第9話
俺達3人が編入されるクラスは全員一緒だった。1年生。Sランクとかで分けられていた場合は。大変だった。バラバラになってしまう可能性があった。
「あー諸君転入生を紹介する。くれぐれもイジメないように。この3人はまだクソガキだが、魔力量は全員60万以上。そこの黒髪に至っては180万だ。返り討ちに合いたくなきゃやめときな。前の転入生のように過酷なイジメをして追い出すなんて真似は絶対するなよ。以上!」
教師が去っていくと生徒達が次々に口を開いた。
「ふん。魔力量が多くたってマラソンが得意なだけだろ。瞬間魔力量の方が重要だろ。俺の瞬間魔力量は10万だぞ」
「それって60万以下じゃない。あんたバカ?」
サラが黙ってられずに口を返した。瞬間魔力量10万の生徒は怒った。
「ふざけるな! マラソン選手が。お前の瞬間魔力量等、2万がいい所だろうが!」
「何を根拠に言ってるの。毎日魔力が空になるまで魔法を使い続けている私を何だと思ってるのよ。相当な魔力を消費しないと朝まででも全て使い切れない。それを私はたったの1時間で使い切る。この意味がわかるかしら?」
サラは世間知らずの子供を諭すように長く丁寧に説明をした。
「1時間で魔力を使い切るだと!? ザコめが! 俺様は2時間は持つぜ! 魔力量は10万だぞ。参ったか!」
「やっぱりあんた馬鹿でしょ。私の最大魔力量はね、通常時の物。寝てる時も60万。本気を出したら更に上がるに決まってるじゃない。何でわざわざ自分の実力を晒さなくちゃいけないのよ」
「あー、ビビってるんだな。そんなに怖いか。俺様に負けるのが」
流石にサラも頭に来たのかこめかみの辺りに緑の太い血管が浮き出ている。ヤバいキレるぞ。
「仕方ないわね。雑魚にもわかるように全力を見せてあげるわ」
サラは全力で魔力を解放した。学校中が激しく揺れて、机が右へ左へと激しく移動し、生徒達も大混乱だ。
「何だこの強大過ぎる魔力は!? 触れただけで消されそうだ。いや、魔法を使われたら消させる。オメガ! 奴の瞬間魔力量は!?」
「1280万だ。魔力量の合計は基本的に2倍だから推定2560万」
「オメガさんとやら、中々の推測だけど、私魔力量の合計はその10倍はあるわね。何故なら、この瞬間魔力量を使った魔法を毎日1時間撃ち続けているのだから」
「この魔力量の魔法を1時間だと!? お前は天才か!」
「そうよ。オルガさん。見る目あるじゃない。私はサラよろしくね」
「あ、よろしく。お前に絡んだバカはゲスミー。いい名前だろ? 性格通りの。弱い物にはとことん強く出て、自分より強いとなると尻尾を振るんだ」
「サラ様! このゲスミーを1番の家来にして下さい。給料はあなたの収入の30%でいいです」
サラは笑顔でゲスミーの髪の毛を撫でた。そして、こう言った。
「力の差が分かればいいのよ。1番の家来に私の収入の30%ね。素晴らしい提案だわ。だが、断る!
自分の能力以上に素晴らしい提案をしてどうするの。あんたはね、私にお金を払わせるのではなく、与える側なのよ。私ね、将来商売をする予定なの。いっぱい買ってね。ゲスミー。クラスの皆様も宜しくお願いしますね」
サラは意外に大人だった。あー、よかった。サラがキレた時は死人が出るかと思った。
「つまり、この俺様が単なる店の客だと!?
