ホテル テスト 合宿
広瀬くんとはロッカーで会った。これが最初。しかもこのとき、顔に痣まであったし、靴を履いていなかった。
姉さん、事件です。の台詞が私の頭をよぎったのだ。
変な出会い方をしてしまった挙句、その日なりゆきで彼にプリントを借りることになったんだよね。翌日がテストだったわけ。偶然互いに同じ講義受けてるやつがあったから。
それで私は札幌駅経由で来てるし広瀬くんも駅近くに住んでるっていうから、そこまで行ったよね。この時、彼、裸足よ。そしたら着いた場所がホテルだったのよ。ラブホじゃないよ。ふつーの、ホテル。ビジネスホテルでもない、一種のシティホテルだったからもうびっくり。
ヤツが部屋から戻って来るまで、エントランスのソファーに座ってたけど、そりゃもう。落ち着かなかった! 同年代がこんなホテルに住んでるとか信じられないし。
ほんと、漫画みたいでした。
ホテルフロントのにこやかな視線が痒かった。
広瀬くんって人は。
そんなだから、着てるものとか、ブランド品固めかと思うかもしれないけど、一つも持ってないそうで。サークルに来るたび、千尋が質問しまくるの(完璧に千尋のストライクゾーンなのよね)。それに対しても、なんだか落ち着いた感じで答えていくから、年齢ごまかしてるんじゃないの? って聞いたら、学生証見せてくれた。こんなヤツが年一緒って、信じられないなぁ。
それに、めちゃくちゃ浮いてるヤツかと思いきや、そんなこともなく。サークルメンバーで同学年のニッシー(西島一樹)とは特に仲良くなっていたし、リーダのケンキチさんともよく話をしていた。
『探しても見つからない事務員泣かせ』の異名は文学部ではわりと有名だったみたいだけど、私が思っている以上に、普通のやつみたいだった。
でもさ、最初がロッカーでの対面だよ? 刺激強すぎだよね。私が気にしすぎなのかなー。
そんな広瀬くんが、ある日突然、サークル内でつぶやいたのが、合宿とかないんですか? の十文字だった。文字数、数えちゃったよ、今。
これには、リーダのケンキチさんが、一番驚いていた。四年在籍してるくせに、一度も宇宙研究部っぽいことしたことないんだから当然っちゃ当然だけど。こないだ天体のスライド写真を見てから、よく広瀬くんとか、工学部で宇宙科学教えてる沢崎教授と話してるみたい。
ちなみに内定は、まだみたい。
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