七月 テスト さぁ準備

 七月になった。


 ゼミの発表も終わり、ひとつ緊張から解放されていた私である。

 園山先生に話してあった合宿企画も無事通り。沢崎教授と園山先生が、年齢差の割に仲がよかったおかげである。もちろん、園山先生も参加すんのよ、合宿に!


 そして札幌にもようやく夏が来たって感じ。あっという間に終わって、まるで初めから夏なんてなかったような北海道の夏が、やってきた。


 恋に燃える夏ってコトで、千尋はたびたび広瀬くんに話しかけたりしていたのだが、暖簾に腕押し状態だったみたい。最初は拗ねてた千尋だけど、自分で納得さてたのか、今じゃ、ともだち、と言い張っている。そっちの方がスゴイかも、と思う。


 大学内はテストシーズンに入っていた。ほとんどの学生が、互いにノートを貸しあい、コピーの置いてある生協は連日混み合った。


 私はいつものようにサークル室にこもって、ペンを走らせていた。よく、教科書を読んだだけで頭にはいるって人もいるけど(広瀬くんだ)、私にはそれは無理らしい。ちくしょう、と毎度思う。全部一度書き出さないと覚えられない。


 一箇所だけ、どうしても理解出来ないところを、広瀬くんに教えてもらった。共通学科で二人とも履修してるのが、倫理学なのよ。ほんと、こんなもん選択しなきゃよかった。広瀬くんは、普段あまり講義に顔を出さないくせに教えるのはとても上手だった。初めて心からお礼を言ったと思う。


 窓のむこうでは、セミが鳴いている。締め切っているのにやかましかった。今は、私と千尋、ニッシーと広瀬くんがサークル室にいる。冷房を効かせているので快適。   

図書室より、ずっと居心地が良かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る