第30話  事実


 ギルドにて討ち取った盗賊のライフカードを提出して討伐の報告をした時に、本来であれば最初の盗賊討伐報告時に、冒険者ランクが一つ上がっる筈だが、何故か上がっていない。それはおかしいと受付の女性が言っていた。また、報奨金が少ないとも言っていた。


 本来であれば今回の討伐でDランクになれる筈なのだが、前の町では登録手続きしかしてくれなかった為、 F ランクのままだと言う。ランクを上げ忘れたのであろうという事で、今回、前回分と合わせ、一気に2つ上げる事が可能かをギルドマスターに聞いておくと言っていた。ただ、昨日の昼からギルドマスターが終日不在で、翌朝はギルドに来るからその折にギルドマスターと話をしてくれる事になった。また、お金を含め、不正の可能性もあると言っており、それを聞いたフレンダの表情は暗かった。


 翌朝一番で受付に行くと、前日の受付の女性が既にギルドマスターと話をしてくれており、二人のランクをDに上げてくれた。ランクが上がったからといってすぐにどうこうという事はないが、ただなんとなくではあるのだが、それでもコウはランクが上がったという事が嬉しかった。


 ギルドを後にしてからはフレンダの御者で馬車を進め始めた。暫く進み、周りの目も気になる事がなくなったのでコウはフレンダに絶対に怒らないから、ありのままの事実を話して欲しいとお願いした。そうしてフレンダが知っている事を全て話して貰う事になった。ただ、フレンダは精神的に追い込まれており、話を整理する余裕がなく、話がダブったり、時系列が前後したりと少し分かり難かった。


 フレンダは不安そうな顔をしていたが、大丈夫だ。俺を信じろとコウが真剣に言うので頷いて恐る恐るとだが話しを始めた。


 オニール国には魔法を学ぶ為に留学をしている。今回は召喚の魔法陣を発動させて聖女召喚を行うにあたり、適性のあるフレンダが急遽呼び戻されたという事であった。恥ずかしそうに話したが、オニール国の魔法陣と連動しており、オニール国の魔法陣にはフレンダが魔力を注入したが、予定日になっても魔法陣が発動しなかった。


 ウッダード国側の準備に問題が起こったのだ。フレンダの一族の中で、穢を知らぬ乙女のみが魔法陣を発動させる事が出来るのだ。又は女性経験のない宮廷魔道士並みの魔力を持った一族の者。元々オニール国から魔法陣を発動させる為の一族を派遣する事となり、丁度フレンダが留学していたのでそのままフレンダが行う事になったのだという。また、フレンダの姉は既に初体験を済ませており、夜の方もお盛んであった。乙女どころか淫乱娘だったのだという。その事が判明し大騒ぎとなり、姦淫していた男は調べられ皆殺しにされたらしい。また、他に魔法陣を発動させる事が出来る者を呼び戻して入るが、フレンダが一番早い場所にいたから呼び戻されたのだという。


 それで急遽呼び戻されたのだが、その時にあの書状を亡くなった姉弟子が渡されていた。


 その為、ウッダード国の魔法陣自体は既に描かれており、フレンダが魔力を注入し、魔法陣を発動するだけになっていた。


 フレンダが最期の詠唱を行い、魔法陣に魔力を注入した段階で気絶してしまった。そしてコウが連れ去られてから1時間程で目が覚めたというのだ。目覚めた時にフレンダが気絶している間に何が起こったのかを伝えられた。留学先からは亡くなった姉弟子や兄弟子が同行していたとの事だ。


 オニール国から召喚の為にウッダードに向かうメンバーは、留学先の学園の師匠の方達が決めていたと言う。


 そしてフレンダがウッダード国に戻り、魔法陣を発動させたが召喚は失敗したとなり、不機嫌な国王に怒鳴りつけられた。そして留学先に帰れと追い返されたと言う。やり直しをするまでに他の者が帰ってくるからだ。


 ただ自分が召喚した者が放逐という名の処刑をされると兄弟子に聞かされ、どうすべきか迷った末にフレンダは救出に向かうと言い出した。


 ところが召喚者を放逐する場所はフレンダが単独ではとてもではないが行けない強さの魔物が出る危険な場所だった。冒険者でも上級パーティでやっと通過できるレベルだ。


 姉弟子達からは無理だと言われた。但し、もし召喚者が生きて山を降りる事ができたならば、おそらく隣の国であるオニール国に向かうであろうと。その為、すぐに出れば落ち合うチャンスがある言われ、父王に言われたのもありすぐに出発した。


 まずはオニール国に向かい、もしも召喚者が山を越えられた場合に通るであろう所で待ち伏せし、そこに現れる事を祈るとしてその場所に向かっていた。


 そうやってオニール国を発した時のメンバーでとんぼ返りにオニール国に戻る方向で出発したのが実情だと言う。


 今でこそフレンダと名乗ってはいるが、元々フレンダというのは引退した師匠のかつての仲間のうちの一人の名だと言う。向こうでは基本的に王族というのは伏せており、極一部の者しか正体を知らないという。


 自分が召喚した者に死なれたくないとの思いから探しに行く為と、国王に半ば追い出され、オニール国に向かい始めた翌日にあの者達に襲われたと言う。


 ただコウはあれは兵士じゃないのか?と言うとなんとなく心当たりはあるとフレンダは言っていた。


 おそらく腹違いの兄妹姉妹の誰かが差し向けた刺客ではないか?と疑っていると言っていた。


 だが盗賊と区別がつかなかったというのだ。あくまでも今思えばの話である。ひょっとすると王位継承権や王位継承を巡り、自分の身内が差し向けた刺客に2度ならず殺され掛けた可能性が高いと。

 ただし最後に臨検をしていた者達は明らかにコウを探していたと言う。


 また、今更国本には帰りたくないと言っていた。ナタリーと言う名を捨て、フレンダと言う一人の女として生きていきたいと言っていた。


 それとツンデレなあの喋り方はあれが地だという。勿論王族として教育を受けている為、淑女を演じる事も可能だとは言っていたが、あまり上品な喋り方は好きではないというのであった。

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