第29話  目覚め

 フレンダは目覚めた時に自分の顔がコウの胸に所にあった。しかも抱きしめられており、その事にパニックになっていた。その為、思わず下腹部を確認したが、まだ未経験だと言う事が分かりホッとしていた。


 自分がコウにしてしまった事に対する罪滅ぼしとして、身も心も、つまり体を捧げ、一生仕えると言ったのだが、紳士的に接するとして受け取って貰えず、体を求めてくるどころか自分を大事にしろと怒られたのだと思いだした。


 コウからはその後、本当に申し訳ないと思うなら今までと同じように接して欲しいと言われたのだ。ただ、今はコウの温もりを感じていたかった。


 コウは時間遡行をする前に怒りに任せ、自分の事を犯してしまった為、後悔から時間遡行をしたというが実感がない。


 召喚の実行者だと伝え、犯され殴られる覚悟をしていたが、優しい言葉を掛けられ、あまつさえ添い寝をされた。服に乱れもなく、エッチな事もされていない。確かに弱みに付け込むような卑怯な真似はしたくないと言っていたが、それを実行したのだ。


 この人に身分を知られたにも関わらず、自分の事を第3王女としてではなく、フレンダと言う単なる仲間として、対等の立場として接してくれている事が嬉しかった。


 コウはコウで寝落ちしてしまい、気が付いたら朝になっていた。しかもフレンダを抱きしめている事に驚き、女性特有の体の柔らかさにドキドキした。


 フレンダはコウの心臓の鼓動が早くなった事から起きたのだと分かったが、まだコウが目覚めた事に気が付かない振りをした。


「このおバカさん。私は本気なのにまだ子供扱いなのね。コウが手を出してこないなら、こちらから行こうかしら。先ずはちゅーかな」


 コウはドキドキしながら自分の唇にフレンダの唇の感触が来るのを待ったが、一向にキスされない。気持ち口の形をキスをする時のようにしていた。痺れを切らせ、恐る恐る目を開けるとそこにはあっかんべ~をしたフレンダがいた。


「ふふふ。コウったら分かり易い人ね。ホントに良いの?私の体を好きに出来るのよ?後悔しないの?」


「頼むから挑発しないでよ。今の俺はやせ我慢をしているんだから。って、もう朝だな。それよりも顔を洗って出発しようぜ。なあ、またあの猫耳と遭遇するかな?」  


 コウは不自然に話題を変えた。フレンダも話が変わり助かったなとホットしていた。


「そんなの私に聞かないでよ。何?彼女の事が気に入ったの?」


「うん。猫耳って気持ち良かったんだよね。また触らせてくれないかなって思ったんだよな」


「あのねコウ、ワーキャット族は異性に耳を触らせると言う事はね、基本的にその男性に対して従属する事を意味するの。それとね、尻尾を同意無しに触るというのは喧嘩を売った事になるのよ。同意するのも身内か恋人位なのよ。あっ、子供は別ね」


「そっか。気を付けるよ。でもあの尻尾を是非とももふもふしたいな」


「まったく貴方はしょうもない人よね。トリトさんみたいにシャキッとしていればコウは格好いいのに」


「なんだフレンダはトリトみたいなのが好みなのか?」


「えっ?どういう事?」


「いいんだぞ。俺以外の男の事を好きになって、そいつのところに行っても」


「あらあら。ひょっとして焼いちゃったの?ふふふ。そんなんじゃないから心配しなくても大丈夫よ。私の心と体も全てコウの物だから。何時でも夜伽をしましてよ」


 コウはフレンダにからかわれているというのが分かり、ため息をついていた。そしてフレンダはひょっとしたらと思うところがあった。


 そう、どうやらコウはトリトの事を男だと思っているようだが、フレンダはトリトの事を女だという事を見抜いていたのだ。そう、トリトは男装の麗人だった。恐らく女の二人連れだと舐められ、あまつさえ襲われる危険があると判断したのであろう。その為、男を装っているのであろうか?と考えた。自分のように襲われても撃退する実力がないのか、はたまた寝込みを襲われたりでもしたらひとたまりもないから、そうしたのかなと思っていた。


 この先の事はどうなるか分からないが、同じ方面に向かう以上再会する可能性が高い。今はトリトが女だという事はコウに伏せようと思うフレンダである。その方が面白いかな?と思うからでもある。


 そしてフレンダは思った。あの二人はトリトが女だという事を隠しているつもりなのかしら?ふふふ!といった感じであった。


 それはともかく、前日にちゃんと注文しておいたお陰で、今朝は宿で朝食を食べる事が出来た。


 食事の後ギルドに寄ってから出発する事になった

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