第12話

俺はアンドレラに敗北した。でも次は勝てそうな気がする。いい手を思いついた。

次は引き続き魔術格闘訓練だ。次回と言わず、アンドレラにリベンジできるかも知れない。

ただ、アンドレラとサラだけは戦わせてはならない。サラは彼女の事が相当嫌いなようだ。俺は好きだが。いい先輩じゃないか。何故だろうか。さっぱりわからない。


「あーこれから魔術格闘訓練を行う。組み合わせは自由だ。勝てそうな相手を探すのも訓練のうちだ」


「アンドレラさん俺と戦って下さい!」


「何? 凄い勢いで来たわね。走るのでは負けたけど戦闘では負けないって事かな? いいよ。挑戦的なその姿勢嫌いじゃない。しかし、照れるな。そんなに私の体が欲しいか」


「よかった! 体? うんと、体って何に使うんですか? あ、わかった! 格闘訓練ですね。でも、今からするのにまたプライベートで格闘訓練するんですか?」


「ああ、もうあなたって人は何も知らないのね。もういいわ。夜の格闘訓練よ。プロレスみたいなもの。お互いに技を掛け合ってハッスルするのよ。全力でね。お互いの我慢比べでもある。先にイカせたら勝ちよ」


「それは凄そうですね。夜のプロレスか。とりあえず、相手の意識を飛ばすんですね。チョークスリーパーとかで」


「ちょっと違うけどまあ、いいわ。私に勝てたら今夜教えてあげる」


「アールートくーん。あなたは一体何をしているのかな? その女と私を戦わせなさい。燃やすから。骨も残さず一瞬消し炭よ」


「あなたの魔法が私に当たったらね。でも、背後に回って締め落とすわ。チョークスリーパーです」


「やれるもんならやってみてよ! 地獄の業火よ淫乱なメスを焼き尽くせ! 燃え尽きろ!」


「サラやめるんだ!」


俺が叫んだ時にはもう遅かった。凄まじい火炎地獄が前方10メートルを激しく燃やしていた。逃げ場はない。


「うふふ。だから言ったじゃない。首がお留守よ。頸動脈をキュッと絞めるとね、とっても気持ちいいのよ」


「いつの間に背後に……なんて力腕を全く引き剥がせない。意識が……うああ……あぁ!」


「ほら落ちた。意識喪失ね。あらあら、そんなに濡らして。相当気持ち良かったのね」


サラは目を開いたまま失神した。太ももから液体が伝っている。確かに濡れている。失禁にしては量が少なく。

俺はサラの瞳を閉じるついでにその液体を触ってみた。ヌルヌルしていて、面白い感じだった。やはり失禁とは違うようだ。

幼い頃、父と母がたまに使っていたローションと似た感じだった。ローションで体の滑りをよくして床を滑ったら楽しかった。父さんと母さんにめっちゃ怒られたけど。


「アンドレラさん。次は俺とです。サラの仇討ちみたいな流れになってしまいましたね」


「来なさい。私の速さについて行けるかしら?」


「いざ勝負!」


俺は開幕直後に重力魔法を使おうとしたが、アンドレラの姿が見えない。空気の動きから相手の位置を予測する。


「右だ!」


俺は右から飛んでくる何かを掴んだ。それはアンドレラの足だった。回し蹴りの体勢で大股開き。スカートは隠す役に立たず、パンツが丸見えだ。何だろう。股間が熱く固くなってきた。

まあ、まぐれみたいなもんだが、上出来だ。俺は足を掴んだ腕に重力を送り込む。


「掴みましたよ。これでこちらのものだ」


「く! 足が重くなった!? あなたは重力魔法の使い手なの? 私の天敵じゃない! 10年に1人しか現れないのよ。しかも地球人の

血が入っていないと使えない」


俺は重力を流しながら、アンドレラの問に答えた。彼女の驚く顔は素敵だった。妙な興奮を覚えた。


「それは俺の母の影響かな。父は母の素性を秘密にしていたけれど、名前は隠せない。アカツキカエデ。地球の日本人の名前なんです」


「道理でね。重力魔法は素晴らしいわね。今度一緒に筋力トレーニングしましょう。足腰を鍛えるのに最適」


「敵に塩を送れと?」


「お願い。ねえ、私達付き合わない? 」


「男性と結婚しないのでは?」


「結婚と恋愛は別よ」


「結局結婚出来ないなら無駄な時間じゃないですか」


「無駄じゃないわよ。恋人同士の熱い夜を味わったらそれがわかるよ」


「あー何をナンパしとるんだ。さっさと戦え。失格にすんぞー」


「はい先生!」


「仕方ないわね。試合再開!」


俺の重力魔法は両足と腰の辺りまで送り込んだ。体に触れて直に送り込んだので、威力が高い。普通は身動きすら出来ないだろう。

だが、アンドレラは違った。重力魔法が効いていないように普通に動く。

だが、あくまでも普通だった。普通の速度の踏み込みなら、どんなに早いパンチを打ってきても余裕で回避できる。それに当たったとしても、腰が入っていない手打ちのパンチなど効かない。相手を気絶させる威力は絶対に出せない。


「私の疾風のジャブを全て避けるとは大した反射神経じゃない。腕に重力魔法を掛けなくていいのかしら? 私の最高の攻撃の蹴りを封じても、このまま避け続けても私には勝てないわよ」