1番の家来になって俺様の夜のテクニックで虜にして上手に利用して上まで登りつめようとしたのによ! もういい、お前は俺の女になれ! チャーム! ふひひ! 俺様のチャームはスキルレベル10だぜ! 天才クラスだ 」
サラの白い肌の顔が真っ赤になった。チャームが効いているのだろうか。
「このチャームで何人の女の子の心を無理矢理弄んだの?」
「ふはは! 聞いて驚け15人だ! 子供が出来たら全員捨ててやったがな! 元カレと泣く泣く俺の子を育ててやがるぜ。笑えるだろ。俺様の最強の遺伝子が勝手に増えて行くんだ!」
「15人も。その女の子達の彼氏は本当にその子の事が好きだったのね。チャームで強奪されて相当辛かったでしょうね」
「ああ、何度も彼女を奪い返しに来たが全治6歳の重症で病院送りにしてやったぜ。俺様の最強伝説はまだまだ続くぜ!」
「最強ではなく、最凶伝説でしょ。あなたの凶悪な話は聞き飽きた。その耳障りな声も。約束しなさい。私に関わらないで。同じクラスのよしみで命だけは助けてあげる」
「そういえば何で俺様のチャームレベル10が効かないんだ?」
「あんたより遥かに強いからよ。約束はどうするの? 守るの? 守らないの?」
「そんなの守る訳ねえよ! お前の弱点を見つけて、そこから脅して俺の女にするさ。俺は女の扱いにかけては天才だからな!」
「約束してくれないなら、燃やすわよ?」
「お前は絶対に手に入れるぞ!」
「あっそう。じゃ、消え失せろゲスが!!」
「サラやめるんだ!!」
「そんな奴を庇うのやめてよ」
サラがゲスミーを燃やして骨も残さず消滅させようとしたので、俺はゲスミーの前に立ち塞がって止めた。
だが、俺はサラの魔法で横に吹き飛ばされた。
「サラ! やめるんだ!」
「こいつは女の子の敵よ。今消さないでどうするのよ。これからも不幸な女性が増え続けるのよ。ごめんね。アルトくん。我慢出来なかった。消え失せろ! ゴミクズがー!!」
こうして、サラの魔法が火炎魔法が炸裂した。ゲスミーが激しく燃えている。止められなかった。
「俺様の魔力を持ってしても防げない炎だと!? も、燃え尽きる!! 嫌だ。死にたくない」
「なら、心を改める? 一生不能になる魔法を掛けるなら許してあげる」
「はい! 何でもします! だから魔法解いて!」
「そう。わかったわ」
サラが火炎魔法を解いた瞬間、風の刃がサラの頬を切った。
「バカな首を狙ったのに逸れただと!? 手に入らないなら殺してやるつもりだったのに!」
「アルトくんの為に毎日綺麗にしている顔に大きな傷が。もうお嫁に行けない。きゃあー! そんなの嫌ー!」
サラの魔力は制御不能になった。そして、その台風のような魔力に1番近くにいたゲスミーが巻き込まれて全身がズタズタに切り裂かれた上で黒いイナズマに当たって消滅した。
このままではこの教室の全員がサラの暴走した魔力の台風で死んでしまう。無数の竜巻が生徒達を襲う。次々と前途有望な若者達が消滅して行った。
「カレンちゃん! この教室全体の時間を戻すんだ! 今度は俺がなんとかする!」
「アルトくんがそう言うなら!」
カレンちゃんの体が真っ白に輝き、無数の光の粒が舞った。そして、その力が爆発した。
「お前は俺の女になるんだよー!」
「てめえ! ふざけるな! サラは俺の女だ!」
「きゃ、アルトくん皆の前で! テレるじゃやないの!」
どうやら時間が戻ったようだ。俺はこの惨劇の元凶のゲスミーを物理攻撃でボコボコに殴った。
「そんな攻撃効かないぜ! 雑魚が!」
「なら重力2倍だ」
俺は重力を付加してゲスミーをボコボコに殴る蹴るをした。
「全然……痛く…ねえ……これで勘弁してやるから俺の前から消えな」
「なら重力3倍だ」
「嘘だろ。たかが重力魔法にこの俺が。笑いのネタのゴミ魔法なんか効かねえ……ぐぎゃ!」
ゲスミーは骨にヒビが入った程度だ。こいつ、意外と頑丈だな。
「最強のゲスミー様なら重力100倍の攻撃くらい耐えられそうだな」
「俺様なら余裕だぜ!」
「なら重力100倍だ!」
「アルトくん行け行け!」
「いや、サラそこは止めて?」
俺は重力10倍でゲスミーの顔を踏み潰そうとした。顔が醜くなれば女性も不幸になる事が減るかと思って。
だが、出来なかった。両手両足を広げてダウンしている奴の腕を踏みつけた。グシャっという嫌な音と感覚が足に伝わった。
「うぎゃー! 俺様の美しい腕がー!」
「今のが重力10倍だ。今後俺達に関わらないと約束出来なければ、次は重力100倍で頭を踏み抜くぞ」
