イマドキ 一息 サワヤカくん
七月の中旬には、私が履修している講義の試験は終っていた。前年までに、かなり単位を取っていたから、お茶の子さいさい。
その日の夕方帰り際に、駅の改札を通った所で名前を呼ばれた。ナミカワ〜! と元気がいい声だったからすぐ判った。その場にいた、浪川以外の人間も振り返った。ニッシーだった。改札にタッチした彼は私のとこまで駆け足でやってきた。
「ま、別に用事があったわけじゃないんだけど」
「え? 用事ないの?」
そのままホームまで階段を降りた。涼しくて強い風が髪を撫でる。暑さのせいで少し汗をかいてたから、気持いい。
「うん。ちょうど今テスト全部終ったからさ。浪川は? 終わり?」
「私も今日で終ったとこ。あとは合宿楽しむだけだよう」
「俺もそうだよー。でも以外と参加者少ないよな」
「確かに」
確かに。工学部の参加者は教授含めて全員で十一人。合宿に便乗する私達、宇宙研究部は園山教授合わせても九人。あわせて二十人という、小規模な合宿になった。チューケンも、もっと人数いるはずなんだけどな。たぶんほとんどの学生が、夏休みは家族や友達と旅行に行ったり、田舎に行ったりするのだと思う。
ニッシーと電車の中で話しながら、札幌駅で別れた。手を振って私だけ降りる。同じ車両に乗っていた女子高生がニッシーを見た。実はかなり顔がいいのだ。西島くんは。爽やかでイマドキって感じ。よく仲良くなれたなあ、とか思っちゃう。
地上に出ると、日射しにやられた。合宿に向かった先で熱中症にならないようにしなければ。
広瀬くんが住んでいるホテルの前を通過した。最近見かけていないけど、生きてるのかな。と思った。まだ、ここに住んでいるのかもわからないけれど。
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