「ふふ。こんな凄く早いパンチを避けるのは楽しくて。滅多に出来ないトレーニングです。どんどん打ってきて下さい」


「私を使ってトレーニングですって!? 甘く見るな!」


「さっき、体を使わせてくれるって言ってたじゃないですか!」


「私はトレーニングマシーンじゃないわよ!」


「そんな! 何でだー! 怒らないで下さい。許して下さい」


「真面目に戦え! そうすれば許してあげるわよ!」


「了解です! アンドレラ先輩!」


俺は疾風のようなパンチの嵐を回避して、アンドレラの懐に入り込む。漫画で見た強烈なレバーブロウを打ち込んだ。彼女の体がくの字に曲がる。そこにアッパーを打ち込んだ。彼女の体がクルクルときりもみしながら天を舞う。そして地面に落ちた。

重力で地面に押しつけられている状態で下からの打ち上げ攻撃。そのダメージは計り知れない。顎が砕けたかも知れない。

いや、この手には骨が砕ける嫌な感覚があった。戦いはやはり嫌いだ。相手を傷つけずに勝てる方法を探さなくては。

特にかなり好きなアンドレラ先輩を傷つけてしまった。俺の拳はブルブルと震え、その罪悪感から涙が流れ頬を伝う。


「カレンちゃんお願いだ。アンドレラ先輩の顎の時間を戻してくれ!」


「アルトくんがそう言うなら。私はあなたの下僕。下のお世話も大歓迎。サラちゃんが寝てる今がアピールチャンス!」


「下僕って俺達は対等の関係じゃないか。下のお世話? お尻くらい自分で拭けるよ。それに例え両手を骨折して怪我してもカレンちゃんが治してくれるから大丈夫だよ」


「そうじゃなくってね、オナニーのお手伝いをしたり、口でご奉仕したり。胸で挟んだり」


「オナニー前に聞いたな。筋肉トレーニングの1種でしょ? 口でご奉仕。毎日頑張ってるから褒めてくれるのか。確かに俺とサラは毎日頑張って修行してるから褒められると嬉しい。胸で挟むだけがわからないな。ペンでも挟むのかい? 女の子は便利だな。ポケットの代わりになる」


「あのね、一生懸命考えるのはいい事だけど、全部見事に不正解なのアルトちゃん」


何だろう。サラもカレンもアンドレラも時々意味がわからない。でも、何かを掴めそうな気がしている。正解に近づいている気がするぞ。


「ありがとうカレンちゃん。アンドレラさんの顎は元通りになったよ」


「いえいえ。どう致しまして。ご主人様」


「なんなんだい? そのご主人様って」


「最近地味だからメイドキャラを目指そうと思って」


「メイドってなに? 何か作るの?」


「そうじゃなくって、ご主人様に色々ご奉仕するのが仕事なの」


「俺の世話はいらないよ。カレンちゃんの時間はカレンちゃんの為に使ってよ」


「なら、もう時間を戻すのやってあげないもん!」


「が! それは困る! ご奉仕最高! これからも宜しくお願い致します」


「ん、分かればよろしい。私のご主人様」


「ははーカレン様ー!」


俺はカレンに平伏した。そうするとカレンは笑った。


「あはは。ご主人様が下僕に平伏したらダメじゃない。でも少し嬉しかったの」


「おいおい時魔法使いがアルトって奴の下僕だってよ。そして更にあの疾風不敗のアンドレラにも勝ってしまった。もしかして、アルトって凄い奴じゃ!? オマケに天才のサラと幼なじみで恋人なんだろ? 鬼に金棒じゃないか!」


他の生徒達がガヤガヤしていると、王族のダリウスが人混みの奥から現れた。


「ようやくわかったのかい。そうアルトくんは特別なのさ。僕は彼が勇者だと思っている。嫉妬で彼に変な事をするんじゃないよ?

僕も黙っていないし、サラちゃんを怒らせるだけだ。死にたくないだろう? 」


「はい! これからは重力魔法をバカにしません! でも、最強とは思えないんですが。攻撃方法がない」


「それは誤解だよ。最強の攻撃魔法が重力魔法だ。究極まで成熟させてその力を操る事が出来れば100京もの重力を生み出せる。この力を駆使して対象だけに使って瞬時に消せれば最強の攻撃手段だ。だがね、制御出来なければ、地中に潜り惑星の自転と共にグルグルと回り、この惑星を内部から食らいつくし、この星は消滅する。わかるかい? 重力魔法が不完全でも世界を滅ぼせるのだよ」


「さすがダリウス様! 重力魔法はそんなに凄いのですね。でも、危険ですね。彼の見方が変わりました。世界を滅ぼす前に今から殺すべきでは?」


「だから先程言ったでしょう。彼には手を出すなと。それに、その究極の攻撃魔法が無くても彼は強いし、世界を破滅させる事はないでしょう。魔王の味方にでもならない限り。魔王には別の惑星がある。宇宙空間でも影響されないシールドもあると聞きます。仮に魔王の手先になるなら私が彼を殺します」


何だろう。ダリウスが盛大にプラグを立てまくった気がする。魔王は女性だ。しかも、8歳の時に会った事がある。不思議な人で仲良くなって、固くなった物を彼女の中に入れて彼女が大きな胸を揺らしながら激しく上下運動した事があった。凄く気持ちよくて天にも登る気持ちだった。

それから魔王には会っていないが、元気だろうか。彼女の事を思い出すと股間が何故か熱く固くなった。なんなんだろう。この現象は。時間が経過すると落ち着いて小さくなるので放置しているが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る