第37話  後始末

 戦闘が終わった為、コウは皆の体を確認し始めた。


「皆怪我はないか?」


 コウはまずはフレンダに駆け寄り、服を捲ったが、もう少しで胸が見えそうな位まで一気に捲ったものだからフレンダは慌てた。


「な、なにやってんのよ」


「良かった。お腹は切れてないな」


 次に周りを警戒していたクルルの服も捲った。


「おまん何するニャ?ギャー犯されるニャ!」


「良かった!お腹に傷はないな!」


 そして状況を悟ったトリトは自らお腹を出した。

 女のようなくびれたお腹だなとはコウは思ったが、お腹を触った。


「良かった。皆お腹大丈夫だな。ダインも首な繋がっているよ!」


 ダインははっとなり、コウから逃げたが、コウは軽業師よろしくジャンプし、その蔵に乗って首を撫でていた。


「なっ?コウはあんな事も出来たのだな。それにしても凄い身体能力だ。クルルといい勝負ができそうだな」


「コウはあんな事出来なかった筈よ?急に能力が上がったのかしら?」


「さっきの話し、時間遡行と言うのは本当なのだな。あれがなければ確かに我らは皆というか、コウ以外死んでいたのだな。やはりコウが私の運命の人なのだろうか?彼はまだ男だと思っているようだな。鈍感なのだろうか?」


「トリト、貴女ひょっとして?」


「あ、いや、異性として好きだとかはまだ思っていないのだが、彼の力には正直惚れたよ。フレンダも好きなのか?」


「私はね、彼をこの世界に連れてきてしまった責任があるの。好きか嫌いかはよく分からないの。だけどね、嫌いじゃないの。少なくとも私の方はね、子供扱いされていて、異性として相手にされていないの。全てを捧げると言っても怒られて抱こうとしないのよ。彼ひょっとして衆同の気は無いわよね?」


「それはないと思うぞ。時間遡行をして無かった事にしたが、怒りに任せフレンダを殴り、一度犯そうとしたと言っていたぞ。その時の快楽が怖かったと。自分の中の獣性が怖いと。最低な事をしたと、フレンダの目を見れないと。コウは少なくとも女を好きで、男と乳繰り合う性分では無いぞ」


「そっか。実感がないのよね。まだ男性経験がないから、一度犯そうとしたと言っても。はあ。」


 そんな会話の中、黙々とクルルが戦利品を漁っていた。


 コウもはっとなりフレンダに周りの警戒をお願いしつつ、魔石の抜き取りと戦利品を漁りに行っていた。


 全部で223体になっており、そのうち200体はコウの魔力弾で倒していた。


 防具は小さ過ぎたり大き過ぎたりと役に立ちそうもなく、一部サイズ的に良さそうな物も有ったのだが、引き剥がすのには抵抗が有った。死体に慣れているとはいえ、気持ちの良い作業ではない。


 程度の良い武器だけを集めたが、そこそこ良い剣や槍が10本ほど有っただけで、後は粗悪品ばかりであった。


 戻ってきたコウにフレンダは仕返しとばかり、体の確認をしていた。

 文句を言い掛けたが、あっさりと躱された。


「コウは怪我ないの?大丈夫?私達のお腹を見たんだから、黙ってあんたのも見せなさいよ」


 そうしていると、後ろからクルルにホールドされ、フレンダに服を捲られていた。フレンダはお腹に抱きつき


「私達の事を心配してくれてありがとう。コウは無理してない?あんたが死ぬんじゃないかって心配したんだからね」



 フレンダは泣いていた。最初はからかうつもりだったが、途中から本当に心配していたのだと気が付き、怪我がないと分かり安堵から泣いたのだ。



「お前まさか泣いてんのか?」


「勘違いしないでよね。泣いてなんかいないわよ。目にゴミが入っただけなんだから」


 コウはハンカチを出して、フレンダの鼻に当てた。


「ほら、ちーんして」


 フレンダはついつい言われるがままに鼻をかんだ。


 コウがクリーンを掛けたが、フレンダは真っ赤になりながら言い訳をした。


「ちょっと、何してんのよ。子供の時の癖でちーんされちゃったじゃないの」


「子供の時?」


「私って王女じゃない。鼻も一人でかめなくて、侍女にちーんされていたの。その、おトイレでお尻も拭かせて貰えなかったのよ。だから昔の癖なんだから。」


「王族ってのも大変なんだな」


「取り込み中悪いのだが、ソロソロ出発して、町で魔王軍が出た事を報告しなければならないぞ。最優先事項だぞ。」


「早くご飯にしたいニャ。お腹すいたニャ」


「そうだったわね。魔王軍の将校が出たって事は結界にほつれが出た事なのよ。今までは低級な尖兵しか出れなかったようだけれども、事態はあまり良くないわね。さあ行きましょう!」


「って死体はどうすんだよ?」


「街道にいたのは脇に投げたでしょ?町の駐屯兵に処理は任せるから、道の脇に武器を転がしておけば大丈夫よ」


「そっか。じゃあ行こうか。ダイン、クルルを乗せてくれてありがとうな」


 ダインは短く嘶き、馬車の方に早くつなげと言わんばかりにコウの袖を噛んで引っ張っていくのであった。


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