第35話 尖兵と掘られ
コウが床にダイブした次の瞬間、体の上を何かが通り過ぎた気がした。
するとドサリという音と共に、生暖かい何かが背中に掛かってきた。
慌てて体を起こすとトリトが覆いかぶさってきて、唇が重なってしまった。
「うわー、男とキスしちまった」
思わず呟いたが、おかしかった。
トリトを受け止めたが、体は軽く、目に生気が感じられなかった。また、抱きしめた形だが、トリトから生暖かい何かがコウの下半身に流れていた。
はっとなり馬車を見ると、荷台のホロが無くなっていた。
また、シートには胸や腹部より上のない体が座っていた。
えっ?となり床を見ると、上半身のみになった3人がそこに転がっていた。
よく見るとダインとルインも首がなく、血が間欠的に吹き出していた。
慌てて地面に降りたが、そこには所謂死神の鎌を構えた、ピチピチのビキニ姿の妖艶な女がいた。まだ裸の方がエロくないなと思った位の格好だ。
「あら?貴女は死ななかったの?まあいいわ。お姉さんの手により死になさい。女は嫌いなの。もし貴女が男ならアタイのペットとしてアタイにご奉仕させてあげるわ。それとも部下の慰め者にしようかしら?」
「何者だ貴様?貴様がフレンダ達を殺したのか?」
「ふーんフレンダって言うの?恋人かしら?うふふ。ええそうよ。これからこの国を攻めるのに偵察しようとしたら、運の悪い貴女達がいたの。まあ、いきなりだけどさようなら。さあお前達、ご褒美だよ。犯しな!アタイを楽しませるんだよ!そうだな、冥土の土産に名前くらい教えてやるよ。アタイは魔王軍四天王アイリス様直属の七闘魔の一人サザリーだ」
その女の額に魔石があった。朝黒い肌に腰までの赤い髪。キツめの顔立ちだが美人である。
コウはその女が振った鎌が見えなかった。いきなり刃の横で殴られ、そして吹き飛んだ。部下に犯しな!と言っていただけあり殺さなかったのだが、体が麻痺し、意識はあるが動けなかった。
すると引き連れてきたひょろ長い二足歩行の人には見えない魔物というか魔族に捕まり、服を剥ぎ取られ、犯された。絶望と恐怖から失禁さえし、やはり動けなかった。そしてお尻が痛かった。また手足はサザリーに一気に切断され、何もできなかった。
「姉御、こいつ男ですぜ!」
「何だ!なにを男とやってんだよ。そいつが男ならあたいに寄越しな」
そうやってコウを起こし、男性の象徴を値踏みしていた。
「あら立派なものを持ってるじゃない。あたいにそれ頂戴」
彼女はコウを奪い、コウを下腹部に抱き寄せ、恍惚に浸っていた。強制的にまぐわえるように薬を盛ったのだ。
薬の影響でサザリーが恍惚に浸っている間、コウの意識が朦朧とし、快楽に溺れていたが、果てた後コウは自我を取り戻し、己の手足がなくなっており、ダメ元でサザリーと繋がっている股間からありったけの魔力弾を放った。
見事にサザリーの下腹部を吹き飛ばし、サザリーを倒した。
倒した事を確認し、今度は痛みと失血から意識が朦朧としてきたが、辛うじて時間遡行と呟くのであった。
コウは意識を取り戻した。どうやら先程サザリーによりフレンダ達が殺される5分位前にいると分かった。今更逃げられる距離ではないと思ったが、先程の恐怖で身体が震え出し、隣りにいたトリトに思わず抱きついた。そして恐怖から失禁していた。
「ちょっ、何をやっているのだ?おまけに失禁してるじゃないか?コウ?どうした?おかしいぞ?」
「ああ、トリトが生きている?フレンダも生きている!止まるんだ!このままだと全員殺される!」
コウははっとなり己にクリーンを掛けたが、その狼狽えぶりにトリトとクルルは戸惑っていたが、フレンダはすぐに反応した。馬車を道の脇に停めるようダインとルインに伝え、支離滅裂なコウの頬をひっぱたいた
「しっかりしなさい!男の娘じゃなくて男でしょ。その様子だとまた時間遡行を使ったのね?」
フレンダに抱きつきお腹で泣いたが、フレンダが引き離し、また頬を叩いた。
「くっついてるよ!お腹がくっついてるよ。みんなお腹から切断されて内蔵がどばーってなったんだ。生きてる!生きてる!俺犯されたんだ」
「時間遡行する前に私はお腹を切り裂かれたのね。確かコウの時間遡行は30分よね。何があったの?しっかりしてよ!」
「ああ、すまない。もう大丈夫だ。奴は魔王軍四天王の何とかというやつの部下の七闘魔の一人とか言ってて、多分死神の鎌を振り、鎌鼬のようなので皆を切り裂いたのだろうと思う。距離があったから多分だが、そうとしか思えない。もし鎌を振ってきたら、何かが飛んで来るのが見えないけど、見えない刃が飛んで来ると思ってくれ」
「分かったわ。そこまで分かっているのだから何とかなりそう?」
「奴に魔力弾が効いたから、初撃の鎌に殺られなかったら大丈夫だと思う。フレンダは援護と馬車の見張りを。クルルはフレンダのサポートを。トリトは俺と来てくれ。俺の護衛を頼む」
トリトはフレンダに何やら一言言われ、コウの後を追ていった。
「コウ一体何があったんだい?」
「皆が死んだあと俺は魔族に捕まったんだ。手足を切り落とされ血が出ないようにされた後、多分薬を盛られ、更にオスの魔物に犯されたんだ。その後男と分かった途端にあの女と合体させられたんだ。薬か魔法で無理やり合体出来るようにされたんだ。半端ない快楽と恍惚だったよ。怖かった。でも何とか正気を取り戻し、奴と繋がった股間から魔力弾を放ち、奴の体内から爆発させたんだ。フレンダには言うなよ」
「つまり穢されたと?でも時間遡行したから、体は穢される前に戻ったのではないのか?」
「体はな。心はそうは行かないよ。それに俺は怒りから一度フレンダを強姦仕掛け、暴力を振るったんだ。時間遡行したから彼女は俺から殴られていたりはしないんだ。彼女の中では俺に裸を見られていないが、俺の心はそうは行かないんだ」
「後悔したのだろ?フレンダが言っていたよ。なあコウ、君は悪い夢を見ただけなんだ。な、フレンダは犯され掛けてもいないし、君は穢されていないよ。男と乳繰り合う性癖はないのであろう?私も男同士が乳繰り合うのを是とはしないし、犯されたのであって自ら求めた事じゃないのだから、私は気にしないぞ。君は例えば盗賊に強姦された女性がいたとして、その女性の事を穢れた存在などと見ないのだろ?私も同じだ。そんな事よりどんな敵なんだい?」
「奴は病的に女が嫌いでな。だから二人は理由を付けてサポートに回ってもらった。一言で言うと、そうだなエロい。俺にも男ならご奉仕するペットにしてやるとか言ってたよ」
どんな敵か話していると、前方に魔物らしき者達の姿が見えてきたのであった。
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