第25話  追手とダインとルイン


 コウはいつの間にか寝ていたようで、気が付いたら既に宿の馬車置き場にいて、丁度フレンダが馬を馬車から外し、馬房にて休ませようとしている所であった。


 フレンダが何度か起こそうとしたが起きなかったと言っていた。特に何もなかったから無理に起こすのを諦め、宿を目指したと言っていた。


 その日はフレンダの様子が少しおかしかったが、疲れが溜まっているのだろうとコウは思っていた。自分は休ませて貰っていたが、フレンダが一人で殆ど御者をしていたからだ。


 この日の宿はベッドが2つあり、各々別のベッドで寝たが、フレンダは頑なに一つの部屋を使うと主張した。


 コウが間違いが起こるといけないから部屋を分けようと言うと、一人で過ごすのが怖いと涙ぐんでいたので、コウは別のベッドで寝る事を条件に、渋々だが一つの部屋に泊まる事を了承した。


 お互いに疲れから夕食後はすぐに眠っていた。


 翌朝旅の続きとなり、後2日で国境に辿り着く見込みになった。


 朝食の後すぐ近くにあるギルドにて盗賊の討伐報告をしたが、盗賊は2名で残りは初犯だそうだ。


 金貨114枚にしかならなかったが、ほぼ賞金首の盗賊の二人の分だった。


 宿に馬車と馬を取りに行ったが、コウは馬を見て驚き、馬もコウを見て突撃していた。


 フレンダがあっと悲鳴を上げ掛けたが、2頭の馬にコウは両頬を舐められていた。


「こらやめろダインにルイン。なんでお前らがここにいるんだ?うきゃきゃきゃ」


「コウ?この馬達を知っているの?」


「ああ、俺をあの山に放逐する時に俺が乗っていた馬車を引いていたのがこいつらで、休憩の時とか何故か俺に懐いてたんだよな。何故俺達の馬車をコイツラが引くんだ?」


「きのう盗賊に襲われた時にあの場にいたのよ。あの中の誰かが乗っていたようなの。私達の馬は逃げちゃったのだけど、この子達が馬車に繋げと私に言ってきたの。勿論喋らないけど、そうとしか思えないの。立派な子達ね」


「ちょっと待て、顔をいまいち見ていなかったが、少なくともあの馬車にいた奴の中に見た事のある奴はいなかったぞ。こいつらがいるって事はあの襲撃者は城の兵達じゃないのか?それも俺を放逐した後山から戻り、直ぐに来た筈だぞ」


「あっ!確かに剣は城の兵達が使っているのと同じね。まさかコウの事がばれて追手を差し向けて来たの?」


「どうだろう?色々な可能性があるけど、あいつらは少なくとも俺の事を女だと思っていたぞ。二人の兵士がダインとルインに乗っていて、お目付け役としてならず者と来たのか?。そのついでに女二人を見てお楽しみ!となったのかもな。俺を探すついでに悪事も働いていたんじゃないか?それか城への帰路で魔物に襲われ、逃げ出したダイン達を偶々捕えて乗馬にして襲ってきたとか?」


「確かに色々可能性が有るわね。これから先気をつけないといけないわね。じゃあルイン、ダイン、私はフレンダ。改めて宜しくね。きゃははは。ルインってばくすぐったいってば」


「ルインはフレンダの事を気に入ったようだね。兵達はこいつら気位が高く、馬車は引いても乗馬は滅多に許さなかったらしいぞ。でもあの賊達が乗ってたのか?」


 フレンダは首を傾げていた。この2頭が賊を乗せているのをコウもフレンダも見ていなかったからである。


「私は見ていないけど、そろそろ出発した方が良いのじゃないかしら?」


「そうだね。話は道中しようか。今日は俺が先に御者をするから、アドバイスをお願いね。まだ慣れていないから」


「そりゃあそうでしょうね。あちらの世界では馬は普通使われていないのよね?。それにしてもあんたの習熟スピードには呆れるわ。これも召喚者としての能力かしら?」


「いや、馬自体は元々乗れるんだ。馬上から的に矢を射かける祭りがあってね、そこで俺達は技を披露してたから。ただ馬車は無かったから、流石に御者のやり方は分からなかったからさ」


「なるほど。なら覚えが早いわね」


 そんなこんなで出発したが、ダインとルインは特に指示がなくても先読みし、コウが綱で指示をする前に適切に動いていた。


「あんた達賢いのね。コウの思っている事が分かるの?馬は人と話せないけど、頭が良いって聞くのよね。この子達は特にそうね」


 ルインは褒めて褒めてと言わんばかりに嘶いた。


 コウは手綱を握って座るだけだった。順調に進んでいたのだが、昼休憩を過ぎた頃、急にダインが歩みを止め道端に寄り、機嫌悪そうに嘶いた。


「急に止まってどうした?」


「何かが来るわよ」


 コウはフレンダの警告の声を聞くとすぐに弓を出していつでも戦えるように準備していた。


 そうしているとコウは何者かが後ろから来ている気配を感じた。その為後ろを確認したが、鎧を纏った騎馬の一団が接近してくるのが見えるのであった。

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