食べて 起きて でもスッピン
時間までラウンジでぼんやりしながら、食事をつまんでいた。
少しのびた、元気のないソーメンがガラスボウルに入っている。薬味のミョウガをたくさん、つゆの中にいれた。最初は少しずつ啜っていたけど、次第にどんどん食べれるようになった。
十時になったところで、二階から園山先生が降りて来た。欠伸をしている。私はソーメンを啜るのを止めた。
「調子は?」
「ばっちりです」
「うたた寝しちゃったよ。僕もそれ頂こうかな」
「どうぞ、どうぞ。今用意しますよ」
「え? 悪いなあ、でもありがとう」
自分が作った物でも無いのに、はりきる私、浪川絵美。つゆ、薄めるだけですけどね。園山先生は黙って食べていた。しばらくして、口を開く。
「広瀬くんは、まだ起きないよ」
「え? 大丈夫なんですか?」
「うん。寝息を立ててるだけ。つまり熟睡してる。さっき様子見に行ったら、寝返りうってたよ。起こすのもなんだか可哀想だと思ったけど、今からメインが始まるだろ? だから声は掛けてみたけど、起きなかった。疲れてるのかな。うん」
テーブルに肘をつきながら。手の甲に顎を乗せて、考えるポーズをしている。あぁ、様になる。そして、今気付いたよ。自分がスッピンだってことに。あぁ鬱になる。
「これ、食べたら行こうか。おいしいね」
げんなりしている私もよそに、園山先生が言った。好きな人の目の前でスッピン。女の子として、ありえないわ。浪川絵美、不覚であります。だからと言って今から化粧をするわけにもいかない。うまくいかないなぁ、もう。
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