第8話 アイラの事情

「じゃあ今日はもう上がろうか?」


 私はタオルで顔を拭きながら二人に言った。


「あ、あぁ、そうだな...」


「アイラ、全身体液まみれだもんね...」


「アハハ、いつものことだから気にしないでよ」


「いつものことなんだ...」


「うん、いっつも魔物の返り血浴びてギルドに帰ってたら、いつの間にか『ブラッディ・リス』なんて呼ばれるようになっちゃったからね」


 私は恥ずかしくて頬をポリポリする。


「ブラッディは分かるけど、リスってのはなんで?」


「ほら、私って外見だけだと小動物っぽいっ見た目だって良く言われるから、そこからついた渾名かな。肉食のリス? みたいな」


「あぁ、なるほど...」


「でもどうしてアイラみたいな可愛い女の子が、そんな戦闘スタイルになったのよ? 他にもやりようはあったんじゃあないの?」


 クウの指摘はもっともだ。私だって本当はスマートに行きたいんだけど、これ話すのはちょっと恥ずかしいな...


「理由は二つあってね、一つは私に魔法の才能があんまりなかったこと。攻撃魔法が使えないから、魔物を倒すには打撃しかなかったんだよ。薬草とかの採取よりも魔石を売った方が金になるしね。もう一つはその...私って私生活でも学生生活でも結構ストレスが溜まっててね...ストレス解消みたいな? そんなノリで...」


「「 ...... 」」


 うん、やっぱり二人とも引くよね...



◇◇◇



 ギルドに戻って魔石を換金して貰った。それを三等分しようとしたら、リクに止められた。


「俺はなんにもしてないから、分けるなら二人で分けてくれ」


 すると今度はクウが、


「私は魔物の場所を教えただけで倒してないから受け取れない。アイラが全部貰っていいよ?」


 嬉しい申し出だけど、それじゃあ私の気が済まない。かといって折半すると言ってもクウは受け取らないだろう。だからここは、


「分かった。じゃあ私が三分の二でクウが三分の一、これでどう?」


 私の提案に渋々ながらも二人とも頷いてくれた。こうして私達三人の冒険者としての初任務は幕を下ろした。



◇◇◇



「「 アイラ、おはよう! 」」


「おはよう、二人とも」


 翌日からリクとクウの二人は、宣言通り私の側に居てくれるようになった。これで学校での高位貴族からの虐めや、下位貴族や平民からの嫌がらせから開放される。そう安心していた時だった。


「おい、アイラ! お前、ちょっとこっちに来い!」


 廊下を歩いていた私達へ、そんな風に偉そうな口調で話し掛けて来た人が居る。


 あの人は...

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