第23話  目覚め

 コウは寒さから震えていた。だが同時に柔らかい何かに包まれており、温もりを感じていた。何より心地良かった。

 そして目を開けるとフレンダの顔が目の前に有った。


「おはよう」


 間の抜けたコウの声にフレンダは微睡んだ感じで答えた。


「ようやく起きたのね。愛おしい人」


 コウは今の状況が理解できなかった。どう考えても自分は裸で、裸のフレンダに抱きつかれている。温もりを感じたが、今は一気に冷や汗をかき、凍える位に狼狽えた。


「な、なんで俺とフレンダが裸なんだ?」


「私、初めてだったの。コウが強引に私を求めたの。嫌じゃなかったけど、ロマンチックな状況でして欲しかったのに、あんなに強引で熱烈に迫られたから拒否できなかったじゃない。責任取ってよね!」


 コウは本格的に狼狽え、責任を取らねばと考えた。ただ、フレンダとエッチな事をした記憶がないが、今のこの状況から彼女と致した後で抱き合い寝たんだと、折角童貞を卒業したのに彼女を抱いた記憶がない。


 考えても仕方がないが、記憶に残っていないがやってしまった事に対して男として責任を取らねばと思った。だが、よくよく考えるとそんな訳無いだろうと思う。冷静に考えれば今のこの状況は体が冷え切っていて、多分温めてくれたのだろうと。そうと分かると、紛らわしい事を言ったお仕置きにこちらから迫ってやろうと決めた。


「分かった。俺も男だ。記憶にないけどした事に対してちゃんと責任を取るよ。今のこの状況は俺は君が16になるまで抱かないと言ったが、そう言った矢先に君を抱いたんだな。君さえ良ければ結婚しよう。と言う事でちゃんと心を込めて、改めて今から君を愛したい。」


 そうしてフレンダの胸に手を伸ばしたが、フレンダは慌てて毛布で体を隠しながら後ずさった。


「ち、違うわよ。そっちじゃなくてキスよ、キス。私、調子に乗っただけなの。ごめんなさい。まだ覚悟が・・・でもコウが私を求めるならいいわよ」


 フレンダは胸を手で隠してはいるが、毛布を落として目を瞑った。


 しかしその体には後ろからコートが掛けられた。そして本気でコウは叱りつけた。



「こら目を瞑るな!折角お前の貞操を守ったところなんだぞ」


「いいの。あなたの好きにして!私は本気であなたの子を生みたいの」


 そうするとフレンダはコウの頬を両手で挟み、己の唇にコウの唇を当てキスをした。コウは理性が飛び、フレンダを自分のものにしようとし、彼女の体を求め、今まさに一つになろうとしていたが、急にブラックアウトした。


 おもむろに起き上がるとそこは馬車の中だった。

 そう、夢だったのだ。

 頭に木箱が当たり目覚めたのだ。


 そして己の下着の中がやばい事になっているのが分かり、慌ててクリーンを掛けたが、やたらと頭が痛くてだるかった。


 また、頭にはフレンダが慌てていたのか、フレンダの下着やら服が有り、なんてものを枕にしたんだ!お陰で妄想的な夢を見たじゃないかと唸っていた。


 しかし頭に当たった箱から中身が出ていて、気になり見てみた。


 最初の時のと同じ作りの魔法封じの魔道具だったが、セットされている魔石が違った。今回の方が大きく、かなりの魔力を感じる。ふと思い、箱の中にあった魔石を取り出し、代わりに収納から出した小さな魔石をセットすると魔法封じが発動した。


 するとフレンダが慌てて荷台を見て叫んだ。


「コウ起きたの?不味いかも?また魔法封じが使われたわ。寝ていた所悪いけど動ける?」


「ああ、俺が試しに別の魔石をセットしたんだ。大丈夫だよ。フレンダって記憶力は良い方か?」


「ええ、自慢する訳じゃないけど、記憶力が悪いと上級魔法は使えないわ。詠唱が長いのよ。それより何よ試したって?それに私の下着で何しているのよ?パンツ被ったら嫌よ。コウはやっぱり変態なの?」


「ばかたれ!お前が枕にしたのが服や下着なんだぞ!おまけにこれ一度穿いて洗う前のだろ!女の匂いでくらくらしたぞ!」


「あう!私間違っちゃった?ちょっと寄越しなさいよ」


 馬車を脇に停め、荷台にフレンダが入って来た。


「心配しなくても、クリーンを掛けて袋にしまっている所だったんだぞ。それを変態呼ばわりするのか?」


「あう。ごめんなさい。って起きたなら起きたと言いなさいよ!びっくりしたじゃないの。で、何をするの?」


「お前さ、これ、そもそも魔法封じじゃないぞ。それを確かめていたんだ」


「じゃあ何だっていうの?それ昔に作られた物だけど、遺跡からよく出るのよね」


「この2つを見て何も感じないのか?魔石の魔力量が違うだろ?」


「あれ?2つ目の分の魔石は凄い魔力ね。これ一つで家が建つわね。なんであいつらってこんな高価な魔石のを持っていたのよ!」


「多分違うよ。これさ、元々はしょぼい魔石だと思うんだ」



「どう言う事なの?勿体つけないで言いなさいよ」


「あのさ、これ魔法封じじゃなくて、魔石に魔力をチャージする道具だと思うぞ。魔法を発動すると、その魔力を吸い取られるけど、消費する魔力が1万を超えたら魔法を放てるぞ。要は魔法を使う時に魔力1万をチャージし、それ以上の魔力を持っていないと魔法が発動出来ないのだと思う。俺の今の魔力量は21万2126だな。覚えておいてな。それと魔石の状態を見とけよ」


 そうして魔力弾を放った。


「ほら、魔石が変化したろ。それと今の魔力量は20万2322だな。段々回復して居るけどな。ほら、フレンダの杖にこいつをセットしてみな」


 そうして、今魔道具にセットしていた魔石を外し、フレンダに渡そうと手を伸ばした。

 フレンダは不思議そうな顔をしながらコウから魔石を受け取るのであった。

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