第12話 朝ご飯
洗濯を終えると、オンディーヌと一緒に朝ご飯を食べる。
オンディーヌは手料理を持ってきてくれていた。
しかも、ジュジュのご飯だけでなく、俺の分まで作ってくれていた。
「何から何まで悪いな。オンディーヌありがとう」
俺はジュジュにご飯を食べさせながら、自分も食べつつ、お礼を言う。
「じゅむ!」
「うん。気にしないで」
ジュジュもオンディーヌにお礼を言う。
その拍子にご飯がこぼれて服が汚れた。
服が汚れることなど気にしてなどいられない。
「お礼を言えてえらいな」
「じゅぅ~」
ジュジュは自慢げに尻尾を振っている。
「ところで、オンディーヌ。このジュジュのご飯ってどうやって作るんだ?」
オンディーヌの作ってくれたジュジュの朝ご飯は、お粥状の何かだった。
細かく切って茹でてすりつぶしてから冷ました干し肉より、ジュジュの食いつきがいい。
「パンと卵と砂糖を牛乳にいれて煮た。最後にチーズを入れる」
「ほほう。栄養がありそうだな。それにうまそうだ」
人間の大人が食べても美味しそうだ。
人間の赤子が食べるには、少し重そうだが、精霊の子供ならばこのぐらい栄養があった方がいいのだろう。
「グレン。美味しい?」
オンディーヌは俺にも聞いてくる。
俺のためにオンディーヌが作ってくれたのは、パンにハムやチーズ、焼いた卵を挟んだものだ。
同じ物をオンディーヌも食べている。
「とても美味しいぞ。いつも食べている物よりずっとうまい」
「よかった……ふひ」
「それに片手で食べられるようになっているのはとても助かるよ」
右手でジュジュにご飯を食べさせながら、左手で自分のご飯も食べるのだ。
片手で食べられるというのは、非常に助かる。
食事が終わると、オンディーヌはジュジュに魔力を与えてくれる。
ジュジュにオンディーヌの魔力が流れ込むと、俺の足の痛みも改善されていった。
俺とジュジュがお礼を言うと、オンディーヌは照れていた。
「足の怪我には治癒魔法すら効果がなかったというのに、不思議なこともあるものだな」
「魔法は複雑」
「ジュジュの呪いは弱まっているか?」
「うん。昨日よりは状態はいい。でも予断はまだ許さない」
元気にみえるから、つい忘れてしまいそうになるが、まだジュジュは命の危機にあるのだ。
「ジュジュにかけられた呪いについては調べている。解呪の方法もみつかるかも」
「本当か?」
「……期待はしないで。まだなんとも言えない」
「わかった。俺に出来ることはないか?」
「グレンはジュジュと一緒にいてあげて。それはグレンにしかできない」
俺は魔法の素養がなく理論もわからない。
一緒にいることぐらいしかできない。
「あとご飯をあげることと、トイレの後始末も大事」
「わかった。全力を尽くそう」
「うん、そうして」
その後、俺は昨夜のことを相談する。
「ジュジュが下痢をしてしまって、干し肉がまずかったのかな?」
「干し肉自体は悪くない。
「ストレスか。まあ、あれだけのことがあればな」
知らない場所に突然召喚されて、知らない人間たちに虐められたのだ。
想像したら、大人の俺でもお腹ぐらい壊しそうだ。
子供、いや赤ん坊に近いジュジュがストレスでお腹を壊しても当然と言えるだろう。
「グレンが可愛がっているから、今夜は大丈夫だと思う」
「じゅ!」
お腹いっぱいになったジュジュもご機嫌に尻尾を揺らし、俺の身体をよじ登ろうとしている。
「ジュジュがお腹空いたといえば、適当に果物をあげればいい」
「卵は茹でた方がいいか?」
「生でもいい。それとこれ。抱っこひも」
「おお、これは便利そうだな」
手を使わずに抱っこできると、いろいろな作業がやりやすくなる。
それを確認すると、オンディーヌは帰ることになった。
「ありがとうな。オンディーヌ」
「うん。またすぐ来る」
「昨夜も食料持ってきてくれてありがとう」
「うん。気づいたみたいで良かった」
「ああ、そうだ。必要ないかも知れないが合鍵を渡しておこう」
元々この小屋の持ち主は学院である。
オンディーヌは持っているのかも知れない。
「え? いいの?」
「いいぞ。いつでも勝手に入ってくれ」
「わかった。……ふへ」
ニヤニヤしながら、オンディーヌは帰って行った。
それから俺はジュジュにトイレの場所を教える。
「ジュジュ。今度からトイレをしたくなったら、なるべくここでするんだよ」
「じゅ~」
「言ってくれたら、連れて行くからね」
「じゅ!」
よく考えたら、人族のトイレの仕方すら教えていなかった。
まだ赤子なのだ。漏らしても仕方ないことである。
そして、俺はジュジュを抱っこして外出することにした。
ヴィリが生活を援助してくれている。
金のために働く必要はしばらくない。
いままでやっていた学院の雑用に関してはオンディーヌがよろしくしてくれているはずだ。
だが、よく俺に仕事を依頼してくれる町の住民にも挨拶しておくべきだろう。
ジュジュの世話があるので、これまでのように仕事を引き受けられなくなるからだ。
俺は昨日も頼んでくれた老婆のところに向かう。
老婆は、地域の顔役でもあるのだ。
俺の雑用仕事も、老婆がとりまとめてくれていた。
だから、老婆に挨拶しておけば、みなに事情は伝わるだろう。
そして、俺はジュジュを連れて、人が沢山住んでいる学院の外へと出たのだった。
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