第13話

「……スカウト?」


 言われた言葉が脳裏に浮かぶ。

 一瞬何を言われたのだろうと思いつかなかったが…


「そうです、あなた達をスカウトしにきました!」


 ……スカウトだって?


 いやありえないだろう。今まで誰からもモテていなかった男がいきなりスカウトなど考えられない。

 まだ花恋がスカウトならわかるが…いや花恋なら毎度のことのようにスカウトされそうだが。

 やはり俺の聞き間違いか?


「それ俺じゃないですよね…?」


 黒服姿の男性が少し困惑した様子で口元を開いた。


「いや君たちであっていますよ! 遠くから見た時から話しかけるべきだって思ったんだよね」

「マネージャーか、何かのスカウト?」

「そんな訳ないよ! モデルの!」


 ……だめだ。俺には理解ができない。なぜ俺まではいっているんだ??


 ……花恋の隣に歩いているため相対的にイケメンに見えたとかそういう所か?

 いや違う。そんな訳ない。2回も確認したんだ。

 いやまずは冷静に──


「大丈夫ですか?」

「はっ大丈夫です!」


 言葉を話しかけられ、意識が戻る。

 それと同時に花恋が話しかけた。


「えっと、どこの事務所のですか?」

「あっ、そうだったね」


 黒服の男性がポケットに手を入れ、名刺を取り出す。そして両手で名刺を持ち二人に渡した。


 これは見たことある気が……。


「君たちならやっていける素質があると思っているんだ。どうかな?」


 これの答えは自分の中では決まっていた。

 その答えは、もちろん無理。

 何回も思うが何が理由で俺までスカウトしているのかわからない。花恋がやると言うのはありだと思うが何故俺までと考えてしまう。


「俺は別にやりたいと思っていないので……」

「私もあまり……」


 そういうと男性も空気感を察したのか──


「……そうですか。わかりました。いつでも気にかかれば電話していただけると嬉しいです」

「わかりました」


 そう言うと黒服の男性から視点をかえ歩き出した。  


 ふぅぅ。

 ようやく謎のスカウトが終わった。

 しかもそこそこ有名事務所に声をかけられるという……。


「いやぁ驚いたね。まさかスカウトだなんて」

「ほんとに。でも花恋ならモデルあってる気がするけどね」

「私的には零くんのほうがあってる気がするよ」


 ……お世辞だろう。


「俺は違うと思うけど……まぁデザート食べに行かなきゃ」


 







 












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る