第17話 大賢者からのミッション
確かに昨日から俺の足の調子はいい。
オンディーヌとサラマンディルが、ジュジュに魔力を分けてくれているおかげだ。
だからといって、俺がダンジョンに潜る理由にはならない。
魔法革命以前は、俺もヴィリと一緒にダンジョンに潜ったりもした。
だが、今となっては、ダンジョン探索において、魔導師より俺が活躍できるとは思えない。
「ふむ。聞こう」
ヴィリがよくわからないことをいうときは、きちんと理由がある。
俺が、いま、特定のダンジョンに潜る必然性があるのだろう。
ヴィリは大賢者と呼ばれるだけあって、頭がいいのだ。
「昨日から大急ぎでジュジュにかけられた呪いを解く方法を探したんだけどね」
「何かわかったのか? あ、それでダンジョンに解呪のための何かがあるってことか?」
「何かがあるというか、何かがいるというか」
「詳しく教えてくれ」
「うん。オンディーヌから聞いているだろうけど、ジュジュの状態は非常に危うい」
「じゅ?」
ジュジュはゆで卵を食べ終わり、今はリンゴをパクパク食べていた。
「もう、お腹いっぱいか? ……うん桃も食べなさい」
「じゅ~」
ジュジュは桃も美味しそうに食べる。
「元気に見えるんだがなぁ」
「そうみえているだけだ。危ないのは事実だよ。実際今のジュジュの魔力値は三桁程度」
「昨日は三って言われてたけど、オンディーヌとサラマンディルのおかげで三桁まで回復したのか」
「三桁は精霊としては全く足りないよ。瀕死と言っていいぐらい」
「俺は魔法に関して詳しくないんだが、普通の精霊はどのくらいなんだ?」
「数十万かな。数万だと弱い精霊と言われてしまう。数百万ならとても優秀と言われるね」
そういってからヴィリは大人しく座っているリルを見る。
「ちなみにリルさんの契約精霊フェリルは五千万ぐらいあるからね」
「それはすごい」
「はい。私にはもったいない精霊ですわ」
リルはフェリルについて語るとき誇らしげだ。
「……ちなみにだが、ヴィリやオンディーヌはどのくらいの魔力値なんだ?」
「僕は精霊じゃないから、計測は難しいんだ」
「そんなものか」
「精霊は、物理的な存在ではなく魔力的存在だからね。計測に誤差が出にくいんだよ。でも、生物である人間の魔力値を計測するのは大変だから」
「計測しにくいってことは、計測できるんだろう? したくならないのか?」
「したくなるけど、魔力の値が大きいほど計測誤差が大きくなるし、時間もかかるし、とても大変だから」
どうやら、ヴィリ自身は計測したことがないらしい。
「でも、オンディーヌは億を超えていたよ。しかも底は見せてないね。桁が一つ二つ違っても驚かないよ」
「……凄まじいな」
「精霊王だからね」
「そうか……、魔力が少ない方が測りやすいなら、俺の魔力値は測りやすいかもな」
「それが、……いや、そうかもしれないね」
「なんだ?」
「いや、なんでもないよ。気にしないで」
とても気になるが、気にしないでというので気にしないことにした。
「興味本位で聞くんだが、人間はどのくらいの魔力値があるものなんだ?」
「非魔導師は数百の範囲がおおいね。大体今のジュジュと同じくらい。魔導師は千から二千が多いかな。優秀な魔導師でも万には届かないぐらいかな」
「やっぱり精霊は凄いんだなぁ」
そんな精霊たちと契約することで、力を借りることができるようになったのだ。
魔法革命が起こるのも当然だ。
「今、リルさんは八千程度だけど、将来的には万を超えるかも。学院始って以来の天才なんだ」
「き、恐縮ですわ」
リルは顔を真っ赤にして照れていた。
「で、話を戻すよ。ジュジュの魔力三桁っていうのがどれぐらい危険な状態かわかったよね」
「ああ、精霊にとって異常で、非常に危ういのだと理解した」
俺は右手でジュジュに桃を食べさせながら、左手で頭を撫でた。
「じゅじゅ?」
とても元気そうにみえるのに、死にかけているようだ。
可哀想で心が痛む。
「それで急いで情報収集をした結果、呪いを解く方法をみつけたんだよ」
「その方法っていうのがとあるダンジョンに潜ることか?」
「うん。ダンジョンに潜り、その最奥にいる魔物を倒してほしいんだ」
「その魔物を倒せば、呪いは解けるのか?」
「完全に呪いを解くことは難しいかもしれない。でも確実に呪いは弱まると思う。弱まれば生存可能時間も長くなる。その間にまた違う手を打てる」
「なるほど。時間稼ぎになるってことか。充分だ」
それでジュジュが助かる可能性が上がるなら、ダンジョンぐらいいくらでも潜って見せよう。
お安いご用だ。
「その魔物は呪いを受けた者が倒さないと駄目なんだ。だからグレンとジュジュが行く必要がある」
「わかった。だが、倒せるかどうかは置いておいて、俺が倒してもいいのか?」
あくまでも呪いを受けているのはジュジュである。
この小さなジュジュが倒さなければならないとなると、難しいだろう。
「それは大丈夫。オンディーヌの言葉で言うと、グレンとジュジュは相性がいいからね」
オンディーヌはよく相性がいいと言ってくる。
だが、俺は相性がいいという状態がどういう状態なのかわかっていない。
「魔力回路の交叉が……いや、非魔導師にもわかるように説明すると、互いの魔力がつながりやすいってことだよ」
「なるほど」
どうやら、俺とジュジュが一緒に行動したら魔法的には同一の存在に近い状態となるらしかった。
「グレンとジュジュだけでダンジョンに潜ると危ないから、リルさんをサポートに付けたいと思ったんだ」
そういって、ヴィリはリルを見た。
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