第四章:封神の島
第一話:皆の凄さ
翌日。
やや強くなった雨の中、俺達の船は無事、
島の大きさ自体はそこまで広そうにはみえず、中央に
流石に南の島だけあって、気温もそれなりに高い。
四方に見える塔のようにも見える高い柱。
それがなければ普通の南の島っぽいんだけどな。
シャリアの話では、肝心のダンジョンの入り口は島の北側にある。
一度島をぐるりと船で一周した所に、確かにそれっぽい洞窟の入り口が見えたものの。北側の海岸は岩礁だらけで、船で近づくと座礁する危険もあった。
そこで東寄りに少し南下して、安全に上陸できそうな砂浜に小型ボートで上陸したんだ。
§ § § § §
そこから森を抜け、洞窟まで行く道中。
俺達は多くの敵に襲われていた。
森にいたのは、創生術で人為的に生み出された
ジェネルスケルトンにストーンゴーレム。
前衛に負担の掛かる相手の多い中、俺達は円陣を組みその驚異と戦っていた。
……っていうかさ。
ジェネルスケルトンこそそこまでの相手じゃないけど、ストーンゴーレムなんて硬くてパワーのある敵の代表格。
確かにこの場所のやばさってのをはっきり感じる。
……いや。感じるんだけどさ。
やっぱりここにいるメンバー、凄すぎるって。
「いっくぜー!
楽しげに飛び出したミコラが、拳を振りかぶってきたストーンゴーレムの拳に合わせて
「まだまだぁっ!
流れでそのまま懐に踏み込んだ後。急に逆立ちし身を縮こませた瞬間、両腕、身体、脚まで一気に伸ばし、覆いかぶさろうとするストーンゴーレムの腹部を両脚の蹴りで突き破った。
あれ、結構砕くの大変なんだぜ。それをいとも簡単にやってのけるんだから、相変わらず恐ろしいもんだ。
同じく前に出て戦うのはウェリックとアンナ。
ウェリックは、対峙するジェネルスケルトンが持つ長剣を、残像を残しながら避ける。
暗殺術、
疾さと鋭さが問われる、
釣られたジェネルスケルトンが剣を空振ったのを待っていたかのように、背後から額に埋め込まれた宝石を短剣で刺し貫く。
ジェネルスケルトンは
実際に外骨格を象った骨の形に削った岩や鉄を身体に見立てていて、何処かに動くための
正面にある額の宝石を、後頭部からあんなに綺麗に貫くなんて、戦士でも早々できやしない。やっぱりこいつも暗殺者としての実力があるな。
アンナはアンナで、手斧と盾を持ち襲いかかってくる
名前の通り
大体の場合、
それを断つのは術系でもかなり大変なんだけど、彼女は華奢な身体に似合わぬ力技で、肩に巻きつけた鎖を強く引き相手を崩すとするりと
一気に倒れそうになった
これを見事に脚や腕に繰り返し決め、相手を無効化していくんだ。
正直、暗殺術すら駆使せずこんな簡単に動きを止められるセンスは本気でやばい。
この暗殺者
俺やフィリーネなどの後衛を護るべくラインを維持するシャリア、ディルデンさん、ロミナ、そしてルッテの古龍術、
大斧を振りかざした
「ロミナ! 決めな!」
「はい!」
そこに息のあった動きで、落ちてきた
重戦士とはいえ、シャリアの破壊力のありすぎる
合間にロミナとシャリアを狙い飛んでくる、狂いし
「通しませんよ」
皆の盾となるように立ったディルデンさんは、水の弾を事も無げに、魔術、雷属付与を施した長剣でさらりと切り裂き落としつつ、合間に襲い来るジェネルスケルトンを、赤子の手をひねるみたいに骨を綺麗に両断して動けなくしていく。
ルッテの呼び出したフレイムドラゴンも、その腕力に物を言わせ、ゴーレムを突き飛ばしては打ち砕き。時に派手な炎弾のブレスで近寄ろうとする奴らを一気に消し飛ばしていった。
勿論フィリーネやキュリアもこれまた凄い。
『シルフィーネ。私達の仲間、助けて』
そう願ってキュリアが見せた精霊術は、風の精霊王、シルフィーネの力を借りた
相手の飛び道具系の術を止める風の壁は、俺達後衛三人を狙う放物線を描く、上からの
『空にあまねく雷よ! 我が力となれ!』
翼で空に舞ったフィリーネが詠唱した魔術、
いやはや。
もう圧巻っていうかさ。俺の出番ないじゃん。
とはいえ、流石に俺も何もしてないわけじゃない。
フィリーネが開幕ロミナ達パーティーメンバーに掛けた
それと同じように、俺も特定の個人に同様以上の効果を与える
けど、それも杞憂なくらい、結構な大群だった敵を、怪我のひとつもなくあっさり一掃し終えていた。
LランクやSランクがこうも多いと、このレベルですら危機にならないってんだから。ほんと恐れ入るよ。
「ちぇっ。もう終わりかよ。つまんねーなー」
「ミコラ。そんな事言わないの。まだダンジョンにも入っていないんだから」
「そうじゃ。最初から飛ばし過ぎでは後が
「大丈夫だって。俺そんな
「ミコラ。それじゃ、ダメ」
「そうよ。貴方を頼りにしているからこそ、万全を期してもらわないと困るのだから」
ロミナ達がミコラの楽観的な反応に苦言を呈するこの光景。
……ほんと。変わらないなお前らは。
思わずそんな彼女達を見てふっと笑っていると。
「カルド様。何かございましたか?」
やや肩で息をしたアンナが、俺に声を掛けてきた。
「いいえ、特には。それよりアンナさんにお怪我は?」
「ご心配には及びません。お気遣いありがとうございます」
「それなら良かった。とはいえ多少お疲れのようですね。少々そのままでいてください」
俺は彼女のおでこの前に手を翳すと、無詠唱で聖術、気力回復を発動した。
戦いにおいての疲労って勿論体力の場合もあるんだけど。怪我とかがない疲労の場合には、こっちの方が案外効果的だったりするんだ。
実際今は雨の中での戦いは疲弊感が普段より高い。彼女だって辛いはずだ。
「カルド様。お気遣い、大変恐縮にございます」
「お気になさらずに。共に戦う身。これ位は当然ですよ」
アンナの微笑みに何処か気恥ずかしくなるのを誤魔化し、彼女の息が落ち着いた所で術を止めた。
ぱっと見ると、シャリアとディルデンさんは全く疲労感を出してはいないが、ウェリックは少し苦しげ。流石に敵の数が多かったしな。
「まずはシャリアさんの所に参りましょう。ウェリックさんも回復させたいので」
「はい」
こうして俺達はシャリア達に合流すると、ウェリックにも気力回復を掛け、一息
その道中。
俺は、シャリアとディルデンさんの表情が、何処か冴えないものだったのが、妙に気になっていた。
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