第36話 魔王軍との戦い
コウは敵の姿を確認すると小声でトリトに伝えた。
「奴等だ。トリト、俺が魔力弾で攻撃するから防御の方を頼む。俺は剣がまともに使えないんだ。剣の実力はというと、どう頑張っても剣だけで君と打ち合えば数合でまちがい無く負けるよ。ステータス頼みで俺の方が早かったから今までは何とかなっていたが、例えば囲まれたら運頼みの魔力弾の乱射しかないんだ。矢も一本なら何とかなるが、大量に来たら多分刺さるし、以前も刺さったんだ」
「分かった。確かにあれは多いな。命に変えてでもコウを守ると父の名に誓い努力するよ」
コウは何となく使い方の分かる気配察知などで索敵をし、少なく見積もって100体を認識した。
「この距離だと減衰するだろうから、魔力弾は魔力20で行くよ。おそらく100発の必中を使う」
両手の指先からドドドドドと次々に魔力弾を発射した。
各指から10発を数秒で一気に放った。その様子を目の前で見ていたトリトは呆れて良いのやら、感心すればよいのか不思議な感覚に見舞われていた。
次々と林の中に放物線を描きながら飛んで行き、阿鼻叫喚や怒声が聞こえて来た。流石に光っていたので、発射位置を見られた為、即移動して別の場所に隠れた。
別の草むらの中に隠れた後、次のターゲットを索敵したが、先程まで二人がいた場所に槍やら石やらが飛んでいて、その場にいれば間違いなく串刺しになったりして死んでいた筈である。
「次もなんとか行けるが、次を放ったら流石に奴らも近くに来るだろうから頼むよ」
「了解した。しかしそれは凄いな」
そして先程までコウ達がいた周辺の木々が倒れた。どうもあの女魔族が鎌を振るったようだとコウは確信した。
「なる程。見えたよ。確かにあれはやばそうだな。でもどうなるか分かっていれば対処は可能だな」
コウは魔力弾の第二弾を放った。しかし、放っている最中にサザリーに発見され、サザリーが鎌を振った。途端にトリトがコウを引っ張って倒し、地面に転がした。そうやって見えない刃を躱したのだ。
するとサザリーが部下を下がらせた。
「貴様ら何者だ?魔王軍四天王アイリス様直属の7闘魔の一人と知っての狼藉か?」
「確かにコウの言う通りあれはエロいな。まだ裸の方が清楚に見えるな」
「残念だなサザリー。待ち伏せをしていたようだがそうは行かないぞ。俺は勇者コウだ。このまま逃げるのなら見逃してやるが、戦うなら覚悟しろ」
「貴様!何故アタイの名前を知っているのだ?それにその声、お前男だな。いいぞ!女に見紛う位の美形だな!お前達アタイのペットにしてやるよ。お前のXxoでアタイを楽しませてくれ!お前いいぞ!そそるぞ!いい〜♪」
「交渉決裂だな。じゃあ死ねよ。それとも俺のペットとして飼ってやろうか」
「あらあら、アタイを楽しませてくれるのかしら。2人掛かりでアタイを犯りたいのかい?良いわ貴方達!おいで二人共」
一瞬目が光ったが、コウは顔を恍惚に歪めながらサザリーの方にゆっくりと歩いていき、目の前に立つと抱き付いた。そしてその豊かな胸に顔を埋めた。しかしトリトはコウに引きずられるように近付き、抱き付く振りをして剣を振った。するとサザリーは避けたのだが、それでも左腕の肘から先が宙を舞って地面に落ちた。
「何故アタイの魅了が効かない!そうか!そんななりだが貴様女か!お前らこの女を犯しな!美形だぞ!」
サザリーは残っている方の腕で鎌を振るい、トリトと打ち合っていた。本来であればトリトの力では勝てない相手だが、手負いであり、片手で両手武器を振り回しているのと、腕を失った事によりバランスを取るのに苦労していたので、互角に打ち合っていた。
