞ。鏡は王族や豪商位しか持っておらぬし、今まで自分の顔というのを鏡で見た事がないのだ」
コウはハッとなり、収納から鏡を出し、トリトに渡した。
「なあトリト。からかってはいないし、本当にお前の事は綺麗だなと思っているぞ。騙されたと思って俺の持っているこの鏡で自分の顔を見てみろよ」
そしてトリトは自分の顔を初めて鏡で見たのだが、かなり驚いた顔をしていた。
「こ、これは魔道具だな。そうに決まっている。きっと美しい姿を見させるそういう魔道具なのだろう?」
コウは思わず吹き出して笑ってしまった。
そしてコウはトリトの横に並び、鏡に映った自分とトリトを見ながら伝えた。
「なあトリト。俺の顔は鏡と実物で違うように見えるか?」
トリトが首を振っていた。
次にコウが言った言葉もやはりトリトは信じられなかったりする。
「そうだな、今見えているこの姿がお前の本当の姿だぞ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます