第3話 これスパチャ貰わないとレベル上げ無理じゃね?
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ウマミ・ダイズ
人間族
レベル1
次のレベルまで後1000000
力 G
貴方の筋力の数字だよ。Gは大体子供レベルの筋力だね!
防御力も子供レベルだから戦闘になったらパンチで死ぬかも?
速 F
貴方の素早さの数字だよ。Fは大体成人男性くらいの速さだね!
これなら奴隷商人に追いかけられても逃げられるかも?
魔 F
貴方の魔力の数字だよ。Fは大体成人男性くらいの魔力量だね!
これなら魔法を覚えれば、3発くらいなら使えるんじゃない?
運 G
貴方の運の数字だよ。Gは大体虫レベルの運だね。
この数字だと頻繁に変なイベントに遭遇するから、命を大事に!
スキル:異世界語マスター
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「ひっでぇステータスだな……っていうか次のレベルまでの経験値が100万ってどういうことだよ! あとこの注釈がすげぇ腹立つ」
っていうかだ。
すげぇいやな予感がする。
俺の放送に来る視聴者の数字は大体50人前後だ。
1時間放送して60ポイント。
50人見てくれて50ポイント。
通算110ポイントって事になる。
つまり、1時間で俺が得られる経験値は110って事だ。
仮に、24時間ずっと放送したとして、2640ポイント。
だがそんな事は不可能だ。
絶対に睡眠時間は必要になってくる。
では、より現実的に考えて12時間配信したと考える。
すると、1320ポイント。
100万で割ると、約757日。
つまり約2年間。
「――無理だ。普通に配信してたらレベル1上げるだけで2年掛かる計算になるぞ」
いや、異世界での配信なんだ。
SNSに投稿できないから宣伝できないが、それでも俺が配信を始めれば50人くらいの視聴者が着てくれえる。
そこでこの放送を拡散してもらうんだ。
上手くすれば、バズって来場者数が跳ね上がる可能性だってあるはず!
大体1万人来てくれれば、12時間配信して120720ポイントくらいだ。
それなら10日前後でレベルが上がるはず。
「くそ、なんとしてもバズらせて人を集めるしかねぇ」
それに露骨にスパチャを強請るのは駄目だ。
男のVtuberにしかもスパチャを要求するような野郎にお金を投げるような奴はいないんだ。
だから、あくまで明るく。悲壮感が出ないような配信にしよう。
土下座して、スパチャを頼むにしても、100万円はまず無理だからな。
「よし、やるか」
既に何度も放送はしている。
でも今日、今からやる放送こそ、このウマミ・ダイズに取って初めての配信になるだろう。
そのための計画を練る必要がある。
この街に何があるのか分からない。
お約束みたいな冒険者ギルドはあるのだろうか。
お金を得る手段はやはり単純に労働か?
情報が不足している。出来れば、スパチャを貰えても不用意に使いたくないが、このままだと、配信できる事が少なすぎるというのが問題だ。
最初はこの今居る町を紹介するだけでもそれなりに視聴者数は稼げると思う。
でも、ずっとそれだけでは飽きが来るはずだ。
だから、まずはレベルアップポーションの入手。
それを最優先にした方がいいかもしれない。
「やるか」
大きく深呼吸をする。
膝に乗せている手が僅かに震えている。
そうだ、俺は今かなりビビッてる。
本当にこのまま配信していいのか? そもそも本当に配信できるのか?
考えれば考えるほど、袋小路になっていく。
でも、だ。
「――やらなきゃ何も進まない」
もう一度深呼吸をする。
少しかび臭い部屋だが、今はここが自分を守ってくれる唯一の場所なんだ。
目を開き、心を決めた。
「”ライブスタート”」
すると、目の前にハンドボールくらいの淡く光る球体が発生した。
おそらくこれがカメラなんだろうと思う。
すると、この球体に数字が表示されはじめた。
恐らく、視聴者数かな。
「ああそっか、コメント見えないんだよね。”コメントオン”」
:急にウマミの配信始まっててびっくりした。
:こんちわー
:え? 何配信?
:てか、実写? ダイズのコスプレしてんの?
:放送事故だろこれww
「あ、あ。聞こえますか? こんにちわ! ウマミダイズです!
急に配信してごめんね! 実はちょっと面倒なことに巻き込まれててさ~」
そういいながら振るえる手で、肩を竦めるようなリアクションをする。
球体には現在32と書かれていた。
:え? ついにVやめて、普通のYooTuberになったん?
:思ったよりイケメンでむかつくわ
:てか、そこどこ? スタジオ?
「ははは、俺はまだVtuberだよ! まぁ今実写だけどね。――あのさ、昨日のライブ見てくれた人いるかな?」
:いや、みてねぇな
:見たよー
:みた
:みたかな
:みたみた
:確か3000人の記念配信だろ?
「うんうん、ありがとう! その時は100人くらい同接が合ってすごく嬉しかったよ。でさ、その時に神様って人からスパチャもらったの覚えてる人いるかな」
:あぁあったな。
:なにそれww
:なんか面白いアクションゲーム紹介するとか言ってたやつ?
「そう! それ! あの後DM来てさ、それで気付いたらへんな場所に居て、気付いたらこの部屋に居たんだよ! おかしくない!?」
:お前の頭の方がおかしいんじゃないか?笑
:奇をてらわないで、普通にゲーム配信とかでいいのよ?
:随分セットも凝ってるけど、お金どのくらい掛かったの?
「みんな酷いよ! ちょっとマジで異世界らしいんだって! アドバス頂戴よ!」
そういいながら俺はやや大げさにリアクションを取り続けた。
:いや、コスプレとスタジオのセットだけ見せられても……ねぇ?
:異世界転生かよ! やったな! どんなチートもらったん?
:それならどうやって異世界から配信してんだよwカメラとか持ち込めたのかw
:最近そういうアニメも多いから、ワンチャン企業案件か?
「案件でも、自演でもないんだよ!」
:なら証拠とかないの?
:ほれ、魔法使ってみろ
:魔法いいね、みたいみたい
「いや、魔法は使えないんだ。レベル上がれば使えるらしいんだけどさ」
:出たレベルwww
:ほんと最近の異世界物ってさ、ゲームじゃないのにレベルとかステータスとかまじ笑うよな
:その設定はどうかと思うよ? 小説とかで多いけど、僕は苦手なんだよね
よし思ったとおり、この流れまで尺を稼げた。
現在の視聴者数は41。
SNSで告知もせず、配信予告をしていない割りには集まった方だ。
「じゃあ、証拠見せるからちょっとお願いしてもいい? 実はここだとSNS使えなくてさ、この放送拡散させて欲しいんだよね!」
:いいよ、証拠楽しみw
:どんなの来るか予想しようぜ。俺はゴブリン登場と見た
:この#ガイアで呟けばいいの?
:次のネタでウマミの腕が問われるな
:言うてもウマミだから、きっとポンするぜ?
:配信できるのにツブッターは使えないとか設定ガバガバだろww
「よし! 頼んだよ! 今見せられる証拠は二つあるんだ、まずこれ、”ステータス”!」
必要もないのに、腕を大きく振り、手を前にかざす。
すると、先ほどと同じように、半透明のシステム画面のようなものが表示された。
:出た! ステータスオープン!
:いや、まてまて、これ合成?
:ライブだよな? 随分凝った演出だなー
:ステータスwww 300円
:どうやってカメラの挙動に合わせて表示してんだろ? 何気にこのカメラ動いてるよな?
「スパチャありがとう! すごいでしょ? ちなみにステータスは日本語ですね」
:異世界なのに日本語とか
:ステータス見せてよ
:これ実はVRとか? すげぇ技術だな
:カメラ動かせないの?
「カメラか。ちょっと待ってて、試してみるよ」
そういって、ためしにこの球体を触ってみる。
冷たいガラスみたいな感触だ。それを恐る恐る掴んでみた。
すると、問題なくつかめることが分かる。
球体を掴み自分の後ろへ持っていく。
そのままゆっくりと手を離すとまた問題なく浮いた。
:酔う酔う酔う
:え? 裏もちゃんとセットあるんだね
:いや、何気にすごいぞこれ。
:てかステータスひっくいなw
:でもこれマジでどうやってんだ? ちゃんとあのステータス画面の裏に回りこんだぞ?
:VRなんじゃないの?
:どうみても実写だろ!? こんなVRあったらもっとニュースになってるって
:それより、次のレベルまでの経験値が後100万なのが笑うんだが。
:どんな鬼畜ゲーだよww
:いや、それよりってこの謎技術の方がもっと気になるんだが
いいぞ。思ったとおり、議論してくれている。
自分で何かを説明するよりも、適度に情報を与えて考察して貰った方うが盛り上がるってもんだ。
このまま畳み込むか。
「よし! コメントが白熱しているけど、次の証拠いくよ! ちなみにこっちが本命だね」
:いや、マジでこのステータスどうやってんだ?
:色々気になるな。
:とりあえず、スクショとって呟いてあげたよ
:そうだな。とりあえず、拡散しとくか? 今の所なんか面白いしww
:次の証拠ってなんだろ。結構クオリティ高いから期待
「これカメラの角度変えられるかな? 俺が窓際に行けばいいか。見える? 外の風景だよ」
:……は? いやマジでは?
:え? 日本じゃない?
:やっぱVRだろ、ぜってぇ日本じゃないし。
:もっと近づけられないの??
:ここからだと見える範囲限られるけど、マジですごいな
:やっぱ企業案件だろ
:登録者三千人の個人勢にこんな大規模な案件こないだろ
「さて、じゃあ改めて今の現状話すからさ、改めて……」
俺はまたベッドに腰掛けて、カメラに向かって話しかける。
「拡散たのむ! マジで今困ってるから多くの人にこの放送に来て欲しいんだ!!」
俺は両手を太ももに乗せ、頭を下げて視聴者のみんなにお願いをした。
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