暗幕 星座 訪問
「そうそう。おれがチューケンに入りたての頃の四年がさ、結構頻繁に見せてくれたんだよね。天体写真。常に暗幕しまってるから、黒魔術サークルとか言われてさ」
ケンキチさんが言った。電気を消すと、一時的に暗くなったけど、彼は携帯の明かりを頼りに椅子を引いた。プロジェクタの電源をいれると、ぼんやりと四角い枠がシーツに浮かび上がった。しばらくすると、最初の天体が姿を見せた。木星だった。
そのまま写真を見続けた。有名な星座。星雲に、太陽を電波やエックス線など、さまざまな光で撮影したもの。過去の授業で使っていたと思われる光のスペクトル解説図面。教科書の写真で見るよりはるかに大迫力で、プラネタリウムにいるみたいだな、って思った。
こーいう星空を園山先生みたいな、ステキな人と見れたら、わたくし浪川絵美、感無量でございます。なんて思ったり。ケンキチさんは、微妙な秒数を保って、写真を切り替えてくれた。スライドが、天の川の写真に切り替わったとき、突然ドアがノックされたから、わたし達は心底驚いた。千尋は小さな悲鳴を喉元で上げたし、ケンキチさんは、リモコンを落下させた。
「だれかな?」
「ケンキチさん、私、黒魔術はやってません、って言ってきます?」
私が冗談まじりにそう言って席を立つと、ゆっくりドアが開いた。悲鳴と物音が聞こえたから、相手が不安になったのかもしれない。
ドアの隙間から、鋭利なヒカリが入り込んで、プロジェクタの映像をぼやけさせた。私がドアまで向かう前に、ノックした人間がチラリと顔を覗かせた。私と目があうと、そいつはニコリと微笑んだけど、私は一瞬、硬直した。
「絵美の友達?」
千尋がてくてく私の隣にやってくる。すぐに、あー!っと声をあげて、口元を両手で覆った。まるで芸能人を目撃者したような反応で、わかりやすいなぁ、もう。
目の前にいるのは変人ですけどねえ。ケンキチさんが、どしたい? と言いながら電気をつけた。
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