第19話  異変

 二人が弁当を食べ終わった時に、フレンダはコウの顔を見てため息をついていた。ため息をつきながらコウの頬に付いた食べかすを取り、コウの口に押し込んでいた。


「ほら食べかすが付いてるわよ。もうコウったらだらしないのね。そんなだと女の子にモテないわよ。まるで子供みたいね」


 などとブツブツ文句を言いながらもコウの顔を拭いていたりした。


 別段頼んだわけではないのだが、フレンダは甲斐甲斐しくコウの世話をしていたのだ。コウが散らかした物を片付けたり整理整頓をするのに、そそくさと動いていたりするのだ。フレンダは綺麗好きでもあるが、それを差し引いてもコウがだらしなさ過ぎるのだ。


 まったくもうだとか、図体がでかいくせにお子ちゃまね等とぶつぶつ言いながらも、コウの服が着崩れていたりするとそれをすぐ直していた。コウはそんなブレンダにどきりとしたり、世話を焼いてくる事を快く思っていたのだがつい呟いた。


「お前って意外と世話焼きなんだな。良い奥さんになれるぞ。俺の嫁さんに欲しいくらいだ」


「何を馬鹿な事言ってるのよ。あんたがだらしないだけでしょうに。折角綺麗な顔に生まれたんだから、少しは身なりに気を付けなさいよ!そんだだと一生結婚なんて無理よ」


「大丈夫だよ。俺にはフレンダがいるからさ」


 ブレンダが一瞬固まった。


「な、な、何をバカな事を言っているのよ。あんたの事なんか知らないわよ。まったくもう!これだから男っていやだわ」


 そう言いつつもモジモジしていたりしており、フレンダは分かり易い性格をしていた。それはともかくコウはフレンダに感謝をしていた。


 馬の世話の仕方などを教えて貰い、宿で買った飼い葉を弁当を食べる前に食べさせていた。馬といっても地球で見る馬とは少し違う。そう首が短いが、逞しく力強い印象だ。名前は違うのだろうが、翻訳機能は馬と訳していたのだ。


 基本的には宿で買った魔物避けを着けている為、弱い魔物がは近寄ってこない。たまたまルート上にいたとか、道を横切っている所に遭遇するのは別として中々出くわさないのだ。


 これでも道中は獣型の魔物と一度だけ遭遇していたりする。それでものほほんとした平原を進んでいる。


 空気が澄んでおり心地良かった。この世界もいいのかもなと本気でコウは感じていたりする。空気が澄んでいるのか遠くがよく見えた。


「さっきの人たちは何だったのかしら?」


「うんそうだな。フレンダが可愛いからナンパしに来たんじゃないのか?」


「何をバカな事を言っているのよ」


 違和感があったが、やはりまだこの世界に来てからの時間が少なく、この世界の事がよく分かっていなかったのもあり、今このタイミングで声を掛けてきてたのに何故簡単に引き下がっていったのかを考えなかった。


 そしてお昼休憩をしてから30分程馬車を進めた時に異変があった。


 前方で道を塞ぐ者がいる事に気が付いた。コウはうとうとしていたのだが、フレンダに起こされた。


「何かがおかしいわ。ねえ、あれを見て」


 そうしてフレンダに言われ確認すると、先程声を掛けてきた者達がいる事が分かった。全員馬に乗っており6名か7名がいるように見えた。


 向こうもこちらの馬車に気が付いたようだが、全員手に剣を持ち、こちらを待ち構えているようにしか見えなかった。


「なんだあいつら?さっきの奴らだよな?一体何を警戒しているんだ?この辺りは魔物でも出るのか?」


「ううん。街道には滅多に魔物が近付いて来ないわよ。何かおかしいわね。どうする?」


「どうするも何も、あそこを通らないとこの先の町に行けないんだろう。警戒しつつ行こう」


 それでも弓と矢を出し、いつでも放つ事が出来るように身構えた。何かに襲われ戦った後なのか、それとも魔物の気配がして警戒しているのか?どうしたものかと警戒しつつも近付いていった。


 するとどこかに隠れていた者も出てきて、総勢10名ぐらいに囲まれた。とおせんぼをされており、そのままでは通れない状態である。


 先に向こうから声を掛けてきた。


「ようお姉ちゃん達。運がなかったな。大人しく俺達の言う事を聞いときな。何、数日の間黙って俺達の慰み者になれば解放してやるよ。まあ、大人しく言う事を聞けば命までは取らねえよ」


 フレンダが怒り狂って答えた


「あんた達一体何を言っているのよ。あんた達、気は確かなの?あんた達に捕まる程私達は落ちぶれてはいないわよ。これでも食らいなさい」

 

 そう言うと手に持っていた杖を頭上に翳し、魔法の詠唱をしようとして詠唱を唱え始めたが、途端にフレンダがわなわなと震え始めた。


「そ、そんな。魔法が使えないわ」


 馬に乗りながらコウ達を取り囲んで来た相手は、皆剣を身構えており、じりじりと距離を詰めてきた。


「どうしたフレンダ?」

 

「この前と一緒なの。魔法封じの結界を張られているわ」


「俺から離れるな。それと奴らを倒しても文句は言われないよな?」


「もうこの段階で攻撃を受けているわ。私の中ではもう彼らは犯罪者認定よ」


「おい貴様ら死にたくなければここを去れ。今ならば見逃してやる」


 こうが言い放った


「なんだてめぇ。てめえそのなりで男か?」


 次に別の者が叫んだ。


「仕方がねぇ。あの姉ちゃんは絶対傷つけるなよ。こっちの兄ちゃんは後で頭領が掘るんだろう。くくくくく手足はもいでも殺すなよ」


 そう言って先頭の者は剣を振り翳しながら、アニメ宜しくヒャッハーと叫びながらコウ達に襲い掛かって来たのであった。

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