「嘘つけ! 今のが全力の筈だ! 誰がお前程度の奴の言うことを聞くかよ。俺様に言うことを聞かせたければ、3年生の女神イシュミナ様を呼んできな」
「呼びましたか?」
「イシュミナ様! こいつが俺様をイジメるのです。やっつけて下さい」
そよ風と共にイシュミナという上級生が現れた。髪は長く銀色の髪。ポニーテールにまとめられている。
瞳はルビーのような赤。乳房も大きく、上を向いている為、弾力も十分なのであろう。
手だけでなく、足も長く、肌の色も白いその上潤いバッチリでツヤがあり、太陽の光を浴びて輝いているように見える。全てが完璧に見える。だが、姿形だけが人間の評価ではない。サラの方が全然いいね! 全部負けてるが、数年後にはサラが勝っている筈だ。きっと多分。
「ゲスミーくん。君は色々とやりすぎました。生活指導員として懲役1年とします。時間の概念するない真っ暗な異空間の牢獄で反省しなさい。大丈夫。お腹は空かないわ。トイレも必要ない。さて、完全なる無世界であなたは精神を保てるのかしら。楽しみですわ。ゾクゾクして来ます。さよならゲスミーくん。懲役を終えたら廃人になっていると私はとっても嬉しく思ってよ。期待しておりますわ」
「イシュミナ様と会えない異空間なんて嫌だ! そんなの退屈だから、2人きりで無限にセックスしようぜ! 俺様のテクニックは世界一だぜ!」
「虫唾が走る。ゲスが。消えろ。ですわ」
「この俺様がー! 出てきたら覚えていろ!
イシュミナ! 絶対毎日犯し続けてしてやるぞ!」
「まあ、凄い鳥肌ですわ。あなた達が殺さないので、私が代わりにやりました。感謝してほしいですわ。あのゲスと会話したのは初めてでしたのよ。想像以上の不快感でしたわ。このお礼は高いですわよ。そうですね、この私を友達にして下さいな。イシュミナと呼び捨てにして下さい。友人限定で時間の流れが異なる異空間に案内してあげますよ。24時間ゲームや漫画を読みまくっても、外の世界では1時間しか経過していないという素晴らしい部屋の招待券を差し上げましょう。友人限定でありながら、通常価格100万ゴールド。重いので紙幣での支払いがお勧めですわ。それが何と無料で使える招待券ですわよ」
「あんた話が長いよ。燃やすわよ」
一件落着に見えていたが、サラが戦闘モードだ。もう勘弁して。
「私の見る目は確かです。あなた達3人は素晴らしい素質の持ち主。私の初めてのお友達になって下さい」
イシュミナが瞳に涙を浮かべながら懇願した。
「あんた、学園生活3年間も送っていたのに友達ゼロなの? さすがに可哀想ね。美人過ぎて近寄り難いのかしら」
「うーん、どうだろう。能力はとても魅力的だけど、本当にそんな事が可能だかわからないぞ」
「可能ですとも。カレン様が一緒に部屋にお入りになるなら、時を操れます。私は部屋の主になる能力。部屋の中では全てを操る事が可能なのです」
「やはり能力に裏があったか。カレンの力を借りてるから、その部屋を使う時は無料のままな。無料招待券はもちろん廃止で完全無料だ。その条件なら受けてやる。そもそも、友人から金を取ろうとするなよ」
「転入生のアルト様。さすがですわね。あなたとは私と似た雰囲気を感じます。いいでしょう。あなた達3人とお友達になれるなら、金銭の要求はやめましょう。これから宜しくお願い致しますわ。一生のお付き合いを致しましょう。裏切ったら異空間の牢獄に一生閉じ込めますわよ」
「あの、どの人にも最後の言葉を言ってるのですか?」
「はい。もちろんですの」
「そりゃ、友達できませんね」
「何故ですの!?」
「友情が重すぎる」
「恋人は終わりが来たら別れるけれど、友情は一生ですの!」
「はいはい。だが、俺はイシュミナの重たい友情好きですよ。何があっても一生友達。これは約束です」
「はい! 約束ですの!」
これで、将来サラと駆け落ちする時の仲間が1人増えた。異界空間の部屋の中の者を自由に操る能力。部屋の中では神のような存在になるイシュミナと友達になった。ダリウスに続き好調だ。好調?
前途有望な生徒達全員サラの力の暴走で消滅したけれど、時間を戻せたから無しでいいか。しかし、奴は強敵だった。ゲスミー。奴は最強の性格。もちろん悪い方で1番だ。と、この頃は思っていたが、性格悪いランキングトップはこんな物ではなかった。上には上がいる。その上位には俺も入っている。
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