コウはトリトがサザリーと対峙し切り結び始めた時に我れに返った。そしてトリトの背後から襲おうとしている盛の付いた魔物に対し、次々に魔力弾を放った。
結果トリトとサザリーの一騎打ちが続いていた。
コウが馬車の方を見ると、一部の魔物が馬車の方に向かっていたが、フレンダとクルルも戦闘を繰り広げているのが分かった。
向かっている奴等の数が少ないから大丈夫そうだが、基本的にフレンダが水系の氷魔法で倒し、討ち漏らしや別の方向から接近する者はクルルがその手に嵌めた長い鈎爪で切り裂いていた。
フレンダはルインに、クルルはダインに乗っている。コウがダインに今だけクルルを乗せて戦って欲しいとお願いしたからだ。そうしないと皆死んでしまうと諭した。ダインも状況が理解できたようで、今回だけだからなと言わんばかりに嘶き、クルルを乗せていた。
クルルは鞍からジャンプして魔物を切り裂いてはバク転をしながら再度騎乗の人になる。そんな感じで戦うクルルのその戦いぶりにフレンダは見惚れていた。
クルルもフレンダの魔法攻撃に凄いニャと唸りっぱなしだった。
サザリーはコウをもう一度誘惑した。
「おいで坊や。あたいの体を好きに触っても良いのよ♪」
しかし魅了の魔法が発動しない。
そう、コウは魔法封じを使うべく魔道具に魔石をセットし、咄嗟に草むらに置いたのだ。それが今ようやく発動したのだ。
つまりサザリーは大した魔力がないのだ。フレンダはギリギリ結界の外にいる感じだ。
「貴様、一体何をした?何故あたいの淫魔魅が効かぬ?と言うか発動しないのだ!何故だ?」
「女を殴るのは趣味じゃないが、よくも俺を掘らせたな!」
コウはグーで殴り飛ばしたが痛みから手を擦り、いたたたと唸っていた。サザリーが殴られた時に鎌を落としたので、拾われる前に先に触れる事が出来たので収納に入れた。
そして剣を喉元に突き付けた。
「終わりだ!お前の負けだ。大人しく降伏しろ。大人しく降伏するなら命までは取らない」
「くそったれ!このxxなxxに負けたのか。アタイのxxにxxじても良いから見逃しておくれ?ねぇ。おっぱいを好きにしゃぶらせてやるから。なんなら今まぐわっても良いわ」
サザリーの手を見ると何やら部下に指示をしているようで、途端に背後から何かが襲ってきた。
コウは必中を使い、後ろを見もせずに頭上に矢を放った。すると放たれた矢は見事な放物線を描き、コウの背後に迫った奴等の脳天に次々と刺さった。気配を認識したターゲットに対していつの間にか見なくても当たるようになっていた。それも無意識に実行出来るのだ。
「ば、ばかな。そんな事ができるなんて貴様何者だ?」
「勇者だって言っただろ。降伏のチャンスをやったのに残念だよ」
コウは徐にサザリーの得物の鎌を出し、一気にその首を撥ねた。
本能的に理解したのだ。こいつは生かしておけば危険であり、今討ち取らねば次はこちらが殺られると。今回は時間遡行のお陰でこちらが先に見付けられたのでなんとか勝てた。だが逆に先に見付かるとこちらがやられるところだったのだ。
まるでフォ○トナイトと同じだなと唸った。あれも先に敵を見付け、こちらから襲うとまあまあ勝てるが、先に見付かり、背後から襲われたらひとたまりもないからだ。
「悪いな。女でも容赦しないよ。体だけは良い女だったが、お前、性悪過ぎたんだよ」
サザリーの部下は己の主が殺されたのを見て散り散りに逃げていった。一部は激昂して襲ってきたが、統制の取れていない者は敵ではなかった。
取り敢えずサザリーの死体を収納に入れてからフレンダ達の元に駆け付け、残党を始末して行くのであった。
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